263 / 311
ボンドロネリ当主の実力①
しおりを挟む
……やっぱり胡散臭いわ。転移先に、罠とか仕掛けられてないだろうな。
疑いは消せないけど、今はそれよりも村を何とかする方が先決だ。村に座標を指定し、自身とタンクを対象に転移魔法を発動させる。
「……っ」
跳んだ先は、村の上空。眼下では、たくさんのワニと肉食獣が、もつれ合いながら戦闘を行っていた。
「わあああ、落ちるー!!!」
少し離れた所でパニックを起こしながら落ちていくタンクに、魔法陣で上昇気流を発生させて落ちる速度を緩やかにする風魔法をかけつつ、詠唱をはじめる。
「……気が雲になり、雲は湖となり、滝になって我が敵に降り注ぐ。雨に溺れろ。【大滝雨】!」
普段は気恥ずかしくて、小さくゴニョゴニョしてますが、今はそんなことを気にしてる状況でもないので、久々に大声で叫ばしてもらいます。
詠唱と同時に俺の足下に現れた巨大な水球が、ゲリラ豪雨以上の激しさで地上に降り注ぐ。
普段から水に慣れているワニ獣人は驚いたように空を見上げるだけだったが、敵の王宮兵達は突然の激しい雨に動けなくなっている。その一人の背中向かって落下し、そのまま踏み潰して失神させる。
「っエド様! 首輪が取れたんですかい!?」
「おかげ様で。……皆さん、村の安全を最優先みたいな話してませんでしたっけ。何で乱闘になってるんですか?」
「ポンダーが噛みつかれたからなぁ。村人がそんな目に遭ったから、戦っただけで、別にエド様の為じゃねぇから気にすんな」
「……遠因は俺じゃねぇか……」
俺の為にタンクが尽力してくれて、タンクの為にポンダーが体を張って、ポンダーの為に村の人達まで戦うなら、結局は俺のせいだ。ポンダーがタンクの為なら共に罪人になることを宣言した時点で、村の人達もそうなることはわかってたはずなのに。あくまで自分が守りたいものの為だと言い張るワニのおっちゃん達、本当さあ……。本当に、ポンダーの血縁というか……。なんか、泣きそう。
取り敢えず、重症そうな人だけ聖魔法で回復させつつ、びしょ濡れで弱った王宮兵を一撃で伸しながら、乱闘の中心を目指す。村人は皆同じワニの姿だし、王宮兵も猫科の獣人が多いせいで、すぐには見分けがつかない。
「っポンダー!」
タンクの悲痛な叫び声がした方に振り向くと、ずぶ濡れのジャガーが、傷だらけのワニの喉笛を今にも噛み切ろうとしてた。
「旋風よ! 水の矢にて、敵を貫け! 【大砲水】!」
咄嗟に唱えた風魔法と水魔法の複合魔法で、ジャガーを弾き飛ばす。けれど宙を舞ったジャガーは、それほど大きなダメージを受けた様子もなくくるりと空中で一回転して、華麗に着地した。
「……ああ、やっぱりここにいらっしゃいましたか。エドワード様。ご無事で何よりです。このヒュールデリド・ボンドロネリがお迎えに参りました故、安心なさってください。すぐに頭の足りない粗暴なワニ共も、その間抜けなカバも殲滅致しますので」
「……ふざけるな。人を冤罪で幽閉しておいて、何が迎えだ」
「幽閉していたのは、番を亡くして狂った女王陛下でしょう? 私共は皆、エドワード様の処遇に心を痛めていたのです。しかし、狂ったと言えども女王陛下は、偉大な御方。忠誠を誓った私共としては、その命令に逆らうわけにもいかず……どうか良心と忠誠心の間で引き裂かれんばかりの、この苦しい胸の内をご理解ください」
「ならば、俺を見過ごせばいいだろ。俺を匿ってくれた村の人達をこんな目に遭わせて、俺を連れて逃げてくれたタンクにも手を出すつもりの癖に、取り繕ってんじゃねぇよ。素直に、俺と女王の狂気を利用して戦争はしたいけど、アストルディアが怖いから俺を保護する体にしときたいと言え」
「ああ、エドワード様。そんな風にカバとワニ共に洗脳されてしまったのですね。お労しい。すぐに目を覚ましてさしあげます」
ヒュールデリドはそう言って、戦闘態勢を取った。
……【隷属の首輪】が外れていることにも気づいているだろうに、動揺一つ見せない辺り、こいつ俺のこと完全に舐めているな。かしこぶっている癖に馬鹿だと言うヴィダルスの言葉は、双子だけじゃなく、その親も同じようだ。
疑いは消せないけど、今はそれよりも村を何とかする方が先決だ。村に座標を指定し、自身とタンクを対象に転移魔法を発動させる。
「……っ」
跳んだ先は、村の上空。眼下では、たくさんのワニと肉食獣が、もつれ合いながら戦闘を行っていた。
「わあああ、落ちるー!!!」
少し離れた所でパニックを起こしながら落ちていくタンクに、魔法陣で上昇気流を発生させて落ちる速度を緩やかにする風魔法をかけつつ、詠唱をはじめる。
「……気が雲になり、雲は湖となり、滝になって我が敵に降り注ぐ。雨に溺れろ。【大滝雨】!」
普段は気恥ずかしくて、小さくゴニョゴニョしてますが、今はそんなことを気にしてる状況でもないので、久々に大声で叫ばしてもらいます。
詠唱と同時に俺の足下に現れた巨大な水球が、ゲリラ豪雨以上の激しさで地上に降り注ぐ。
普段から水に慣れているワニ獣人は驚いたように空を見上げるだけだったが、敵の王宮兵達は突然の激しい雨に動けなくなっている。その一人の背中向かって落下し、そのまま踏み潰して失神させる。
「っエド様! 首輪が取れたんですかい!?」
「おかげ様で。……皆さん、村の安全を最優先みたいな話してませんでしたっけ。何で乱闘になってるんですか?」
「ポンダーが噛みつかれたからなぁ。村人がそんな目に遭ったから、戦っただけで、別にエド様の為じゃねぇから気にすんな」
「……遠因は俺じゃねぇか……」
俺の為にタンクが尽力してくれて、タンクの為にポンダーが体を張って、ポンダーの為に村の人達まで戦うなら、結局は俺のせいだ。ポンダーがタンクの為なら共に罪人になることを宣言した時点で、村の人達もそうなることはわかってたはずなのに。あくまで自分が守りたいものの為だと言い張るワニのおっちゃん達、本当さあ……。本当に、ポンダーの血縁というか……。なんか、泣きそう。
取り敢えず、重症そうな人だけ聖魔法で回復させつつ、びしょ濡れで弱った王宮兵を一撃で伸しながら、乱闘の中心を目指す。村人は皆同じワニの姿だし、王宮兵も猫科の獣人が多いせいで、すぐには見分けがつかない。
「っポンダー!」
タンクの悲痛な叫び声がした方に振り向くと、ずぶ濡れのジャガーが、傷だらけのワニの喉笛を今にも噛み切ろうとしてた。
「旋風よ! 水の矢にて、敵を貫け! 【大砲水】!」
咄嗟に唱えた風魔法と水魔法の複合魔法で、ジャガーを弾き飛ばす。けれど宙を舞ったジャガーは、それほど大きなダメージを受けた様子もなくくるりと空中で一回転して、華麗に着地した。
「……ああ、やっぱりここにいらっしゃいましたか。エドワード様。ご無事で何よりです。このヒュールデリド・ボンドロネリがお迎えに参りました故、安心なさってください。すぐに頭の足りない粗暴なワニ共も、その間抜けなカバも殲滅致しますので」
「……ふざけるな。人を冤罪で幽閉しておいて、何が迎えだ」
「幽閉していたのは、番を亡くして狂った女王陛下でしょう? 私共は皆、エドワード様の処遇に心を痛めていたのです。しかし、狂ったと言えども女王陛下は、偉大な御方。忠誠を誓った私共としては、その命令に逆らうわけにもいかず……どうか良心と忠誠心の間で引き裂かれんばかりの、この苦しい胸の内をご理解ください」
「ならば、俺を見過ごせばいいだろ。俺を匿ってくれた村の人達をこんな目に遭わせて、俺を連れて逃げてくれたタンクにも手を出すつもりの癖に、取り繕ってんじゃねぇよ。素直に、俺と女王の狂気を利用して戦争はしたいけど、アストルディアが怖いから俺を保護する体にしときたいと言え」
「ああ、エドワード様。そんな風にカバとワニ共に洗脳されてしまったのですね。お労しい。すぐに目を覚ましてさしあげます」
ヒュールデリドはそう言って、戦闘態勢を取った。
……【隷属の首輪】が外れていることにも気づいているだろうに、動揺一つ見せない辺り、こいつ俺のこと完全に舐めているな。かしこぶっている癖に馬鹿だと言うヴィダルスの言葉は、双子だけじゃなく、その親も同じようだ。
347
お気に入りに追加
2,148
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
モブなのに執着系ヤンデレ美形の友達にいつの間にか、なってしまっていた
マルン円
BL
執着系ヤンデレ美形×鈍感平凡主人公。全4話のサクッと読めるBL短編です(タイトルを変えました)。
主人公は妹がしていた乙女ゲームの世界に転生し、今はロニーとして地味な高校生活を送っている。内気なロニーが気軽に学校で話せる友達は同級生のエドだけで、ロニーとエドはいっしょにいることが多かった。
しかし、ロニーはある日、髪をばっさり切ってイメチェンしたエドを見て、エドがヒロインに執着しまくるメインキャラの一人だったことを思い出す。
平凡な生活を送りたいロニーは、これからヒロインのことを好きになるであろうエドとは距離を置こうと決意する。
タイトルを変えました。
前のタイトルは、「モブなのに、いつのまにかヒロインに執着しまくるキャラの友達になってしまっていた」です。
急に変えてしまい、すみません。
男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~
さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。
そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。
姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。
だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。
その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。
女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。
もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。
周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか?
侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
その捕虜は牢屋から離れたくない
さいはて旅行社
BL
敵国の牢獄看守や軍人たちが大好きなのは、鍛え上げられた筋肉だった。
というわけで、剣や体術の訓練なんか大嫌いな魔導士で細身の主人公は、同僚の脳筋騎士たちとは違い、敵国の捕虜となっても平穏無事な牢屋生活を満喫するのであった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜
・話の流れが遅い
・作者が話の進行悩み過ぎてる
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
僕だけの番
五珠 izumi
BL
人族、魔人族、獣人族が住む世界。
その中の獣人族にだけ存在する番。
でも、番には滅多に出会うことはないと言われていた。
僕は鳥の獣人で、いつの日か番に出会うことを夢見ていた。だから、これまで誰も好きにならず恋もしてこなかった。
それほどまでに求めていた番に、バイト中めぐり逢えたんだけれど。
出会った番は同性で『番』を認知できない人族だった。
そのうえ、彼には恋人もいて……。
後半、少し百合要素も含みます。苦手な方はお気をつけ下さい。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
愛する人
斯波良久@出来損ないΩの猫獣人発売中
BL
「ああ、もう限界だ......なんでこんなことに!!」
応接室の隙間から、頭を抱える夫、ルドルフの姿が見えた。リオンの帰りが遅いことを知っていたから気が緩み、屋敷で愚痴を溢してしまったのだろう。
三年前、ルドルフの家からの申し出により、リオンは彼と政略的な婚姻関係を結んだ。けれどルドルフには愛する男性がいたのだ。
『限界』という言葉に悩んだリオンはやがてひとつの決断をする。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
完結·助けた犬は騎士団長でした
禅
BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。
ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。
しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。
強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ……
※完結まで毎日投稿します
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる