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種がないだと……!?

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 私の言葉に、セルドアは驚いたように目を丸くした後、すぐに噴き出した。

「……そこで、そう言う発想が出る辺り、リッカは本当に面白いですね。つくづく、からかいがいがある」

「え……もしかして、家族がいないっていうのは嘘なんですか」

 からかうにしても、悪趣味な冗談過ぎて、引くぞ。この野郎。

 しかしじと目で睨む私に、セルドアは首を振った。

「いいえ。それは本当です。本当なんですが……ちょっとその返しは予想外でした。リッカは、なんか何が飛び出てくるか分からない、びっくり箱みたいな娘ですね」

 くすくすと笑いながら、セルドアは私を横目で見つめた。

「それじゃあ……家族が羨ましいと思ったら、リッカにお兄様と呼んでもらうことにしますかね」

 ……あ、なんかハートが明るい青色なってる。
 紫から青って、良いの? 悪いの? 混ざってた赤要素が消えたってことだから、恋愛感情から遠ざかったとみて良いのかな……? 謎だ。

「そこを左に曲がれば、パックの家畜場で、真っ直ぐ行けば町に進みます。家畜場はここからでも見えるくらいだから、案内するまでもありませんね。まだまだ町に到着するまでは時間がありますし、リッカの家族についても教えて頂けませんか?」

 まだ牧場生活もろくに始まってない状況で起こったセルドアの変化に戸惑ってるけど、セルドアの表情がさっきより優しく見えるから、まあ良いことにしよう。



「はい。ここが町です。直接用事があるのは、お店と種屋だけかもしれませんが、時間が空いている時は町に住んでいる人達と交流してみると良いですよ」

【町の住人の仲良しになると、住人イベントが発生するよ! 一日一回話しかけたり、プレゼントを贈ったりして、仲良くなろう】

 ……はい、変な文字出てるけど、無視ー。

 道ですれ違ったら挨拶くらいはしても良いけど、仲良くもないのによく知らない人の家に押しかけて、話しかけたりプレゼントしたら不審者だろう。
 ……そもそもよく知らない人から、物をもらっちゃいけません。相手が子どもなら、通報されるわ。

「えーと、まずはどなたの家から……」 

「いや、本当良いです。お店の案内だけで」

 近所付き合いは大事。しかし、歩いて30分掛かる距離は、別に近所でもない。
 私のご近所さんは、パックさんだけだよ。
 ……とても嫌な予感がするから、種屋も寄らなくて良いくらいなんだけど。



「……え? 植物の種を扱うのを、やめた?」





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