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卵の名付け

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「……解せない。世界で一番高貴で美しいドラゴンに相応しい名を、と、俺が何百も考えた名前候補は悉く却下だったのに……絶対、俺が考えたアルティメット・ナイトメアや、ダイアファナス・デーヴァの方が格好良いのに……」

 ……いや、ルートさんのセンスも、これはこれで大概だな!
【究極の悪夢】と【透明な歌姫】って……厨二病か! 前世のクラスメイトで、そういう横文字ばかり好んで使う子いたよ!
 毎日眼帯してるし、「……あの時の、古傷が痛む」とかブツブツ一人言言ってるものだから、完全に親切心で「良い病院、紹介しようか?」って言ったら、精神科行けって意味に取られたらしく泣かれたんだよな。……いや、本当。他意はなかったんだよ。他意は。酪農してると、生き物相手してるだけに結構生傷絶えないしさ。

「……というか、何で英語が……」

「エー語? これは古代イルグンド語から、考えだした名だが」

「……………」

 ……ワーショクなんて言葉がある世界だからね。今さら、突っ込まないよ。

 まあ、ルートさんの名前センスが厨二なのも、ルートさんの先輩が私やパックさんと同類なのも、今はとりあえずどうでもいい。

「……それじゃあ、卵が気に入ったなら、私がこの子の名前をつけても構わないってことですね」

「え………あ、ああ。まあ、その……卵が気に入ったなら、な」

 あからさまに狼狽えるルートさん。……これは、親ドラゴンの名付け失敗のリベンジを卵で目論んでいたな。
 力なくパタンと伏せられた犬耳がルートさんの頭の上に幻視できるようで、ちょっと心が痛まなくもないけど、厨二センスな名前を卵が気に入るとは思えないから無視しておこう。

「……それじゃあ、卵。もし気に入ったら、私が考えた名前を受け取っておくれ」

 私の名づけのセンスは、パックさんやルートさんの先輩と同類だ。
 だから、これしか思いつかない。

 そっと卵の表面を撫でながら、囁きかける。

「『ラド』。君のこと、ラドって呼んじゃ駄目かな?」
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