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ハミルさんの疑惑

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 そう、これはまさに私がやりたかったこと。
 夢を叶えるチャンスなんだ。
 だから、姉さんもハミルさんも気にしないで。

 私は自分の牧場で、コカトリスを飼って幸せに過ごすから!

「ーーリッカ。迎えに参りましたよ」

「……あ、セルドア魔術師長。わざわざ私の為に、こんな田舎まで足を運んで頂いて申し訳ありません」

「構いませんよ。これが私の仕事ですから。……あと、堅苦しい肩書きをつけて呼ぶのはやめて下さい。セルドアと呼んで下さい。ただ、セルドアと」

 やだ。
 なんか、ハートの色変わりそうだもの。
 変態モノクル野郎と呼ばないだけ、感謝してくれ。

「……それじゃあ、セルドア様と呼ばせていただきます」

 そんな内心は押し隠して、にっこりと笑う。
 他人行儀な一線は、どうしても譲れぬ。

 しかし、セルドアは何故かポッと頬を染めて、モノクルを押し上げた。

「……その呼び方は、悪くないですね。特にそうやって上目遣いで呼ばれたら」 

 っ! ……いや、良かった、ハートの色は変わってない! セーフ、セーフ!

 セルドアのツボは、よーわからん。……というか、勘違いすんなや。上目遣いなんかしてねぇよ。身長差で、どうやっても上目遣いになるんだよ。
 これからセルドアと顔を合わせる時は、万が一にも上目遣いなんて勘違いされないように、顎をあげてく必要があるな。ヤンキーがガンつける感じで、こうグイっと。

「……魔術師長が自ら、ただの侍女に過ぎないリッカちゃんを、お出迎えですか」 

 ……そして、まずいぞ。
 なんか、ハミルさんに怪しまれてるぞ。
 だから、別れの挨拶が終わるまで、セルドアには外で待機していて欲しいと言っていたのに、ガン無視しやがって……。

 さて、どうやって切り抜けるか。

「いけませんか? リッカは、私が適性を見出した侍女です。まだ会ってから時間は短いですが、気に入っているのですよ。こんな田舎じゃ王都にやって来るのも大変でしょうから、転移魔法を使って楽させてあげたいと思って当然でしょう?」

「……その気に入ったが、下心じゃないといいんですけどね」

「もしそれが、下心だったとしても、何か問題でも?」

 ……おい。何を言い出すんだ。変態モノクル野郎。
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