俺の悪役チートは獣人殿下には通じない

空飛ぶひよこ

文字の大きさ
上 下
257 / 311

ワニの村 再②

しおりを挟む
「……本当、ごめんな。巻き込んで」

「まあ、正直タンクを巻き込みやがって、とは思わなくもないけど。俺はタンクが決めたことは、全力で応援するって決めてるから、いーよー。エド様の事情自体は、素直にかわいそうだと思うし。でもタンクに何かあれば、多分俺迷いなくエド様見捨てると思うから、そのつもりでよろしくっ!」

「……本当、お前らは呆れるくらい素直だよな」

 たとえタンクの為でも俺に協力すると決めたからには、二者択一の状況になるまでは最大限恩を売っておけばいいのに、わざわざタンクを一番優先すること先に表明するのさぁ……本当、素直過ぎて心配になる。
 でも、これがポンダーであり、アンポンタンなんだよなー……心配になるくらい裏表がなくて、素直で、自分の気持ちに忠実で。
 こいつらと友達になること決めた、過去の俺さぁ……自画自賛になるけど、びっくりするほど見る目あるよな。こいつらなら、絶対俺に嘘つかないというか、仮に頑張って嘘ついてもバレバレな予感しかないもんな。そう言う意味では、ぶっちゃけアストルディア以上に信用できる奴らだわ。俺、あいつの嘘、見抜ける自信ないもん。

「てか、エド様、敬語辞めたねー。これは俺らに、以前よりも心開いた的な表明? やめてよ、俺いざと言う時は、タンクの為にエド様切り捨てる気満々なのに、心痛むじゃん。ただでさえ権力者相手じゃなけりゃ、普通に体張ってもいいくらいにはエド様好きなのにさぁ」

「あ、言われて見れば、エド様タメ口だね。タメ口似合い過ぎて、今まで敬語使ってたこと自体忘れてたよ。なんてか、エド様支配者オーラあるし」

「……これ以上お前ら好きにさせんの、やめてくれ。ポンダーじゃないけど、匿ってもらってることに罪悪感抱いちゃうから」

「え! 駄目だよ。エド様。タンクに惚れないで!」

「あの……その……俺も、エド様がポンダーに惚れたら……やだなあ……」

「そう言う好きじゃねぇから、安心しろよ! もう、本当さ、本当泣けるからやめろ」  

 ……まだ何も解決してないのに、安心しちゃうだろ。泣いて縋りそうになるから、やめてくれ。
 俺は、今からヴィダルスを止めて、戦争を回避しなきゃいないのに。

「……取り敢えず、俺はこの首輪を外したいんだ。この首輪さえなければ、これ以上二人にも迷惑かけないで済むと思う。この村に、無属性持ちか、聖属性持ちはいないか」

「……ごめん、俺、エド様が言ってる意味がわからないや」

「属性って何?」

「ええと……王族みたいに、攻撃や自然現象を無効化できる獣人や、ケガや病気を回復できる特別な力な持つ獣人に心当たりはないか?」

「さすがに王族みたいな人は知らないけど。隣村のリチュチュ婆ちゃんは、怪我や病気を治す特別な力を持ってるって聞いたなあー」

「っその人と、会えるか!?」

「んー。リチュチュ婆ちゃんに怪我や病気を治して欲しい人が殺到し過ぎて、今は面会制限してるって聞いたから難しいかもなあ。村長クラスじゃないと、アポなしで会うのは難しいかも」

 ……この村の村長は、確か、ポンダーのはとこの父親だったか。さすがにポンダーの伝手を使っても、権限使ってもらうのは難しそうだなぁ。俺とタンクは、今は国家反逆罪を犯した犯罪者だし。

 思わずがっくり肩を落とした瞬間、ポンダーの家の扉が開いた。

「ーー話は、聞かせてもらったぞ!」

 いや、ちょ、待って。ポンダーのはとこの親父さん。このタイミングで乱入するのは、もはやギャグだろ。

「お、おじさん、じゃなかった、村長! 何故、ここに!」

「玄関前であんだけ大声で話してたんだから、そりゃ俺まで話回ってくるっつーの。事情は、密かに全部聞かせてもらったぜ」 

 ……いつもなら魔力の気配で気づくはずなのになあ。ポンダーがポンダー過ぎて、つい気が緩んだか。それともこれも首輪のせいか。

 思わず遠い目になる俺に、村長はいい笑顔で親指を立てた。

「安心しろ。エド様。俺ら村のもんは、みんなエド様の味方だ!」
しおりを挟む
感想 160

あなたにおすすめの小説

すべてを奪われた英雄は、

さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。 隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。 それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。 すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。

【完結】第三王子は、自由に踊りたい。〜豹の獣人と、第一王子に言い寄られてますが、僕は一体どうすればいいでしょうか?〜

N2O
BL
気弱で不憫属性の第三王子が、二人の男から寵愛を受けるはなし。 表紙絵 ⇨元素 様 X(@10loveeeyy) ※独自設定、ご都合主義です。 ※ハーレム要素を予定しています。

男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~

さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。 そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。 姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。 だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。 その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。 女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。 もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。 周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか? 侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

美形×平凡の子供の話

めちゅう
BL
 美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか? ────────────────── お読みくださりありがとうございます。 お楽しみいただけましたら幸いです。

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

僕だけの番

五珠 izumi
BL
人族、魔人族、獣人族が住む世界。 その中の獣人族にだけ存在する番。 でも、番には滅多に出会うことはないと言われていた。 僕は鳥の獣人で、いつの日か番に出会うことを夢見ていた。だから、これまで誰も好きにならず恋もしてこなかった。 それほどまでに求めていた番に、バイト中めぐり逢えたんだけれど。 出会った番は同性で『番』を認知できない人族だった。 そのうえ、彼には恋人もいて……。 後半、少し百合要素も含みます。苦手な方はお気をつけ下さい。

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

処理中です...