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あったかもしれない最期①
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逃がしたことがバレないように念入りにエドワードの死を偽装して、ランドルーク家の地下室でエドワードを飼った。飼ったというよりも、寧ろ俺が飼い慣らされたというべきか。エドワードと一緒に、どこまでもどこまでも堕ちて行く自分に気づいていたが、抗う気にはならなかった。抗いたく、なかった。
項を噛んで、アストルディアがつけた歯型を上書きし、匿ってやる代償としてその体を何度も貪った。エドワードは人形のように、ただただされるがままだったが、そんな一方的な行為でも驚くほどに満たされた。
……ああ、こいつは俺の番だ。
俺のエレナ、じゃない。エレナじゃ、もう俺は満たされない。
俺の、エドワードだ。
俺の、だ。
一方で、エドワードを失ったアストルディアは、大荒れに大荒れた末、母である女王を殺して、王として君臨した。
エドワードの祖国であるリシス王国はほぼ壊滅し、壊れた闇魔法使いが、住民も含めて侵入したもの全てを闇魔法で精神操作して、歪な平和を維持している王都の一部の地域だけが残っているらしいが、故郷が滅びた時点で壊れてしまったエドワードにとっては、最早どうでもいいことのようだ。
そいつが以前セネーバに留学してきた生徒の一人で、かつてのエドワードの友だったことも。その傍らには、もう一人の友である王子の死体があることも、薄々勘付いているだろうに。
地下室暮らしに慣れた頃合いで、エドワードが自分が都合の良いように闇魔法で俺を操りはじめたが、俺は一切抵抗せずに受け入れた。
そんなことをしなくても、お前が頼めば何でもしてやるのに。
そう思いはしたが、魔法を使わなければ安心できないエドワードの気持ちもわかるから、好きにさせてやった。
闇魔法を使えば使うほど、術者も対象者も精神を蝕まれると知っていたが、今更だった。エドワードはとっくに壊れているし、俺はエドワードに狂っていたから。
しばらくして、エドワードはガキを産んだ。
俺と同じ黒毛で黒い瞳の狼獣人のガキだが、俺はエドワードを孕ませないようにしていたので、アストルディアのガキであることは明白だった。
正直生まれた瞬間噛み殺してやろうかと思ったが、エドワードがそのガキを復讐の道具にするつもりだと知って溜飲を下げた。
最高に悪趣味なことに、エドワードは息子を暗殺者として育てたうえで、アストルディアの後宮に送り込むつもりらしい。
狼獣人の業を思えば納得の案だが、何も知らないアストルディアに近親相姦の罪を犯させようとしている辺り、鬼畜過ぎてゾクゾクした。やっぱり俺のエドワードは、最高だ。
ガキのことを、かわいそうだとは微塵も思わなかった。
こいつを孕まされなければ、エドワードはここまで狂わなかったし、重い後遺症を負うこともなかったから自分自身で復讐を成しただろう。全ては、アストルディアの咎だ。恨むなら、自分の本当の父親を恨むといい。
誤算だったのは、成長して人化できるようになったそいつが、エドワードが密かに愛していたらしい弟にそっくりだったこと。
蓄積された闇に飲まれるたび、エドワードは錯乱のままガキを犯すようになった。エドワードに抱かれたいわけじゃねぇが、処女はアストルディアに奪われ、童貞はその息子に奪われたという事実は素直に不愉快ではある。
だが、その結果正気に戻る度、自身の犯した罪に苦しむエドワードが俺に縋り、依存するようになったから、ある意味では結果オーライだった。
『……俺は……実の息子に……なんてことを……』
散々虐待紛いの厳しい暗殺者教育を施して来たんだから、今更じゃねぇかとは思ったが、エドワードにとってはその一線は重いらしい。
そういや、エドワードも同じように親父から厳しく育てられて来たらしいから、愛されて育てられた俺とは虐待の基準が違うのかもしれない。
『……お前は悪くねぇよ。エドワード。悪いのは、全部アストルディアだ。そうだろう? あいつが、お前にガキを孕ませて、壊したりしなきゃ、こんなことにはならなかったんだからよお』
項を噛んで、アストルディアがつけた歯型を上書きし、匿ってやる代償としてその体を何度も貪った。エドワードは人形のように、ただただされるがままだったが、そんな一方的な行為でも驚くほどに満たされた。
……ああ、こいつは俺の番だ。
俺のエレナ、じゃない。エレナじゃ、もう俺は満たされない。
俺の、エドワードだ。
俺の、だ。
一方で、エドワードを失ったアストルディアは、大荒れに大荒れた末、母である女王を殺して、王として君臨した。
エドワードの祖国であるリシス王国はほぼ壊滅し、壊れた闇魔法使いが、住民も含めて侵入したもの全てを闇魔法で精神操作して、歪な平和を維持している王都の一部の地域だけが残っているらしいが、故郷が滅びた時点で壊れてしまったエドワードにとっては、最早どうでもいいことのようだ。
そいつが以前セネーバに留学してきた生徒の一人で、かつてのエドワードの友だったことも。その傍らには、もう一人の友である王子の死体があることも、薄々勘付いているだろうに。
地下室暮らしに慣れた頃合いで、エドワードが自分が都合の良いように闇魔法で俺を操りはじめたが、俺は一切抵抗せずに受け入れた。
そんなことをしなくても、お前が頼めば何でもしてやるのに。
そう思いはしたが、魔法を使わなければ安心できないエドワードの気持ちもわかるから、好きにさせてやった。
闇魔法を使えば使うほど、術者も対象者も精神を蝕まれると知っていたが、今更だった。エドワードはとっくに壊れているし、俺はエドワードに狂っていたから。
しばらくして、エドワードはガキを産んだ。
俺と同じ黒毛で黒い瞳の狼獣人のガキだが、俺はエドワードを孕ませないようにしていたので、アストルディアのガキであることは明白だった。
正直生まれた瞬間噛み殺してやろうかと思ったが、エドワードがそのガキを復讐の道具にするつもりだと知って溜飲を下げた。
最高に悪趣味なことに、エドワードは息子を暗殺者として育てたうえで、アストルディアの後宮に送り込むつもりらしい。
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ガキのことを、かわいそうだとは微塵も思わなかった。
こいつを孕まされなければ、エドワードはここまで狂わなかったし、重い後遺症を負うこともなかったから自分自身で復讐を成しただろう。全ては、アストルディアの咎だ。恨むなら、自分の本当の父親を恨むといい。
誤算だったのは、成長して人化できるようになったそいつが、エドワードが密かに愛していたらしい弟にそっくりだったこと。
蓄積された闇に飲まれるたび、エドワードは錯乱のままガキを犯すようになった。エドワードに抱かれたいわけじゃねぇが、処女はアストルディアに奪われ、童貞はその息子に奪われたという事実は素直に不愉快ではある。
だが、その結果正気に戻る度、自身の犯した罪に苦しむエドワードが俺に縋り、依存するようになったから、ある意味では結果オーライだった。
『……俺は……実の息子に……なんてことを……』
散々虐待紛いの厳しい暗殺者教育を施して来たんだから、今更じゃねぇかとは思ったが、エドワードにとってはその一線は重いらしい。
そういや、エドワードも同じように親父から厳しく育てられて来たらしいから、愛されて育てられた俺とは虐待の基準が違うのかもしれない。
『……お前は悪くねぇよ。エドワード。悪いのは、全部アストルディアだ。そうだろう? あいつが、お前にガキを孕ませて、壊したりしなきゃ、こんなことにはならなかったんだからよお』
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