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リッカ・カート。前世の名前は加藤梨花
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リッカ・カート。前世の名前は奇しくも、音が似まくりな加藤梨花。
前世の実家は養鶏場、今世の実家も卵目当ての鳥を扱う農場という、骨の髄まで鳥毛が詰まっていそうなバリバリ農家の子どもでございます。
鶏の高らかなコケコッコーな鳴き声と共に起床し、早朝から鶏の世話。帰宅したら、遊ぶ間もなく鶏の世話と、学校へ行っても鶏の鳴き声が幻聴で聞こえていたくらい鶏づけな子ども時代。
三つ年上の兄ちゃんは、鶏の世話を私に押しつけて、友達と遊び惚けていた為、「梨花は良い子だねえ。……将来お婿さんをとって、この養鶏場を継いでね」と祖父母両親、親戚共々から言われ続けていたので、いつか自分が跡継ぎになるものだと信じて疑っていなかった、私。
そんな私との周囲の評価の差に、自業自得ながらやさぐれた兄ちゃんは、やがて立派なヤンキーになり、普通高中退。
良い子な私は、農業高校に進学して、せっせとお勉強。
私が跡継ぎとなる道は、確実かと思われていたのだが……。
『父さん……オレ、ガキができた。生まれて来る子どもの為に、オレ、真面目になるよ。オレに、この養鶏場継がせてくれ!』
金髪モヒカンを丸刈りにした兄ちゃんが、父さんに土下座してそう言ったことで、状況は一変した。
『そうか……一彦。後を継いでくれるか』
『ああ、貴方。よかったわね。一彦が、真面目になってくれて』
感涙する両親。
何故、人はヤンキーの改心に弱いのか。
ずっと真面目な良い子だった、私の立場はどうなる。
『に、兄ちゃん……私……』
『……梨花には、ずっと悪いことをしたな。本当は農業なんかしたくなかっただろうに、俺がこんなんだから、自分が跡継ぎにならなきゃなんて責任を感じてたんだろう? 高校まで農業高校になんて行かせちまって……梨花は成績は良いんだし、今からでも遅くない。高校から先は、本当に自分が行きたい道に進んでくれ。今までの償いに、学費なら俺が何とかするから』
おい、兄ちゃん、ちょっと待て。
誰が、農業をやりたくないと言った。
嫌だなんて、一言も言ったことがないんだが。
『……そうだな。梨花には今まで悪いことをしたな』
『私達が不甲斐ないせいで、子どもの頃もろくに遊ばせてあげられなくて……本当にごめんね。梨花。これからは、好きに生きてちょうだい』
おいおい、父さん。母さん。そりゃないよ。
今さら、そうやって私を放り出すなんて。
しかし、良い子な私は、今までろくに家族に反発したこともなく。
こんな風に感涙して、「よかったね」ムードを出されたら、「ふざけんな、跡継ぎは私だ」なんて言えるはずもなく。
『……進路、どうしよう』
一人悩みながら、高校に通学していた時に、真っ昼間から酒をかっくらったバカの暴走車に突っ込まれて、人生・ジ・エンド。
ほぼ即死だったけど、死ぬ瞬間『私が死んでも兄ちゃんが後を継いでくれるなら、養鶏場は安心だな』と思った私は、本当むせび泣く程良い子だったと思う。
ーーそして次の瞬間目を覚ましたと思ったら、暖かくて暗いところから引きずりだされて、尻を叩かれて泣かされました。
目は見えてなかったので、状況は分からなかったのですけどね。ええ。
『……また、女の子だったわね』
『そんなこと、気にするな。ミレイ。元気でかわいい子じゃないか。きっと美人姉妹になるぞ~』
どうやら、ちょうど母さんの腹から取り上げられた瞬間だったみたいです。
……しかも、私の気のせいじゃなければ、あまり歓迎されてないような……?
前世の実家は養鶏場、今世の実家も卵目当ての鳥を扱う農場という、骨の髄まで鳥毛が詰まっていそうなバリバリ農家の子どもでございます。
鶏の高らかなコケコッコーな鳴き声と共に起床し、早朝から鶏の世話。帰宅したら、遊ぶ間もなく鶏の世話と、学校へ行っても鶏の鳴き声が幻聴で聞こえていたくらい鶏づけな子ども時代。
三つ年上の兄ちゃんは、鶏の世話を私に押しつけて、友達と遊び惚けていた為、「梨花は良い子だねえ。……将来お婿さんをとって、この養鶏場を継いでね」と祖父母両親、親戚共々から言われ続けていたので、いつか自分が跡継ぎになるものだと信じて疑っていなかった、私。
そんな私との周囲の評価の差に、自業自得ながらやさぐれた兄ちゃんは、やがて立派なヤンキーになり、普通高中退。
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『父さん……オレ、ガキができた。生まれて来る子どもの為に、オレ、真面目になるよ。オレに、この養鶏場継がせてくれ!』
金髪モヒカンを丸刈りにした兄ちゃんが、父さんに土下座してそう言ったことで、状況は一変した。
『そうか……一彦。後を継いでくれるか』
『ああ、貴方。よかったわね。一彦が、真面目になってくれて』
感涙する両親。
何故、人はヤンキーの改心に弱いのか。
ずっと真面目な良い子だった、私の立場はどうなる。
『に、兄ちゃん……私……』
『……梨花には、ずっと悪いことをしたな。本当は農業なんかしたくなかっただろうに、俺がこんなんだから、自分が跡継ぎにならなきゃなんて責任を感じてたんだろう? 高校まで農業高校になんて行かせちまって……梨花は成績は良いんだし、今からでも遅くない。高校から先は、本当に自分が行きたい道に進んでくれ。今までの償いに、学費なら俺が何とかするから』
おい、兄ちゃん、ちょっと待て。
誰が、農業をやりたくないと言った。
嫌だなんて、一言も言ったことがないんだが。
『……そうだな。梨花には今まで悪いことをしたな』
『私達が不甲斐ないせいで、子どもの頃もろくに遊ばせてあげられなくて……本当にごめんね。梨花。これからは、好きに生きてちょうだい』
おいおい、父さん。母さん。そりゃないよ。
今さら、そうやって私を放り出すなんて。
しかし、良い子な私は、今までろくに家族に反発したこともなく。
こんな風に感涙して、「よかったね」ムードを出されたら、「ふざけんな、跡継ぎは私だ」なんて言えるはずもなく。
『……進路、どうしよう』
一人悩みながら、高校に通学していた時に、真っ昼間から酒をかっくらったバカの暴走車に突っ込まれて、人生・ジ・エンド。
ほぼ即死だったけど、死ぬ瞬間『私が死んでも兄ちゃんが後を継いでくれるなら、養鶏場は安心だな』と思った私は、本当むせび泣く程良い子だったと思う。
ーーそして次の瞬間目を覚ましたと思ったら、暖かくて暗いところから引きずりだされて、尻を叩かれて泣かされました。
目は見えてなかったので、状況は分からなかったのですけどね。ええ。
『……また、女の子だったわね』
『そんなこと、気にするな。ミレイ。元気でかわいい子じゃないか。きっと美人姉妹になるぞ~』
どうやら、ちょうど母さんの腹から取り上げられた瞬間だったみたいです。
……しかも、私の気のせいじゃなければ、あまり歓迎されてないような……?
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