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パックさんの過去

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「……泣きました?」

「すっごく。……でもさ、僕は知らなかっただけで、それまでもずっと、一角ウサギのお肉を美味しい美味しいって食べてたんだよね。しばらくは出される肉料理は全て拒絶してたんだけど、空腹に負けて食べてみたらやっぱり美味しくて……なんか、ますます泣けてきちゃったよ」

 ……分かるよ。パックさんの気持ち。

 一角ウサギ、身が柔らかくて美味しいもんね。真実がわかったとしても、いざ調理されてるのを前にしたら、食べちゃう食べちゃう。

「で、それから一角ウサギの世話も再開したわけだけど……やっぱりただの愛玩用だと思って育てていた時とは一角ウサギを見る目が変わっちゃうよね。だけど、一角ウサギは変わらず僕に懐いてくるから、それがすごく辛くてさ。いっそ、わざと嫌われようと思った時もあったけど、好きな動物にそんなこともできなくて、結局そのまま今に至るというわけです。……よし、綱の長さや結び目の硬さはこれくらいで大丈夫そうだな」

 大人しくされるがままになっているコカトリスを無事に繋ぎつけたパックさんは、魔力遮断眼鏡を取り出して私に渡した。

「それじゃあ、リッカちゃん。目隠しを外すから、これをつけてて」

「パックさんは?」

「僕は大丈夫。……彼女に好かれてるから、石にされることはないよ」
 
 そう言ってパックさんは、コカトリスの首と、蛇の頭を、それぞれ優しく撫であげた。
 ……おお。本体も尾っぽも明らかに滅茶苦茶喜んでる。
 こんな自信満々でいながら、石にされたら面白いのにとちらっと思ったけど、残念ながらその可能性はなさそうだ。

「彼女の名前は、何て言うんですか?」

「一応うちの家畜場で呼んでいた名前はあるけど……別にリッカちゃん好みの名前に変えても良いんだよ」

「いえ。パックさんが今まで呼んでいた名前が良いんです。……きっとその娘も、その名を望んでますから」
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