転生したら、実家が養鶏場から養コカトリス場にかわり、知らない牧場経営型乙女ゲームがはじまりました

クッキーを焼こう

「……いや、別にそんなことをしなくても、連れて行くお店をもっと庶民的なものにさえして頂ければ……」

「素のままのリッカも可愛らしいですが、きっと美しく飾り立てたリッカも、素敵だと思うんですよ。あの男の言う通り、私は特別使い途の無いお金を貯め込んでますしね。……さてさて、リッカにはどんな色のどんな型のドレスが似合いますかね。何だか、想像したらわくわくして来ました」

　……聞いちゃいねぇ。
　というか、セルドア、これ完全に着せ替え人形的な趣味目覚めてないか?　否、寧ろ、マイフェアレディ的なあれ?
　私のようなちんちくりん、いくら飾り立ててもオードリー・ヘップバーンにはならないと思うのですが。おーい。

「ふふふ。今まで女性に服やアクセサリーを贈る相手の気持ちが理解できませんでしたが、好いた相手を自分色に染めるというのは、なかなか悪くないものですね。何だか、とても愉快です」

　…………まあ、セルドア本人がとても楽しそうだから、いいか。

　そして好いた云々言ってる気がしますが、敢えて無視しようと思います……!
　だってセルドアのハートの色は緑色だもの!　好感度マックス状態は、赤だもの!　まだまだ大丈夫……な、はず。

　……大丈夫、だよね?



「……別にセルドアが嫌いなわけじゃないんだけど、恋愛に発展できるかっていうと、正直よく分からないんだよね」

　意気揚々とセルドアが去った後に、残ったコカトリスの卵でクッキーを作りながら、ため息を吐く。

　……あの謎のハートの色、実は好感度とは全く関係なかったりはしないかなー。だったら、全部私の思い過ごしだと思えるんだけど。

『牧場を経営しているうちに接触してくる、イケメンキャラクター達。たくさん交流して、好感度のハートの色を赤くしていこう。ハートの色が変わるごとに、恋愛イベントが発生し、完全に赤く染まったら、結婚もできちゃうゾ☆』

「……いや、よくよく思い出したら、最初の謎映像ではっきり言うてたわ」

　改めて、思う。一体私は、何に巻き込まれてるんだ?

「しかし、セルドアの印象強過ぎて他の人の映像頭から完全に抜けてたけど、多分あの謎のキラキラポーズ軍団に、パックさんや、ルートさんや、ハルクもいたんだよな。……そう思うと、もう一度あれ見たい気もする」