俺の悪役チートは獣人殿下には通じない

空飛ぶひよこ

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辺境伯領改革計画②

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「まあ……獣人の子どもって、こんなにも可愛いのね」

「ぬいぐるみみたい! 抱っこしたい!」

「エドワード様も王子様のようで麗しいから、可愛いらしい獣人の子ども達に囲まれてる姿は、目の保養だわー……」

 獣人の種族による美醜の差をあげつらうつもりはないが、それでもやはり可愛いは正義。人化はできないし力もないけど、アニカの孤児院の子はみんな人間からすれば可愛いらしく見える種族の子ばかりだったので、狙い通り領民の反応は上々です。
 ちなみに来てくれた孤児院のみんなには、俺が結界を付与した魔道具を装備させ済み。魔法攻撃も物理攻撃も全部跳ね返すうえに、悪意を持った人間は一定の距離からは近づけない効果を付与したから、子ども達が肉体的に傷つけられることはない。
 不用意に近づいて来て吹き飛ばされた何人かの馬鹿は、「辺境伯嫡男である私の客人に、何をするつもりでしたか?」と笑顔で物陰に連れていき、教育的指導をさせてもらった。俺の強さは知ってる癖に、本当良い度胸してる。身元もしっかり吐き出させたから、裏で糸を引いていると思われる奴らには、後日念入りに忠告するつもりだ。
 さらにさらに、子ども達を守る為に、俺の要請を受けたアストルディアが特別な護衛もつけてくれている。

「それでは、エドワード様。そろそろ宿に」

「はい。子ども達も不慣れな土地を歩き回って疲れているようですし、帰りましょうか」

 ピンと背筋を伸ばして、涼しげな目元でこちらを見上げた小柄な美青年は、チルシアさん。
 茶色と黒のツートンカラーの髪の上に、大きめな可愛いらしい三角お耳がある彼は、ジャッカルの獣人で、親善試合の2試合目で戦ったあの礼儀正しい王宮兵だ。

「すみません。チルシアさん。不本意でしょうに、人化までして頂いて」

「いえ。セネーバでは女王陛下のお気持ちを慮って極力人化しないように努めておりましたが、私個人に人化への忌避意識はございません。姿一つで、領民の方々が受け入れやすくなるのなら、私は喜んで人化させて頂きます」

 にっこりと微笑むチルシアさんの姿は、愛らしさと格好良さと清潔感と育ちの良さと……何というか人を安心させるような魅力に溢れていて、見ていた領民のお嬢様(ご年配の女性も含む)方から、ほおと感嘆のため息が聞こえてきた。
 ……わかる、わかるよ。チルシアさん、獣面状態の頃からカッコ可愛いなと思ってたけど、人化したら本当魅力大爆発してるよね。
 身長があまり大きくなくて、筋肉はついてるけど細身でしなやかな体してるから、領民の獣人に対する恐怖心を無駄に煽ることもないし。
 ヴィダルスみたいに粗暴でも、アンゼみたいにアホの子丸出しでもなく、何というか騎士っぽい気品があるから、良い感じに辺境伯領民達の獣人に対する偏見をブチ壊してくれる。
 さすがアストルディア、絶妙な人派遣してくれたな。
 最初はアンポンタンに頼もうかと思ってたんだけど、アンゼとタンクは王宮新兵としてめちゃくちゃ忙しいみたいだし、ポンダーは人化しても姿で受け入れられない可能性あったんだよな。みんなアホで、喧嘩っぱやいし。

「すみません、チルシアさん。先に皆を引き連れて、宿へ戻ってもらってもいいですか? いや、でも私が案内しないと、道がわからないですよね」

「いえ。一度来た道ですから、問題なく戻ることもできますが。何かご用事が?」 

「ちょっとアニカに、見せると約束してた場所があって」

 本当は他の子達も一緒に連れて行くつもりだったのだけど、どうもアニカ以外の子達には転移魔法で酔ってしまうみたいで。
 セネーバに戻る時以外は、もうやりたくないと拒否されたので、残念ながら同行者はアニカ一人になってしまった。
 それでもアニカはどうしても行きたいようなので、できれば連れて行ってあげたい。

「結界の魔道具の他に、転移の魔道具も渡しておくので、何かあれば使ってください。これを作動させた瞬間、連れて来た孤児院の子全てと同時に、セネーバの結界の所まで転移されるよう設定してあります」
 
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