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今世父と私

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 コカトリスの卵は、そのまま放置してしまうと孵化してしまうので、孵化前の卵の周りに付着しているガマガエルの魔物の魔力を除去する必要がある。

 繁殖がしやすいよう、孵化の条件に必要な魔力を自身の胎内で生成するようになったわけだけど……その為にコカトリスの育成には、ガマガエルの魔物の生き餌が定期的に必要となる辺り、嫌になるよね。

 あいつら、蛇みたいに一度に丸呑みにするわけじゃなく、嘴でつついて食い散らかすから、後始末大変なんだ……。血まみれな地獄絵図みたいになるし。

「……お疲れ様。リッカ。西鳥舎の卵回収、終わったかい?」

 採集した卵を、一つ一つ魔力除去装置に並べていると、後ろから、どこか疲れきった父さんの声がした。

「うん。終わったよ。父さんは東鳥舎の回収終わっ……って、グロ!」

 思わずとっさに前世の言葉で突っ込んでしまってから、合わてて口を押さえる。
 十中八九、未だ現役ムキムキマッチョな父さんなら大丈夫だと思うけど、ここはまず可愛い娘として、心配すべき所だった。

「……父さん。なんで、そんなに血まみれなの? 怪我はない?」

「安心しろ。リッカ。……これは全部返り血だから」

 うん、知ってた。
 だから、心配してなかった。

 ……でも、父さんがこれだけ血まみれってことは……。

「……東鳥舎のコカトリス、締めたの? どの子?」

「……ピィ子だ」

「ーーピィ子! そんな!」

 ピィ子。……それは私が物心が着いた頃に、うちの養コカトリス場にやってきた、私が最初に名前をつけたコカトリス。
 昔はコッケ以上に獰猛かつ凶暴で、私を何度も石化させたこともあったのに、最近はすっかり大人しくなって私に歯向かうこともなくなっていた。

 てっきり、ようやく私に従う気になったのかと思っていたけど、まさか、卵を生めなくなる程老いていたなんて……!

 ピィ子と過ごした過去の思い出が、走馬灯のように頭に過ぎる。

 石化されて、激しい痛みの末に蘇生してもらった、幼い日のこと。
 嘴で目玉を狙われ、治癒魔法をかけるのがもう少し遅れれば、あやうく失明していた時のこと。
 尾の蛇の毒で死にかけたことも、蛇に首もとに巻き付かれて、窒息死しかけたこともあったっけ……。

 あの時、お前に向かって口にした約束を、今、私は果たすよ……。 

『くそっ……お前なんか、いつか食ってやるからな! 覚悟しとけよ!』

「ーーよし。今日は、親子丼だね」

「……………」 

「あ、でも老鶏はダシは出るけど、硬いから、もっとじっくり煮込んだ料理の方が良いかな。父さん、どう思う?」

「……お前のその割り切りの良さ。俺はすごく好きだよ、リッカ」

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