転生したら、実家が養鶏場から養コカトリス場にかわり、知らない牧場経営型乙女ゲームがはじまりました

空飛ぶひよこ

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「家族」を知らない人

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 ……いや、セルドアが家族を実体験で知らないことは、改めて強調されなくても知っているけど。
 結婚云々とは、何の関係が……。

「家族を知らないからこそ、私には直接リッカにしてあげられることが思いつきません。だけど、リッカと結婚して家族になれば、一般家庭で育った人のようにリッカに何かしてあげられるんじゃないかと思ったんです」

 なるほど。理にかなって……は、いないな。極論過ぎる。
 気持ちは嬉しいけど、何故、そこで結婚まで話が飛躍するのか。

「……セルドア様。私の為にそこまで考えてくださっているのは本当嬉しいですが、そもそもこういう問題は、家族がいるからといって正しい答えが出せるものでもないんですよ」

 私の言葉に、セルドアは虚をつかれたように目を開いた。

「家族といっても、人間ですから。価値観も考え方も、それぞれ違うんです。その人にとって正しい行動が、他の人にとっても同じように正しいとは限らない。……誰に対しても正しい行動なんて、ないんですよ」

 ……だからこそ、こうして悩んでいるのに。自分が「家族を知らない」ことに囚われているセルドアには、どうしてもピンと来ないんだろうな。

 戸惑うように視線をさまよわせるセルドアに、小さく笑いかける。

「だから、セルドア様。今ので十分なんですよ。セルドア様が、私のことを色々考えて、自分のできることなら協力してくれると言ってくれた。それだけで、私には十分幸せ者です」

「……リッカは、私と家族になるのは、お嫌ですか?」

 ……そういう話でもないんだけどなあ。
 頼むから、そんな傷ついたような目で見ないでほしい。とても胸が痛む。
 
「……セルドア様は、私にとって最早十分、家族みたいなものですよ」

「なら……」

「でも、結婚云々は、また別の話だと思います」
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