俺の悪役チートは獣人殿下には通じない

空飛ぶひよこ

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結婚に向けて③

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 ……まあ、そんなシモの事情はともかく。
 実際結婚するとなれば、色々根回しは必要になってくる。
 ツンデレ化した親父は、意外とあっさり籠絡できそうではあるけど、一番の問題は……。 



「……兄上! 今日、夕食を一緒に食べてくれるって本当ですか!?」

 キラキラした笑顔を浮かべて上目遣いに見上げてくる、黒髪黒目の美少年の名前は、レオナルド。
 ……俺が8歳の時に生まれた現在11歳の弟であり、原作エドワードが禁断の恋に落ちてしまった相手である。

「……ああ。家族揃って食事をしたことなんて、今までほとんどなかっただろう? 父上にお願いして、今夜は家族四人で夕食が取れるようお願いしたんだ」

 だめならだめで、改めて領主室にレオを伴って出向こうかとも思ったが、親父は驚いたように目を見開いた後、明らかに動揺した様子で挙動不審に了承してくれた。
 仕事が忙しいからと、親父は領主室で一人食事をとるのが当たり前になっていたのだけど、本当は家族揃っての食事に対する憧れのようなものもあったのかもしれない。……いや、だったら、普通に食堂に来て食べろよって話ではあるんだが。
 今さらながら、親父も家族と歩み寄ろうとしてるんかな。そのきっかけが、こないだのあれなら、ちょっと嬉しい。

「……え、父上もですか……」

 まあ、残念ながらレオはレオで、普通に親父のこと大嫌いみたいだから、なかなかそう簡単に関係は修復できなさそうではあるけど。
 ……俺の時みたいに暴力は奮ってはないけど、教育に関してばかり厳しくて、口を開けば説教ばかりの父親なんか、普通に嫌だよな。親子関係の修復には、暫く時間が掛かりそうだ。

「ああ。俺の将来について、家族に話しておきたいことがあって」

「っもしかして、兄上、結婚を考えるような恋人ができたのですか!?」

「っ」

 ドンピシャ過ぎるレオの言葉に、思わず言葉につまった。
 いや、俺とアストルディアは恋人じゃなくて番だし、学校を卒業する前からそう言う関係だから、厳密には違うけど。

「そうなんですね! 兄上を誑かすなんて、どこの馬の骨……じゃない、どこの家のご令嬢ですか!? 未来の辺境伯婦人にふさわしい女性じゃなければ、絶対僕は認めませんからね!」

 可愛らしい顔を般若のように歪めて、鼻息荒く詰め寄ってくるレオに、思わず遠い目になる。
 近親相姦を避ける為に、程よい距離感で接して、良好で健全な兄弟関係を築けていると思ってたレオだったが、学校を卒業して帰国した頃には何故だか強火なブラコンに成長してしまっていた。
 本人曰く「やっと学校を卒業した兄上が、これからずっと家にいてくれると思ったら嬉しくて、我慢できないんです!」とのことだったが、俺としてはこれも全て原作小説の呪いなんじゃないかと疑っている。……いくらレオに大好きアピールさせても、ぜってぇ俺は近親相姦的な感情を抱いたりしねーぞ。ちくしょう。
 レオは確かに美少年だが、親父とそっくりだ。つまり順調に成長すれば、将来的にはああ育つわけで……うん。近親相姦云々以前にないわ。何があっても絶対勃たない自信ある。強制力さん、諦めろ。

「……悲しいな。レオは兄である俺の見る目を信用してくれないのか?」

 下手に宥めるよりも効果がありそうなので、悲しげに目を伏せたら、わかりやすくレオは怯んだ。

「そ……そう言うわけでは……」

「俺の結婚は、辺境伯領の為だよ。ちゃんと辺境伯領にとって、もっとも利益になる相手を厳選したんだ。それなのに、レオは俺の判断を疑うのかい?」

「あ、兄上のことは、誰よりも信頼してます! 信頼してます、が……」

 黒真珠の瞳に、大粒の涙が溜まる。
 ……あ、やべ。

「っとにかく、僕は、兄上の結婚なんか認めませんからっ!!!」

 大泣きしながら走り去って行くレオの後ろ姿を見送りながら、ため息を吐く。

 レオには俺の代わりに次期辺境伯&領主になってもらう必要があるから、何とかしてアストルディアとの結婚に賛同させたいんだが……大丈夫か。これ。



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