俺の悪役チートは獣人殿下には通じない

空飛ぶひよこ

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魔石交易③

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 魔石は、特殊な条件の土の中で魔力が結晶化したもので、拳一つ分の魔石ができるまで数十年の時間がかかっていると言われている。
 魔道具や魔法の強化の為に消費される魔石の需要は高く、どれだけ慎重に採掘したところで、いつかは辺境伯領で採掘できる魔石が枯渇することは目に見えていた。
 セネーバに留学後も、長期休みでリシス王国に戻る度に採掘場を土魔法でサーチして、魔石の埋蔵量を確認していたが、今のペースで掘り進めれば保って五年。もしかしたら、それより早く、魔石が枯渇してしまう可能性もある。
 魔石が育つ条件を満たす場所は少なく、辺境伯領内で新しく採掘できる場所を探すのは非常に難しい。かといって、他領の鉱石場でも、ゴロツキ同然の我が領の鉱夫を新たに受け入れてくれるところは少ないだろう。残念ながら辺境伯領の民は、鉱夫に限らず総じて荒っぽい気質なのだ。馴染める気がしない。
 そんな訳で、たとえセネーバとの交易がなかったとしても、鉱夫達が近い将来職を失い路頭に迷う可能性は非常に高かったりする。

「……だからって、セネーバから魔石を輸入するのを見逃せって? どっちにしろ路頭に迷うことになんなら、セネーバから魔石が入って市場価格が落ちる前に、ここの魔石を掘れるだけ掘って売り尽くした方が、まだ懐があったけぇじゃねぇか」

「だから、いい話だって言ってんだろ。なあ、ゼルさんは、獣人が怖いか?」

「は? 俺を誰だと思ってやがる。怖いわけねぇだろ」

「なら安心したわ」

 まずい煙草をくゆらせながら、目を細める。

「移動は俺が何とかするから、若い奴適当に見繕って、セネーバの鉱石場に派遣させてくれよ。期間決めて。あっちは魔石の需要がないから、鉱石場にはお宝が大量に眠ってる。しかも獣人は力は強いが手先は不器用で、傷がつかないように魔石を掘り出すのは難しいんだと。獣人達が掘れば三級品になっちまうような魔石でも、ゼルさん達なら一級品にできる。どうだ、いい話だろ?」

 すでに治水工事で協力した、採石場があるクラスメイトの集落からは、人間の鉱夫を派遣してもらえるなら是非と言われている。なんなら宿場や飯の手配もしてくれるそうだ。
 クリスにも、計画は相談済み。ゼルさん達さえ了承してもらえば、いつでも計画は実行できる。

「そ、それは……セネーバの獣人鉱夫達の、性処理係としてって意味じゃねぇよな」

 獣人なんて怖くないと即答したわりに、青ざめてるゼルさんに思わず吹き出す。

「ゼルさん達は魔力が少ないから、獣人達にとってはそれほど魅力的な相手じゃねぇよ。一応身体的に力がある相手にも性的魅力は感じるって言ってたけど、向こうにはゼルさんレベルのマッチョなんてごろごろいるし。心配なら、俺特製の護身用の魔道具も持たせてやるぜ? 襲いかかってきた奴を昏倒させて、ちんこを暫く不能にする奴な」

 ちなみにこの魔道具は、ヴィダルスがとち狂った時用に開発したものです。意外にあいつ慎重派過ぎて、使う機会なかったけど。

「なら、大丈夫……なのか?」

「確実な保証はねぇけど、実際俺が介入する前の魔石採掘の仕事は、それこそいつ死ぬか分からねぇような仕事だったじゃん。ぶっちゃけ死ぬよりは、ケツの穴掘られた方がマシじゃね? もしあんまり過ぎる扱いをされるようなら、代わりに俺が復讐してやるし。ゼルさんとこの奴ならリスク承知でも引き受けそうな案件だと思ってんだけど、どうよ」

 俺の言葉に、何故かゼルさんは可哀想なものでも見るような目でため息を吐いた。

「……お前はそう言う考えで、ケツ処女捨てやがったのか」

「処女喪失したかどうかは黙秘するけど、何故その考えに至ったか聞いてもいいか」

「ちょっと会わねぇ間に、色気つき過ぎなんだよ。十年、否五年若けりゃ、交渉の条件で誘ってたわ」

「まじかよ、ゼルさん。男もイケんのかよ。生憎俺のケツ穴はめちゃくちゃ高ぇから、これくらいの条件じゃ売れねぇけどな」


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