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実はめっさすごいよね。セルドア

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 繊細な手つきで、私は触ったこともない化粧道具を操るセルドアに、感嘆の声が漏れる。

 ……やっぱり、セルドア。実は、女装趣味が……?

「化粧は、元々は原始魔術の一種から派生したものですからね。これくらいは、簡単ですよ」

「………え?」

 セルドアは私の目尻にそっと筆を走らせながら、小さく笑った。

「魔方陣と似たようなものです。特別な塗料を用いて、願いを込めた幾何学模様を、顔に描く。【健やかにあるように】【賢く、美しくあるように】そんな願いを込められた、力ある模様が、描かれた人を守ってくれるんですよ。……魔術が未発達な地域では、今もなお使われている技法です」

「……それは、本当に魔術なのですか」

 なんか、まじないとかそういうもののような気がするのだけど。……いや、魔術やら魔法やらが実在している世界で、そんなことを突っ込むこと自体おかしいのか。

「気休め程度の効果しか発揮されないことも多いですけどね。力あるものが使えば、結界並みの効力を発揮することもありますよ。……この化粧品は、その原理を応用して作られたものです。模様なしでも、施せば、守護の効果を発揮する」

 墨をつけすぎたのか、指先でそっと目尻を拭われて、どきりとする。……なんか、ちょっと手つきがエロい。

「……セルドア様は、そういった魔法具の開発にも携わっているのですか?」

「いいえ。私はあくまで、魔術の体系を作るだけです。応用は、専門家に任せます。……ですが、魔術の体系を自己流で確立する為には、既存の魔術体系を把握する必要がありますからね。現存する魔術は、原始魔術だろうと、魔法具に応用されたものだろうと一通り掌握してますよ」

 ……うーん。さらっと言うけど、これすごいことだよな。
 化粧も、魔法具の分析もお手の物ってことだもの。
 魔術師長という地位のすごさを、改めて実感するわ。
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