31 / 336
三番目の攻略対象
しおりを挟む
【ドラゴン舎】
「……ああ、来たか」
セルドアに連れられるがままに、家畜舎と変わらない大きさの建物に入ると、先客がいた。
「……ルート。卵を置いたら、帰って下さって良かったのに」
「そうもいかないだろう。これまでずっと、卵の孵化を見守り続けたのは、俺だ。引き継ぎの義務がある」
藁に置いたドラゴンの卵の前にしゃがみ込んでいた、短く刈った赤髪の男の人は、そう言ってぬっと立ち上がった。
……で、でっかい。
パックさんも背が高いと思ったけど、この人は下手したら2m近くあるんじゃないか。
そして父さんや、ハムルさんと同じ、マッチョだ。肩幅がっちり。目に見えて、分かる筋肉質な体。
……こう見ると、セルドアって貧相に見えるよね。
一応私を軽々お姫様だっこできるくらいは筋肉ついてるはずなんだけど、見た目もやしだし。
身長、多分170㎝代だと思われるし。
「……リッカ。今、失礼なことを考えませんでした?」
「イイエ。マサカ」
……何故、ばれた。察しが良すぎるぞ。
「この娘に、ドラゴンの卵を任せるのか……また、随分と小柄だな」
あんたに比べれば、そりゃあ誰だって小柄でしょうよ。と、内心で突っ込みながら、首が痛くなるくらい高い位置にあるその顔を見上げる。
……そして、後悔した。
「どうした? 俺の顔に何かついているか」
「……いえ、何でも」
表情は乏しいけど、涼しげな目元の男前ですね! 格好良いと思いますよ!
……顔の横に、黒いハートマークが見えなければ、もっと良かったんですけどね!
「俺の名前は、ルート・フーバー。騎士団に所属し、ドラゴンの世話の総責任者をやらせてもらっている」
「……リッカ・カートと申します。養コカトリス場で生まれ育って、ずっとコカトリスの世話をして来たのを、セルドア様に見込まれてスカウトされました」
「そうか。小柄だが、しっかり筋肉はついていると思ったのは、そういう訳だったんだな。コカトリスの世話ができる乙女ならば、ドラゴンの卵を任せるにあたって心強い」
……おお。この人、密かに私の引き締まった筋肉に気づいていたぞ。見た目じゃ全然分からないのに。
ちょっと、結構、嬉しい。……パックさんに引き続き、この人も良い人かもしれない。
「……ああ、来たか」
セルドアに連れられるがままに、家畜舎と変わらない大きさの建物に入ると、先客がいた。
「……ルート。卵を置いたら、帰って下さって良かったのに」
「そうもいかないだろう。これまでずっと、卵の孵化を見守り続けたのは、俺だ。引き継ぎの義務がある」
藁に置いたドラゴンの卵の前にしゃがみ込んでいた、短く刈った赤髪の男の人は、そう言ってぬっと立ち上がった。
……で、でっかい。
パックさんも背が高いと思ったけど、この人は下手したら2m近くあるんじゃないか。
そして父さんや、ハムルさんと同じ、マッチョだ。肩幅がっちり。目に見えて、分かる筋肉質な体。
……こう見ると、セルドアって貧相に見えるよね。
一応私を軽々お姫様だっこできるくらいは筋肉ついてるはずなんだけど、見た目もやしだし。
身長、多分170㎝代だと思われるし。
「……リッカ。今、失礼なことを考えませんでした?」
「イイエ。マサカ」
……何故、ばれた。察しが良すぎるぞ。
「この娘に、ドラゴンの卵を任せるのか……また、随分と小柄だな」
あんたに比べれば、そりゃあ誰だって小柄でしょうよ。と、内心で突っ込みながら、首が痛くなるくらい高い位置にあるその顔を見上げる。
……そして、後悔した。
「どうした? 俺の顔に何かついているか」
「……いえ、何でも」
表情は乏しいけど、涼しげな目元の男前ですね! 格好良いと思いますよ!
……顔の横に、黒いハートマークが見えなければ、もっと良かったんですけどね!
「俺の名前は、ルート・フーバー。騎士団に所属し、ドラゴンの世話の総責任者をやらせてもらっている」
「……リッカ・カートと申します。養コカトリス場で生まれ育って、ずっとコカトリスの世話をして来たのを、セルドア様に見込まれてスカウトされました」
「そうか。小柄だが、しっかり筋肉はついていると思ったのは、そういう訳だったんだな。コカトリスの世話ができる乙女ならば、ドラゴンの卵を任せるにあたって心強い」
……おお。この人、密かに私の引き締まった筋肉に気づいていたぞ。見た目じゃ全然分からないのに。
ちょっと、結構、嬉しい。……パックさんに引き続き、この人も良い人かもしれない。
4
お気に入りに追加
2,478
あなたにおすすめの小説

【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革
うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。
優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。
家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。
主人公は、魔法・知識チートは持っていません。
加筆修正しました。
お手に取って頂けたら嬉しいです。
妹の身代わり人生です。愛してくれた辺境伯の腕の中さえ妹のものになるようです。
桗梛葉 (たなは)
恋愛
タイトルを変更しました。
※※※※※※※※※※※※※
双子として生まれたエレナとエレン。
かつては忌み子とされていた双子も何代か前の王によって、そういった扱いは禁止されたはずだった。
だけどいつの時代でも古い因習に囚われてしまう人達がいる。
エレナにとって不幸だったのはそれが実の両親だったということだった。
両親は妹のエレンだけを我が子(長女)として溺愛し、エレナは家族とさえ認められない日々を過ごしていた。
そんな中でエレンのミスによって辺境伯カナトス卿の令息リオネルがケガを負ってしまう。
療養期間の1年間、娘を差し出すよう求めてくるカナトス卿へ両親が差し出したのは、エレンではなくエレナだった。
エレンのフリをして初恋の相手のリオネルの元に向かうエレナは、そんな中でリオネルから優しさをむけてもらえる。
だが、その優しささえも本当はエレンへ向けられたものなのだ。
自分がニセモノだと知っている。
だから、この1年限りの恋をしよう。
そう心に決めてエレナは1年を過ごし始める。
※※※※※※※※※※※※※
異世界として、その世界特有の法や産物、鉱物、身分制度がある前提で書いています。
現実と違うな、という場面も多いと思います(すみません💦)
ファンタジーという事でゆるくとらえて頂けると助かります💦

ヒロイン気質がゼロなので攻略はお断りします! ~塩対応しているのに何で好感度が上がるんですか?!~
浅海 景
恋愛
幼い頃に誘拐されたことがきっかけで、サーシャは自分の前世を思い出す。その知識によりこの世界が乙女ゲームの舞台で、自分がヒロイン役である可能性に思い至ってしまう。貴族のしきたりなんて面倒くさいし、侍女として働くほうがよっぽど楽しいと思うサーシャは平穏な未来を手にいれるため、攻略対象たちと距離を取ろうとするのだが、彼らは何故かサーシャに興味を持ち関わろうとしてくるのだ。
「これってゲームの強制力?!」
周囲の人間関係をハッピーエンドに収めつつ、普通の生活を手に入れようとするヒロイン気質ゼロのサーシャが奮闘する物語。
※2024.8.4 おまけ②とおまけ③を追加しました。

困りました。縦ロールにさよならしたら、逆ハーになりそうです。《改訂版》
新 星緒
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢アニエス(悪質ストーカー)に転生したと気づいたけれど、心配ないよね。だってフラグ折りまくってハピエンが定番だもの。
趣味の悪い縦ロールはやめて性格改善して、ストーカーしなければ楽勝楽勝!
……って、あれ?
楽勝ではあるけれど、なんだか思っていたのとは違うような。
想定外の逆ハーレムを解消するため、イケメンモブの大公令息リュシアンと協力関係を結んでみた。だけどリュシアンは、「惚れた」と言ったり「からかっただけ」と言ったり、意地悪ばかり。嫌なヤツ!
でも実はリュシアンは訳ありらしく……
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

転生したので前世の大切な人に会いに行きます!
本見りん
恋愛
魔法大国と呼ばれるレーベン王国。
家族の中でただ一人弱い治療魔法しか使えなかったセリーナ。ある出来事によりセリーナが王都から離れた領地で暮らす事が決まったその夜、国を揺るがす未曾有の大事件が起きた。
……その時、眠っていた魔法が覚醒し更に自分の前世を思い出し死んですぐに生まれ変わったと気付いたセリーナ。
自分は今の家族に必要とされていない。……それなら、前世の自分の大切な人達に会いに行こう。そうして『少年セリ』として旅に出た。そこで出会った、大切な仲間たち。
……しかし一年後祖国レーベン王国では、セリーナの生死についての議論がされる事態になっていたのである。
『小説家になろう』様にも投稿しています。
『誰もが秘密を持っている 〜『治療魔法』使いセリの事情 転生したので前世の大切な人に会いに行きます!〜』
でしたが、今回は大幅にお直しした改稿版となります。楽しんでいただければ幸いです。

【完結】転生地味悪役令嬢は婚約者と男好きヒロイン諸共無視しまくる。
なーさ
恋愛
アイドルオタクの地味女子 水上羽月はある日推しが轢かれそうになるのを助けて死んでしまう。そのことを不憫に思った女神が「あなた、可哀想だから転生!」「え?」なんの因果か異世界に転生してしまう!転生したのは地味な公爵令嬢レフカ・エミリーだった。目が覚めると私の周りを大人が囲っていた。婚約者の第一王子も男好きヒロインも無視します!今世はうーん小説にでも生きようかな〜と思ったらあれ?あの人は前世の推しでは!?地味令嬢のエミリーが知らず知らずのうちに戦ったり溺愛されたりするお話。
本当に駄文です。そんなものでも読んでお気に入り登録していただけたら嬉しいです!
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる