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聞いてないぞ、そんなこと

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 セルドアが手を離すなり、ラドはすぐさま私の肩の上にすっ飛んで来た。
 震えて脅えながら、甘えるように私にすり寄るラドをあごをちょいちょいと指で撫でながら、大きくため息を吐く。

「ラド。……今から、ちょっとこのお兄さんに着いて行って、城で挨拶して来なさい」

「ぴぎっ!?」

「せっかく孵化することができたんだから……このかわいい顔を、ラドのお父さんとお母さんにも見せてあげないと」

「ぴぃ……」

 ……う、そんな捨てられた子犬みたいに、目をうるうるさせて、こっちを見上げないでくれ。心が痛むだろう。

「挨拶だけして、ラドがまたここに戻って来たいというのなら、ほら、また戻ってくれば良いからさ。ね」

「きゅう……」

「ね、とりあえず一度だけでもお城行っておいでって。ね?」

 頭を撫でたり、優しく宥めたり、試行錯誤してみたが、ラドはなかなか納得してくれない。

 ……多分親ドラゴンはともかく、王様には、ちゃんと顔を見せさせないと駄目だよなー。さて、どうしよう。

 しばらく、困り果てる私を見ていたセルドアだったが、ややあって思案気にあごを撫でた。

「ふむ。……じゃあ、リッカも一緒に城に来ますか? それなら、子ドラゴンも従うでしょうし」

 …………はい?

「い、いえ、私が城に行くだなんて、そんな滅相もない……分不相応かと」

「おかしなことを言いますね。リッカは、ドラゴンの卵の孵化を成功させた功労者。城に出向いて、王と面会する資格は十分にあります。……と言いますか、王に報告すれば間違いなくリッカと会いたがりますからね。元々落ち着いたら面会する機会を設けるつもりでしたから、それが早まっただけですよ」

「……なっ……」

 城に出向いて、王に面会する必要があるとか聞いてないぞ!
 私はただ、この牧場でのんびり牧場ライフを送るだけのつもりだったのに……!

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