35 / 336
やむを得ない呼称
しおりを挟む
「……そうか。リッカ。感謝する」
私の言葉に、小さく微笑むルートさん。
……強制選択肢でハートの色が紫に変わるとは、まあ、随分とちょろい。
いや、それだけ、ハートが紫色になることは簡単だということか。セルドアやパックさんも、あっという間だったしな。
ハートの色が赤になるまで、あと何段階あるか分からないけど、とりあえず色に関しては気にしないでおくことにしよう。
「……それでは。ルート。リッカに町の案内をしなければいけないので、私達はこの辺で失礼しますね」
「ああ。必要なことは伝えたから、問題ない。……リッカ。俺は一人でもう少し、卵と触れ合っていても構わないだろうか」
「……ドーゾ、ドーゾ」
「ありがとう」
……そして、許可を与えるなり、早速ドラゴンの卵に夢中で、こっち見向きもしねぇ。
紫色が、いかにショボい変化なのか、よく分かるな。
「……それじゃあ、リッカ。町へ向かいますよ。着いて来て下さい」
「あ、はい。分かりまし……!」
……ちょっと待てよ。
さっき、セルドアは町にあるお店まで、徒歩で30分くらい掛かるって言ったな。
そして、さっきの流れのままなら、町に到着するまであの不自然な動きで、無言のまま移動することになる。
……それ、一緒に歩いている私、きつくない?
30分も、あの状態の不気味なセルドアの隣にいるの、苦行過ぎない?
気がついた頃にはセルドアは、既に扉から出てしまっていた。
慌てて後を追ったものの、外に出る頃にはセルドア既に遠くをすたすたと歩いていた。
ちょ、速い速い速い!
これ、無言で変な動きをするセルドアが気持ち悪いとか、それ以前の問題だから!
下手したら、このまま街に行けずに見失うから。
「ちょ、待って。待って下さい、セルドア様!」
駆け足でセルドアの背中を追い掛けながら叫んだけれど、距離があるせいで全く聞こえていないようだ。
……くそっ、これだけはやりたくなかったけど仕方ない。
私は大きく息を吸い込むと、両手を口元にあてて叫んだ。
「ーー待って! セルドアお兄様!」
私の言葉に、小さく微笑むルートさん。
……強制選択肢でハートの色が紫に変わるとは、まあ、随分とちょろい。
いや、それだけ、ハートが紫色になることは簡単だということか。セルドアやパックさんも、あっという間だったしな。
ハートの色が赤になるまで、あと何段階あるか分からないけど、とりあえず色に関しては気にしないでおくことにしよう。
「……それでは。ルート。リッカに町の案内をしなければいけないので、私達はこの辺で失礼しますね」
「ああ。必要なことは伝えたから、問題ない。……リッカ。俺は一人でもう少し、卵と触れ合っていても構わないだろうか」
「……ドーゾ、ドーゾ」
「ありがとう」
……そして、許可を与えるなり、早速ドラゴンの卵に夢中で、こっち見向きもしねぇ。
紫色が、いかにショボい変化なのか、よく分かるな。
「……それじゃあ、リッカ。町へ向かいますよ。着いて来て下さい」
「あ、はい。分かりまし……!」
……ちょっと待てよ。
さっき、セルドアは町にあるお店まで、徒歩で30分くらい掛かるって言ったな。
そして、さっきの流れのままなら、町に到着するまであの不自然な動きで、無言のまま移動することになる。
……それ、一緒に歩いている私、きつくない?
30分も、あの状態の不気味なセルドアの隣にいるの、苦行過ぎない?
気がついた頃にはセルドアは、既に扉から出てしまっていた。
慌てて後を追ったものの、外に出る頃にはセルドア既に遠くをすたすたと歩いていた。
ちょ、速い速い速い!
これ、無言で変な動きをするセルドアが気持ち悪いとか、それ以前の問題だから!
下手したら、このまま街に行けずに見失うから。
「ちょ、待って。待って下さい、セルドア様!」
駆け足でセルドアの背中を追い掛けながら叫んだけれど、距離があるせいで全く聞こえていないようだ。
……くそっ、これだけはやりたくなかったけど仕方ない。
私は大きく息を吸い込むと、両手を口元にあてて叫んだ。
「ーー待って! セルドアお兄様!」
0
お気に入りに追加
2,467
あなたにおすすめの小説
【完結】婚約者が好きなのです
maruko
恋愛
リリーベルの婚約者は誰にでも優しいオーラン・ドートル侯爵令息様。
でもそんな優しい婚約者がたった一人に対してだけ何故か冷たい。
冷たくされてるのはアリー・メーキリー侯爵令嬢。
彼の幼馴染だ。
そんなある日。偶然アリー様がこらえきれない涙を流すのを見てしまった。見つめる先には婚約者の姿。
私はどうすればいいのだろうか。
全34話(番外編含む)
※他サイトにも投稿しております
※1話〜4話までは文字数多めです
注)感想欄は全話読んでから閲覧ください(汗)
悪役令嬢が攻略対象の幸せを願っては駄目ですか?
こうやさい
恋愛
乙女ゲームの最萌えルートの義妹かつ悪役令嬢に転生している事に気づいた。
・細切れです
・三話目までは一日一話投稿します
・その後は順次最新話のしおり数が前話のしおり数を超えるかつ五以上あるときに予約します
・投稿時間の変更は今回予定しておりません
・確認も予約も手動なので状況によっては条件を満たしていても遅れる事があります
・今後の参考にするために考えたやり方なので非実在他の読者のために読んでないのにしおりを付けたり進めたりする事はご遠慮下さい
・二週間経っても前話のしおり数を超えない、最新話のしおり数が五に満たない、その他これ以上参考にならないと判断した場合、あるいは運営に怒られた場合はこの更新方法は中止します。その後の更新をどうするかは未定です
・内容的にはいつものです
・一応完結しているシロモノですが、途中で問題を見つけた場合、上記の条件に関係なく更新停止する可能性があります
・条件を満たさない間に他の話を更新をする可能性があります
本編以外はセルフパロディです。本編のイメージ及び設定を著しく損なう可能性があります。ご了承ください。
ただいま諸事情で出すべきか否か微妙なので棚上げしてたのとか自サイトの方に上げるべきかどうか悩んでたのとか大昔のとかを放出中です。見直しもあまり出来ないのでいつも以上に誤字脱字等も多いです。ご了承下さい。
お城のお針子~キラふわな仕事だと思ってたのになんか違った!~
おきょう
恋愛
突然の婚約破棄をされてから一年半。元婚約者はもう結婚し、子供まで出来たというのに、エリーはまだ立ち直れずにモヤモヤとした日々を過ごしていた。
そんなエリーの元に降ってきたのは、城からの針子としての就職案内。この鬱々とした毎日から離れられるならと行くことに決めたが、待っていたのは兵が破いた訓練着の修繕の仕事だった。
「可愛いドレスが作りたかったのに!」とがっかりしつつ、エリーは汗臭く泥臭い訓練着を一心不乱に縫いまくる。
いつかキラキラふわふわなドレスを作れることを夢見つつ。
※他サイトに掲載していたものの改稿版になります。
破滅ルートを全力で回避したら、攻略対象に溺愛されました
平山和人
恋愛
転生したと気付いた時から、乙女ゲームの世界で破滅ルートを回避するために、攻略対象者との接点を全力で避けていた。
王太子の求婚を全力で辞退し、宰相の息子の売り込みを全力で拒否し、騎士団長の威圧を全力で受け流し、攻略対象に顔さえ見せず、隣国に留学した。
ヒロインと王太子が婚約したと聞いた私はすぐさま帰国し、隠居生活を送ろうと心に決めていた。
しかし、そんな私に転生者だったヒロインが接触してくる。逆ハールートを送るためには私が悪役令嬢である必要があるらしい。
ヒロインはあの手この手で私を陥れようとしてくるが、私はそのたびに回避し続ける。私は無事平穏な生活を送れるのだろうか?
悪役令嬢はSランク冒険者の弟子になりヒロインから逃げ切りたい
鍋
恋愛
王太子の婚約者として、常に控えめに振る舞ってきたロッテルマリア。
尽くしていたにも関わらず、悪役令嬢として婚約者破棄、国外追放の憂き目に合う。
でも、実は転生者であるロッテルマリアはチートな魔法を武器に、ギルドに登録して旅に出掛けた。
新米冒険者として日々奮闘中。
のんびり冒険をしていたいのに、ヒロインは私を逃がしてくれない。
自身の目的のためにロッテルマリアを狙ってくる。
王太子はあげるから、私をほっといて~
(旧)悪役令嬢は年下Sランク冒険者の弟子になるを手直ししました。
26話で完結
後日談も書いてます。
醜いと蔑まれている令嬢の侍女になりましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます
ちゃんゆ
恋愛
男爵家の三女に産まれた私。衝撃的な出来事などもなく、頭を打ったわけでもなく、池で溺れて死にかけたわけでもない。ごくごく自然に前世の記憶があった。
そして前世の私は…
ゴットハンドと呼ばれるほどのエステティシャンだった。
とある侯爵家で出会った令嬢は、まるで前世のとあるホラー映画に出てくる貞◯のような風貌だった。
髪で顔を全て隠し、ゆらりと立つ姿は…
悲鳴を上げないと、逆に失礼では?というほどのホラーっぷり。
そしてこの髪の奥のお顔は…。。。
さぁ、お嬢様。
私のゴットハンドで世界を変えますよ?
**********************
『おデブな悪役令嬢の侍女に転生しましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます』の続編です。
続編ですが、これだけでも楽しんでいただけます。
前作も読んでいただけるともっと嬉しいです!
転生侍女シリーズ第二弾です。
短編全4話で、投稿予約済みです。
よろしくお願いします。
旦那様は離縁をお望みでしょうか
村上かおり
恋愛
ルーベンス子爵家の三女、バーバラはアルトワイス伯爵家の次男であるリカルドと22歳の時に結婚した。
けれど最初の顔合わせの時から、リカルドは不機嫌丸出しで、王都に来てもバーバラを家に一人残して帰ってくる事もなかった。
バーバラは行き遅れと言われていた自分との政略結婚が気に入らないだろうと思いつつも、いずれはリカルドともいい関係を築けるのではないかと待ち続けていたが。
〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です
hanakuro
恋愛
物語の始まりは、ガイアール帝国の皇太子と隣国カラマノ王国の王女との結婚式が行われためでたい日。
夫婦となった皇太子マリオンと皇太子妃エルメが初夜を迎えた時、エルメは前世を思い出す。
自著小説『悪役皇太子妃はただ皇太子の愛が欲しかっただけ・・』の悪役皇太子妃エルメに転生していることに気付く。何とか初夜から逃げ出し、混乱する頭を整理するエルメ。
すると皇太子の愛をいずれ現れる癒やしの乙女に奪われた自分が乙女に嫌がらせをして、それを知った皇太子に離婚され、追放されるというバッドエンドが待ち受けていることに気付く。
訪れる自分の未来を悟ったエルメの中にある想いが芽生える。
円満離婚して、示談金いっぱい貰って、市井でのんびり悠々自適に暮らそうと・・
しかし、エルメの思惑とは違い皇太子からは溺愛され、やがて現れた癒やしの乙女からは・・・
はたしてエルメは円満離婚して、のんびりハッピースローライフを送ることができるのか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる