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役に立たない選択肢

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「……ずいぶん、コカトリスにこだわるね。リッカちゃん、そんなに、コカトリスが好きなの?」

 次の瞬間、再び先程の選択肢が浮かび上がった。

→【はい】
 【いいえ】

 ……それだけかよ! 役に立たないな。この選択肢。
 
 こうなったらもう、自分の言葉でコカトリス愛を語るしかあるまい。

「そりゃあ、好きですよ。大好きです。ずっとコカトリスに囲まれて育ちましたし、コカトリス、格好良くて可愛いじゃないですか。尾っぽの蛇も含めて。それになにより、家畜として育てる上で、危険性さえ目をつぶれば、コスパが最強ですし」

「コスパ?」

「あ、つまり、費用対効果が高いってことです。定期的にガマガエルの魔物を餌にしないといけないですけど、普段の餌代はあまりかかりませんし。魔物だって、少し森に出向けば簡単に調達できるでしょう? それで毎日、雄雌問わずに、高値がつく大きな卵を産んでくれるんですよ。しかも体は頑丈で、滅多に病気にも掛からない。魔力の除去さえしなければいいだけだから、繁殖も簡単。リスクから目をつぶれば、最高の家畜だと思うんですよね」

 コカトリスは雑食で、人間が食べ残した残飯なんかでも喜んで食べてくれる。
 腐ったものだろうが、カビたものだろうが、全く問題がない上に、食べた物によって卵の味が悪くなることもない……寧ろ様々な種類の物を食べさせれば食べさせる程、卵の質もコカトリス自身の肉も良くなると言われているくらいなのだ。
 だから、ガマガエルの魔物を調達する手間さえ除けば、本当に餌に関しては苦労しない生き物なのだ。

「そして、卵を生めなくなって締めた後も、お肉は美味しく食べれるし、羽は布団屋に高く売れるし、骨からは良い出汁が出るしで、全く無駄にならないじゃないですか! あんなにがっつり全てを利用し尽くせる家畜は、他に早々いませんよ!」

 私の力説に、パックさんは吹き出した。

「格好良くて、可愛くて大好きって言ってたのに、最後は普通に食べちゃえるんだ」

「当たり前でしょう。その味も含めて、大好きって言っているんですから。パックさんは、育てた家畜は食べられないとか軟弱なこと抜かすんですか?」

「いや、もちろん僕は食べるけど。……参ったなあ。リッカちゃん、見かけはこんなに小さくて可愛らしいのに、色々逞し過ぎるよ」
 
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