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ハルクの逆襲

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 私が言い返すことを想定していなかったのか、ハルクは一瞬キョトンとした表情をした後、すぐに顔を真っ赤にして私を睨みつけた。

「……貴様、無礼だぞ! オレを誰だと思っている!」

「高名な植物学者の先生なんですよね~。でも、名声と頭脳がどれ程素晴らしかったとしても、人格がおこちゃまじゃ、仕方ないですね~。私にはケツの穴が小さいクソガキにしか見えませんよ」

「誰がおこちゃまで、誰が、クソガキだって!」

「……駄目ですよ。リッカ。女の子がケツの穴だなんて、下品な言葉を使っては」

 激昂したハルクを他所に、セルドアがめっと窘めるように私を見た。

「あと、本当のことだとしても、後々面倒臭いから指摘しては駄目だって、あらかじめ忠告していたでしょう? ハルクは、本当面倒臭いおこちゃまなクソガキなんですから」

「セルドア! 貴様までオレを愚弄する気か!」

「先に私を愚弄したのは、貴方でしょう? 同じことをされたら、憤る辺りが、おこちゃまなんですよ」

「貴様……!」 

 机を叩いて、怒り狂うハルクを無視して、セルドアに向き直る。

「……セルドア様。作物の種って、どこかから取り寄せることができませんか?」

「ちょっと時間は掛かりますが、大丈夫ですよ。この様子なら、確かに他所から仕入れた方がよほど手っ取り早そうです」

「ああ、じゃあ、もうこんな不快な所に長居する必要はありませんね。牧場へ帰りましょう」

 種を他所から手に入れられるなら、こんな不愉快なクソチビガキに関わる必要なんかない。

 あばよ、ハルク! 永遠に! ……万が一町ですれ違っても、面倒臭いから関わってこないでね。

 そのまま、そそくさにその場を去ろうとした時だった。

「ーー待て。素人クソチビガキ。種が欲しいんだろう? これで良ければ特別に譲ってやるよ」

 怒りに震えたハルクが、テーブルに広げたのは……なんか、一つ一つにおどろおどろしい顔がついている、不気味な種。

「この国じゃあ、オレ以外はまず用意できない、貴重~で、高価~な、種だ。感謝しろ?」

 悪役顔でニヤリと笑う、ハルク。……こいつ、絶対ろくでもないこと企んでますね。分かります。

 
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