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魔石交易④
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戦争のない平和な未来を対価に、俺はアストルディアにケツ処女差し出したからな。恐らく俺のケツ穴は、世界一高い。高級男娼も真っ青だ。
……てか、クリスもだけど、ケツ処女喪失したの何故バレたし。獣人やクソ親父は気づいてなさそうだったけど、他にも気づく奴いんのかなー。やだなー。
「……俺のケツの話はどうでもいいんだよ。今、セネーバの方も魔石採掘に関しては色々準備してる最中みたいだから、とりあえずお試しで一日だけ。んで、無理そうなら、その後はきっぱり断ってくれていい。俺は鉱夫達をセネーバに売りたいわけじゃない。鉱夫達に新しい仕事のやり方を提案したいだけなんだ」
命令じゃない。強制じゃない。
引き受けてくれたら助かるけど、断られたらまた別の方法を考える。魔石を傷つけないよう、周りの固まった土ごと掘り出してもらったものを輸入して、そこから先の過程を辺境伯領の鉱夫にやってもらうとかな。
でもできることなら、これをきっかけに少しでもセネーバとうちの領の民の交流が行われるようにしたい。
魔石採掘の派遣から慣らして、ある程度軌道に乗ったところで魔石以外の交易も初めて、いずれは国境を超える許可さえあれば互いの民が自発的に交流できるようにしていきたい。
荒っぽい辺境伯領の奴らの中でも、特に荒事を得意とする鉱夫達は、獣人を恐れる領民の意識を変える第一歩として、うってつけの存在なのだ。
「……俺らみたいな最底辺の奴らなんて、お貴族様からすれば従って当然の立場だろうに。アディは変わんねぇな」
「魔石採掘の仕事を最底辺だなんて思ったことはねぇよ。皆の生活に不可欠な魔石を、危険を承知で採掘してくれる鉱夫達には感謝してる。だからこそ、辺境伯領で魔石が枯渇しても、食いっぱぐれないようにしたいんだよ」
「その考え方自体が、お貴族様としては異端だっつってんだよ。崩落事故の時のこと、覚えてっか? 変装はしてても、明らかに育ちがいいガキがよ、土まみれになりながら必死で埋まってる俺らのことを救助してくれてるなんて、普通あり得ねぇ。俺ぁ、てっきりあの時既に死んじまってて、天使が迎えに来たのかと思ったぜ」
「嘘つけ。ゼルさん、あん時『ガキがこんな危険な場所に来んじゃねぇ! 帰れ!』って叫んだじゃねぇかよ。下半身が土砂で押しつぶされてたのによ」
「そうだったか?」
「そうだよ」
二人で煙草をふかしたまま顔を見あわせて、同時に笑った。
痛ましい事故だったが、たまたまあの時は近くにいてすぐに駆けつけることができたから、死者は出なかった。
そしてそんな事故も、それまではけして珍しいものではなかったと、後から知った。
「……アディが長期休暇の度に、採掘場に出向いて土魔法をかけ続けてくれたおかげで、あれから崩落事故は一度も起こってねぇ。毎年必ず出ていた死者が、いっきに0になったんだ。鉱夫達はみんな口には出さねぇが、アディには感謝している」
煙草の灰を灰皿に落としながら、ゼルさんが目を伏せる。
「なあ。アディ。俺らは今まで、お前に守られていた。そのうえでこんなことを言うのは図々しいかもしれんが……セネーバでも、同じように守ってくれるか」
掠れた声で小さく吐き出された言葉に、にっと歯を剥き出して笑う。
「当たり前だろ。俺は【国境の守護者】であり、【辺境伯領民の守護者】だ。ゼルさん達が、辺境伯領民でいる以上、俺が必ず守ってやるよ」
「ははっ……まだ20にもならねぇお前にそこまで言われちゃ、断るわけにもいかねぇな。獣人にビビっていることが知れ渡れば、俺の面子は丸潰れだ」
「じゃあ」
「お前の提案乗るよ。もっとも、若い奴らでこの話に乗れる度胸がある奴がどれくらいいるかは、聞いてみねぇとわかんねぇけどな。最悪、俺一人でも行く」
「え、トップのゼルさんが自分で?」
「ばーか。こう言うのはトップが率先してやって、度胸を示さねぇと駄目なんだよ。もうすぐ50の俺を掘りたい獣人はいねぇだろうしな」
……いや、ゼルさん腕っぷしが強くて度胸もあるから、惹かれる獣人が絶対いないとは断言できないけど。
まあ、でもちゃんと魔道具渡すし、初日は俺も一緒に行って獣人の反応を確認するから、大丈夫……な、はず。
……てか、クリスもだけど、ケツ処女喪失したの何故バレたし。獣人やクソ親父は気づいてなさそうだったけど、他にも気づく奴いんのかなー。やだなー。
「……俺のケツの話はどうでもいいんだよ。今、セネーバの方も魔石採掘に関しては色々準備してる最中みたいだから、とりあえずお試しで一日だけ。んで、無理そうなら、その後はきっぱり断ってくれていい。俺は鉱夫達をセネーバに売りたいわけじゃない。鉱夫達に新しい仕事のやり方を提案したいだけなんだ」
命令じゃない。強制じゃない。
引き受けてくれたら助かるけど、断られたらまた別の方法を考える。魔石を傷つけないよう、周りの固まった土ごと掘り出してもらったものを輸入して、そこから先の過程を辺境伯領の鉱夫にやってもらうとかな。
でもできることなら、これをきっかけに少しでもセネーバとうちの領の民の交流が行われるようにしたい。
魔石採掘の派遣から慣らして、ある程度軌道に乗ったところで魔石以外の交易も初めて、いずれは国境を超える許可さえあれば互いの民が自発的に交流できるようにしていきたい。
荒っぽい辺境伯領の奴らの中でも、特に荒事を得意とする鉱夫達は、獣人を恐れる領民の意識を変える第一歩として、うってつけの存在なのだ。
「……俺らみたいな最底辺の奴らなんて、お貴族様からすれば従って当然の立場だろうに。アディは変わんねぇな」
「魔石採掘の仕事を最底辺だなんて思ったことはねぇよ。皆の生活に不可欠な魔石を、危険を承知で採掘してくれる鉱夫達には感謝してる。だからこそ、辺境伯領で魔石が枯渇しても、食いっぱぐれないようにしたいんだよ」
「その考え方自体が、お貴族様としては異端だっつってんだよ。崩落事故の時のこと、覚えてっか? 変装はしてても、明らかに育ちがいいガキがよ、土まみれになりながら必死で埋まってる俺らのことを救助してくれてるなんて、普通あり得ねぇ。俺ぁ、てっきりあの時既に死んじまってて、天使が迎えに来たのかと思ったぜ」
「嘘つけ。ゼルさん、あん時『ガキがこんな危険な場所に来んじゃねぇ! 帰れ!』って叫んだじゃねぇかよ。下半身が土砂で押しつぶされてたのによ」
「そうだったか?」
「そうだよ」
二人で煙草をふかしたまま顔を見あわせて、同時に笑った。
痛ましい事故だったが、たまたまあの時は近くにいてすぐに駆けつけることができたから、死者は出なかった。
そしてそんな事故も、それまではけして珍しいものではなかったと、後から知った。
「……アディが長期休暇の度に、採掘場に出向いて土魔法をかけ続けてくれたおかげで、あれから崩落事故は一度も起こってねぇ。毎年必ず出ていた死者が、いっきに0になったんだ。鉱夫達はみんな口には出さねぇが、アディには感謝している」
煙草の灰を灰皿に落としながら、ゼルさんが目を伏せる。
「なあ。アディ。俺らは今まで、お前に守られていた。そのうえでこんなことを言うのは図々しいかもしれんが……セネーバでも、同じように守ってくれるか」
掠れた声で小さく吐き出された言葉に、にっと歯を剥き出して笑う。
「当たり前だろ。俺は【国境の守護者】であり、【辺境伯領民の守護者】だ。ゼルさん達が、辺境伯領民でいる以上、俺が必ず守ってやるよ」
「ははっ……まだ20にもならねぇお前にそこまで言われちゃ、断るわけにもいかねぇな。獣人にビビっていることが知れ渡れば、俺の面子は丸潰れだ」
「じゃあ」
「お前の提案乗るよ。もっとも、若い奴らでこの話に乗れる度胸がある奴がどれくらいいるかは、聞いてみねぇとわかんねぇけどな。最悪、俺一人でも行く」
「え、トップのゼルさんが自分で?」
「ばーか。こう言うのはトップが率先してやって、度胸を示さねぇと駄目なんだよ。もうすぐ50の俺を掘りたい獣人はいねぇだろうしな」
……いや、ゼルさん腕っぷしが強くて度胸もあるから、惹かれる獣人が絶対いないとは断言できないけど。
まあ、でもちゃんと魔道具渡すし、初日は俺も一緒に行って獣人の反応を確認するから、大丈夫……な、はず。
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