転生したら、実家が養鶏場から養コカトリス場にかわり、知らない牧場経営型乙女ゲームがはじまりました

リハニーアの神話

　そう言ってハルクは真面目な顔で一度咳払いをすると、女神リハニーアに纏わる神話を語り出した。



　世界のはじまりは、混沌だった。
　混沌の中、最初に生まれた生命が、大地の女神リハニーアだった。
　彼女は自分の上にある混沌を押し固めて空を作り、自分の傍らの混沌を丸めて空に向かって投げることで、太陽と月を作った。

　一人ぼっちのリハニーアは、自らの体の上に新たな生命を生み出すことにした。
　彼女の体に繋がれたまま誕生した生命は、植物として彼女の体のあらゆる場所に根付いていった。

　ある日、彼女の子どもである植物の一部がリハニーアに言った。

『私も、母さんのように、自分とは全く違う姿の政策を産んでみたい』

　リハニーアは希望する植物に、自身と異なる姿の生命を生み出す力を分け与えた。
　植物は喜び、新たな生命を生み出したが、リハニーア程の大きさも強固さもない植物に新たな生命は根付くことなく、分離してリハニーアの上を自由に動き回った。ーーすなわち、それが動物である。

　植物は、自らから勝手に離れて動く動物に戸惑いながらも、自らの子を愛し慈しんだ。

　しかし、それ故の嘆きがあった。

『あの子が餓えて泣いても、病にかかり苦しんでも、動けない私には何もしてあげられない。私はあの子の母なのに』

　泣く我が子を前に、リハニーアは悩んだ。
　植物である我が子の体は、生まれた時からしっかり体に根付いていて、今さら分離させることはできない。けれど、子を想う母の気持ちは、誰より深く知っている。

『……ならば、姿の異なる生命を生み出す力の代わりに、お前を子の役に立てるようにしてあげよう。私はお前の体を小さく小さく分けて、それぞれにお前の子に役立てる力を付与しよう。ある部分は、子の餓えを満たす食料して、ある部分は子の病を癒す薬草として、お前の子を救ってくれることだろう』