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セルドアとのランチ

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 即答するなり、ほっぺをうにょんと引っ張られた。

「……へるほあはま?」

「……おー。よく伸びますね。ふくふくだ」

「やめへくははひ」

 痛くはない。痛くはないけど、地味に屈辱的だ。
 下から軽くにらみつけながら抗議するも、セルドアは聞いてくれない。

「やめて欲しかったら、『私以外、抱きあげたりしないで下さい、セルドアお兄様』と言って下さい」

「わたひいはひ、だひあへたりひはいへくらはひ、せるほはおひいはま」

「……こういう時は素直なんですけどね」

 ため息を吐きながら、ほっぺたを解放してくれたけど、ため息を吐きたいのは私の方だと切に訴えたい。
 ……うっかり忘れかけてたけど、こいつドエスだった。モノクルドエスお兄様プレイ好きという、盛りだくさん属性の変態だった。
 ついつい絆されてたけど、油断してはいけない。

「それじゃあ、リッカ。さっさとお店に向かいますよ。昼休みは有限ですからね」

 伸ばされたほっぺを一人さすっている私を置いて、さっさと歩き出すセルドア。

 ……誰のせいで、足を止めたと思ってるんじゃ。

 内心密かに毒づくも、わざわざ噛みつくのも面倒くさいので、ひとまずお口チャックでついていく。

 ええ。私は基本的には我慢ができる良い子ですからね。多分セルドア、お昼をごちそうしてくれるつもりだと思われますし、ちょっとイラっとしたくらいじゃ怒りを露わにしたり致しませんよ。


「……っセルドア様、これ、滅茶苦茶美味しいです! すごい、感動しました!」

「なら、よかったです」

 ……そして、食べ物ですぐ機嫌が治る、現金な子でもあります!

 美味し過ぎて、農作業後の薄汚れた普段着のまま、ものすごく高そうなお店に連れてこられて、場違いだと追い出されたらどうしようかって冷や汗かいたことも、もう忘れたよ! 

 うん、店に入った時に向けられた、明らかに上流階級な周囲の非難の目が未だ心に突き刺さってるけど、お店の方はにこやかに受け入れてくれてるから、気にしないことにするよ! ここ、個室だし!
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