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ワニの村 再④
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そんな聡明な女王ですら、不仲と言われていたニルカグルを亡くして狂い、それを王宮兵だけでなく村長のような一般市民ですら当然のように受け入れている事実が、狼獣人の業の深さを改めて突きつけてくる。
もし俺が、この後死ぬようなことがあれば、アストルディアも狂うのだろうか。
それともヴィダルスの言うように、運命によって俺から裏切られたと思いこむように仕向けられて、既に狂っているのだろうか。
俺が知るアストルディアはそんなことをしないと思っていたけど、狂う前の女王もまた知れば知るほどそんなことをするような相手には思えないから、よけい不安になってくる。
子どものような年齢差の主人公の肉体に溺れ、その癖その感情が愛だと原作エドワードと再会するまで気付けなかった、情けなくて愚かな原作アストルディア。俺にはどうしても、俺が知るアストルディアの未来の姿だとは思えないだけど、全てそれが番を亡くした狂気がなせる業だとしたら、仕方ないのかもしれない。
アストルディアの為にも、絶対に生きて未来を変えなければと思う。生き残らなければ、解ける誤解も解けないままかもしれない。
でも、ヴィダルスを始めとした獣人の精鋭を相手にするつもりならば、躊躇せず命をかけるべきだとも思う。
首輪さえ外してもらえば、後は俺一人でヴィダルス達と戦うつもりでいる。
タンクやポンダーはこれ以上絶対巻きこめないし、辺境伯領やクリスの兵にも頼るつもりはない。
戦争を起こさない為には、ヴィダルス達の侵攻自体を、なかったことにする必要がある。後処理のことを考えれば、俺以外にその事実に直面するものはいない方がいい。
当然俺が敗れた時の為に、親父に警告だけはするつもりではいるが、後は全て一人で事態を収束するつもりだ。
ネルドゥース辺境伯領は、俺が命に代えても守ってみせる。腹の子には申し訳ないが……その為に死ぬのなら、本望だ。
でも……生きたいのだって嘘じゃない。できることなら、アストルディアと子どもと三人で、幸せになりたい。
「……取り敢えず、首輪も外せてないうちからこんなことを考えても仕方ないか」
小さく自嘲して、村長に頭を下げ、隣村に住む聖属性のお婆さんを連れて来てくれるようにお願いする。
快く引き受けて出て行った村長の背中を見送りながら、俺は全てが上手くいく夢のような未来を、ただ祈ることしかできなかった。
「ねぇ、エド様。待ってる間、なんか魚料理作ってよ。材料も調理場もあるからさー」
「この首輪してんのに、料理とかできんのか? ……あ、できそうだな。そうか、別に逃亡でも反抗でも自死でもないから、ふつうに動けんのか」
「え、じゃあ俺、野菜料理食べたい! エド様料理久しぶり!」
「いいけど、材料あんのか?」
「何言ってんの。エド様。いつどのタイミングでタンクが訪ねて来ても良いように、タンクが好きな食材はいつでも常備してるに決まってるっしょ」
「はいはい。ごちそう様。ごちそう様」
「まだ食べてないー!」
鑑定使えないから材料の詳細はわからんが、川魚っぽいから火通した方が良さそうだな。フライにすっか。油もあるみたいだし。
根菜系の野菜は一緒にフライにして、葉野菜は生で食うには固そうだから茹でて簡易ドレッシングで和えようかね。あー、アイテムボックス開けたら、ブーリ魚醤使えんのに。便利なスキル全部封じられてんだもんなー。
慣れない台所に悪戦苦闘しながらも、作りあげた魚と野菜のフライや温野菜サラダは好評で、二人ともご機嫌良さそうにバクバク食べてくれた。
こんな状況にも関わらず、すごく平和だ。……なんて思ってられたのも、その時だけだった。
「ーー事情は知らねぇけど、俺らの村に勝手に入って来ようとすんな、王宮兵! 今は村長不在だから、顔を洗って出直せっつってんだろっ!」
「モフモフの毛が生えてるからって、偉そうにすんな! 哺乳類系獣人の上下関係なんぞ、俺らワニには関係ねぇぞ。丸呑みにされてぇか、テメェ。デスロールでもいいぞ!」
「ええい、だからまずはこちらの話を聞けと言っているだろう! 毛なしの野蛮人共め! だから、この村には来たくなかったんだ」
外から聞こえてきた大声に、三人で顔を待ち合わせる。
……どうやら、村長が戻ってくる前に、招かれざる客人が来てしまったようだ。
もし俺が、この後死ぬようなことがあれば、アストルディアも狂うのだろうか。
それともヴィダルスの言うように、運命によって俺から裏切られたと思いこむように仕向けられて、既に狂っているのだろうか。
俺が知るアストルディアはそんなことをしないと思っていたけど、狂う前の女王もまた知れば知るほどそんなことをするような相手には思えないから、よけい不安になってくる。
子どものような年齢差の主人公の肉体に溺れ、その癖その感情が愛だと原作エドワードと再会するまで気付けなかった、情けなくて愚かな原作アストルディア。俺にはどうしても、俺が知るアストルディアの未来の姿だとは思えないだけど、全てそれが番を亡くした狂気がなせる業だとしたら、仕方ないのかもしれない。
アストルディアの為にも、絶対に生きて未来を変えなければと思う。生き残らなければ、解ける誤解も解けないままかもしれない。
でも、ヴィダルスを始めとした獣人の精鋭を相手にするつもりならば、躊躇せず命をかけるべきだとも思う。
首輪さえ外してもらえば、後は俺一人でヴィダルス達と戦うつもりでいる。
タンクやポンダーはこれ以上絶対巻きこめないし、辺境伯領やクリスの兵にも頼るつもりはない。
戦争を起こさない為には、ヴィダルス達の侵攻自体を、なかったことにする必要がある。後処理のことを考えれば、俺以外にその事実に直面するものはいない方がいい。
当然俺が敗れた時の為に、親父に警告だけはするつもりではいるが、後は全て一人で事態を収束するつもりだ。
ネルドゥース辺境伯領は、俺が命に代えても守ってみせる。腹の子には申し訳ないが……その為に死ぬのなら、本望だ。
でも……生きたいのだって嘘じゃない。できることなら、アストルディアと子どもと三人で、幸せになりたい。
「……取り敢えず、首輪も外せてないうちからこんなことを考えても仕方ないか」
小さく自嘲して、村長に頭を下げ、隣村に住む聖属性のお婆さんを連れて来てくれるようにお願いする。
快く引き受けて出て行った村長の背中を見送りながら、俺は全てが上手くいく夢のような未来を、ただ祈ることしかできなかった。
「ねぇ、エド様。待ってる間、なんか魚料理作ってよ。材料も調理場もあるからさー」
「この首輪してんのに、料理とかできんのか? ……あ、できそうだな。そうか、別に逃亡でも反抗でも自死でもないから、ふつうに動けんのか」
「え、じゃあ俺、野菜料理食べたい! エド様料理久しぶり!」
「いいけど、材料あんのか?」
「何言ってんの。エド様。いつどのタイミングでタンクが訪ねて来ても良いように、タンクが好きな食材はいつでも常備してるに決まってるっしょ」
「はいはい。ごちそう様。ごちそう様」
「まだ食べてないー!」
鑑定使えないから材料の詳細はわからんが、川魚っぽいから火通した方が良さそうだな。フライにすっか。油もあるみたいだし。
根菜系の野菜は一緒にフライにして、葉野菜は生で食うには固そうだから茹でて簡易ドレッシングで和えようかね。あー、アイテムボックス開けたら、ブーリ魚醤使えんのに。便利なスキル全部封じられてんだもんなー。
慣れない台所に悪戦苦闘しながらも、作りあげた魚と野菜のフライや温野菜サラダは好評で、二人ともご機嫌良さそうにバクバク食べてくれた。
こんな状況にも関わらず、すごく平和だ。……なんて思ってられたのも、その時だけだった。
「ーー事情は知らねぇけど、俺らの村に勝手に入って来ようとすんな、王宮兵! 今は村長不在だから、顔を洗って出直せっつってんだろっ!」
「モフモフの毛が生えてるからって、偉そうにすんな! 哺乳類系獣人の上下関係なんぞ、俺らワニには関係ねぇぞ。丸呑みにされてぇか、テメェ。デスロールでもいいぞ!」
「ええい、だからまずはこちらの話を聞けと言っているだろう! 毛なしの野蛮人共め! だから、この村には来たくなかったんだ」
外から聞こえてきた大声に、三人で顔を待ち合わせる。
……どうやら、村長が戻ってくる前に、招かれざる客人が来てしまったようだ。
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