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初恋が終わる時③
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物の数分で、辺りには屍累々。多分本当の死人までは出してないとは思うが、襲撃者は誰一人まともに動けない様子。
ただ一人、仮面の男だけは実力差を察したのか、転移魔道具を使って逃げ出してた。あれ、すげーお高いんだよな。俺みたいに付与魔法と転移魔法両方使える奴なんて、早々いないし。うちの国では心当たりないから、恐らくレンリネド産か?
まあ、あの仮面の男には心当たりがあるので、逃げられても全く問題ない。
さて、問題はアストルディアの腕の中で半狂乱になってる女だ。
「……それで、家は何処にあるんだ」
「ひぃっ! ば、化け物!」
目の前で殺戮未遂をありありと見せつけられた女は、涙目で震えている。
……俺からすれば、一番近くでアストルディアの戦いを見られる特等席なのに、ひどい反応だな。
「やっぱり、教えは本当だった……! 獣人は滅ぼすべき悪魔なんだ……!」
どれほど熱心なドリフィス教の信者だとしても、アストルディアの強さを目の当たりにして、よくこんなこと言えるなあ。
苦笑いしながら物陰から立ちあがった瞬間、女が懐から出したものを見て血の気が引いた。
「邪悪な獣人よ、滅びよ! 私の命、女神様と教皇様に捧げます……っ」
「ーー【愛しき番に、聖なる守護を】!」
俺流にアレンジした時短呪文でアストルディアに結界を付与すると同時に、魔法陣を発動させて、倒れ伏す襲撃者達と女をお椀型に覆い隠すように、攻撃を閉じ込める結界を張る。
女が取り出した魔道具は、自爆の魔道具だ。使用者の命と引き換えに、町を一つ滅ぼすような大爆発を引き起こす殺戮兵器。前世のゲームにたとえるなら、魔道具版メガ◯テだ。
同時に俺が展開できる結界は、詠唱と魔法陣の二つ。アストルディアを守るのはもちろん、王都に被害を出さないことも最優先しなければならない。この場合、当然俺自身安全確保は二の次だ。
王都に爆発の被害を出さない為には、女だけを囲う攻撃封じ結界が一番良かったが、他の襲撃者達が連動して作用する魔道具を持っている可能性を想定して、敢えて範囲を広めた。その結果、残念ながら俺自身も、爆破攻撃範囲に入ってしまっている。
即座に転移魔法の時短呪文を口にしたが、間に合うかどうかははっきり言って賭けだった。
ペンダント型の魔道具が光り、女が勝ち誇ったような笑みを浮かべる。
ーーまずい、間に合わない。
そう思った瞬間、獣が咆哮した。
「っ」
それは一秒にも充たない出来事だった。
女を投げ捨てたアストルディアが一瞬でこちらに駆け寄って来て、俺を抱えて真上に跳躍した。
魔法も使ってない、身体強化のみの跳躍。
しかしアストルディアはまるでロケットが発射するかのような勢いで、俺の攻撃封じ込め結界を突き破り、高く高く飛び上がった。
空いた結界の穴から発射された爆風が、さらにその高さを後押しする。
……え、これ普通にビルくらいの高さ跳んでね? 足のバネどんだけなのよ。
うわお、地面が遠いー。
「……って、こんなことをしている場合じゃない!」
慌てて転移魔法を発動し、クリスの屋敷に座標を合わせて展開する。もちろんアストルディアと二人分だ。
立ち上る黒煙のせいで地上の被害状況はよくわからないが、アストルディアは結界を綺麗に真上にぶち破ったので、爆発の被害は恐らく襲撃者達だけのはず。
そうじゃなければ、今ごろ王都全体に被害が出てるはずだからな。取り敢えず黒煙で隠れてない所は無事みたいだし、結界全てが無効化されたわけではないことは確かだ。
取り敢えず事態の収集は、近くで様子見してただろう優秀な【影】さん達に任せて、この場からずらかろう。
「……はー。危なかった」
無事地面に叩きつけられる前に屋敷に転移できた俺は、遅れてあふれ出してきた冷や汗を脱ぐう。
マジで危なかった……こんなに命の危険感じたの初めてかも。
「そうだ、クリスに報告……っ!」
指輪の魔道具には、アストルディアだけでなくクリスとも連絡を取れるようになっている。
慌てて状況報告だけしようとした瞬間、近くのソファに叩きつけられた。
「……アスティ?」
ただ一人、仮面の男だけは実力差を察したのか、転移魔道具を使って逃げ出してた。あれ、すげーお高いんだよな。俺みたいに付与魔法と転移魔法両方使える奴なんて、早々いないし。うちの国では心当たりないから、恐らくレンリネド産か?
まあ、あの仮面の男には心当たりがあるので、逃げられても全く問題ない。
さて、問題はアストルディアの腕の中で半狂乱になってる女だ。
「……それで、家は何処にあるんだ」
「ひぃっ! ば、化け物!」
目の前で殺戮未遂をありありと見せつけられた女は、涙目で震えている。
……俺からすれば、一番近くでアストルディアの戦いを見られる特等席なのに、ひどい反応だな。
「やっぱり、教えは本当だった……! 獣人は滅ぼすべき悪魔なんだ……!」
どれほど熱心なドリフィス教の信者だとしても、アストルディアの強さを目の当たりにして、よくこんなこと言えるなあ。
苦笑いしながら物陰から立ちあがった瞬間、女が懐から出したものを見て血の気が引いた。
「邪悪な獣人よ、滅びよ! 私の命、女神様と教皇様に捧げます……っ」
「ーー【愛しき番に、聖なる守護を】!」
俺流にアレンジした時短呪文でアストルディアに結界を付与すると同時に、魔法陣を発動させて、倒れ伏す襲撃者達と女をお椀型に覆い隠すように、攻撃を閉じ込める結界を張る。
女が取り出した魔道具は、自爆の魔道具だ。使用者の命と引き換えに、町を一つ滅ぼすような大爆発を引き起こす殺戮兵器。前世のゲームにたとえるなら、魔道具版メガ◯テだ。
同時に俺が展開できる結界は、詠唱と魔法陣の二つ。アストルディアを守るのはもちろん、王都に被害を出さないことも最優先しなければならない。この場合、当然俺自身安全確保は二の次だ。
王都に爆発の被害を出さない為には、女だけを囲う攻撃封じ結界が一番良かったが、他の襲撃者達が連動して作用する魔道具を持っている可能性を想定して、敢えて範囲を広めた。その結果、残念ながら俺自身も、爆破攻撃範囲に入ってしまっている。
即座に転移魔法の時短呪文を口にしたが、間に合うかどうかははっきり言って賭けだった。
ペンダント型の魔道具が光り、女が勝ち誇ったような笑みを浮かべる。
ーーまずい、間に合わない。
そう思った瞬間、獣が咆哮した。
「っ」
それは一秒にも充たない出来事だった。
女を投げ捨てたアストルディアが一瞬でこちらに駆け寄って来て、俺を抱えて真上に跳躍した。
魔法も使ってない、身体強化のみの跳躍。
しかしアストルディアはまるでロケットが発射するかのような勢いで、俺の攻撃封じ込め結界を突き破り、高く高く飛び上がった。
空いた結界の穴から発射された爆風が、さらにその高さを後押しする。
……え、これ普通にビルくらいの高さ跳んでね? 足のバネどんだけなのよ。
うわお、地面が遠いー。
「……って、こんなことをしている場合じゃない!」
慌てて転移魔法を発動し、クリスの屋敷に座標を合わせて展開する。もちろんアストルディアと二人分だ。
立ち上る黒煙のせいで地上の被害状況はよくわからないが、アストルディアは結界を綺麗に真上にぶち破ったので、爆発の被害は恐らく襲撃者達だけのはず。
そうじゃなければ、今ごろ王都全体に被害が出てるはずだからな。取り敢えず黒煙で隠れてない所は無事みたいだし、結界全てが無効化されたわけではないことは確かだ。
取り敢えず事態の収集は、近くで様子見してただろう優秀な【影】さん達に任せて、この場からずらかろう。
「……はー。危なかった」
無事地面に叩きつけられる前に屋敷に転移できた俺は、遅れてあふれ出してきた冷や汗を脱ぐう。
マジで危なかった……こんなに命の危険感じたの初めてかも。
「そうだ、クリスに報告……っ!」
指輪の魔道具には、アストルディアだけでなくクリスとも連絡を取れるようになっている。
慌てて状況報告だけしようとした瞬間、近くのソファに叩きつけられた。
「……アスティ?」
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