上 下
32 / 336

ルートさんはドラゴン馬鹿

しおりを挟む
「……それじゃあ、卵について説明しよう」

 そう言って、ルートさんが体を横にずらすと、藁の上に置かれた、真っ白なドラゴンの卵が現れた。

 ……あれ。意外と小さい。
 メロンサイズのコカトリスの卵より大きいけれど、大きめなスイカには負けるくらい。
 重さがそれほどでなければ、私一人でも何とか運べそうな大きさだ。
 ドラゴンってくらいだから、卵も子どもの背丈くらい大きいのかと思ってたのだけど、そうでもないな。生まれてから、どれくらい成長するかは分からないけど。

「ーー触ってみるといい」

「え、でも……」

 ……うっかり触って割れちゃわないかしらん。
 躊躇う私に、ルートさんは小さく笑った。

「大丈夫だ。ドラゴンの卵の殻は、コカトリスよりもさらに頑丈だ。ちょっと強く触ったくらいじゃ、全く問題はない」

 そういうことなら、遠慮なく……おお。なんか、めちゃくちゃ温かい。そして、なんかどくどく脈打っていて、めちゃくちゃ生きている感じが伝わってくる。
 確かに、これは何としてでも孵化させたくなるなーと思いつつ手を引っ込めると、私が卵を撫でる様を凝視していたルートさんは、残念そうに目を伏せた。

「……やっぱり、撫でたくらいでは、そう簡単に孵りはしないか」

 ルートさんは深々とため息を吐くと、そっとドラゴンの卵を撫で上げた。

「ーーああ。俺の可愛い、子ドラゴン。一体お前はいつその愛らしい姿を見せてくれるんだ」

 ……うん?
 今ルートさんの口から、どうも今までと全くテンションが異なる言葉が聞こえたような。

「……ルートさん?」

「とりあえず、今日から毎日一日一度卵に話しかけて、撫であげてくれ。殻の表面が汚れたら、温かいふきんでぬぐって綺麗にするんだ。寒くなったら、風邪をひいてしまうかもしれないから、温かい布団をかぶせてやって。暑い日には風通しの良い涼しい場所において、温度管理にはくれぐれも気をつけるように」

「……あ、はい」

 つい勢いに飲まれて、頷いてしまったが……何だか卵に対する対応としては所々おかしいような。
 そんなんで、本当に卵が孵るんだろうか。

「ーー聞いてくれ。リッカ。俺はドラゴンが大好きだ。愛していると言っても、過言じゃない」


しおりを挟む
1 / 4

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

好きでした、婚約破棄を受け入れます

恋愛 / 完結 24h.ポイント:369pt お気に入り:2,249

【完結】イアンとオリエの恋   ずっと貴方が好きでした。 

恋愛 / 完結 24h.ポイント:475pt お気に入り:1,213

黒ギャル聖女、世界を救う!

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:38

異世界大使館はじめます

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:12

悪役令嬢様。ヒロインなんかしたくないので暗躍します

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:1,052pt お気に入り:36

処理中です...