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右手薬指の宣誓②
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俺の血に塗れた口を、べろりと舌で舐めながら、ヴィダルスが嗤う。
ヴィダルスの牙の餌食になった俺の右手の薬指は、骨まで噛みちぎられて、皮だけでつながっている状態だった。
皮まで切れたら、再生がより困難になる。慌ててもげかけた指を切断面にくっつけて、聖魔法を唱える。
「っ……痕が」
俺の実力なら、たとえ腕が引き千切られても、すぐに聖魔法を唱えれば痕を残さず治すことができる。
それなのに、回復した俺の右手の薬指には、ミミズ腫れのように、噛みちぎられた跡がくっきり残ったままだった。
アストルディアにつけられた、うなじの噛み痕のように。
「それは、予約の証だ。エドワード。お前がどれだけ拒絶しようが、たとえ俺以外と番ってようが、一年半後には必ずお前のうなじを噛んでお前を番にする。無理やりでも、お前を俺のもんにする。本当は今すぐそうしてぇが、残念ながらまだ力不足だからな。その指の跡だけで満足してやるよ」
にいっと歯を剥き出しにして、ヴィダルスは狂気に満ちた笑みを浮かべた。
「お前が俺の求愛に応えてくれるのなら、大切に大切にしてやるつもりだったが、どこまでも拒絶するなら仕方ねぇ。一年半後もお前が同じ言葉を口にするようなら、そん時は鎖に繋いで、ランドルーク家の地下牢に閉じ込めて飼ってやるよ。服も着せねぇ、他の誰にも会わせねぇ。ただ俺が望んだ時に股開いて、ガキを孕むだけの存在まで堕としてから、俺だけを愛するように調教してやる。安心しろ。正妻扱いでも、性奴隷扱いでも、番は番だ。俺は、一生お前だけを愛してやるよ」
ぞくりと、鳥肌が立った。
まるで俺が自ら、原作通りヴィダルスの性奴隷になる道を選んでしまったような気がして。
「……考え直せ。ヴィダルス。今ならまだ間に合う。お前がうなじを噛んでない今なら、まだ別の番を選べるんだ」
敬語をやめて、まっすぐにヴィダルスを見据えた。
「俺を番にしたら、お前は必ず不幸になるぞ。そうなれば遠くない未来に俺は闇魔法に飲まれ、お前を操って破滅に導く。絶対にだ。悪いことを言わないから、他を当たれ。王族であるお前の番になりたい奴なんていくらでもいるだろ」
心からの俺の忠告に、ヴィダルスは心底嬉しそうに目を細めた。
「やっと敬語をやめて、素を出したなァ。エドワード。確かにお前の闇魔法? はやべぇ。すでに一度やられてっしなァ」
「じゃあ……」
「でも、だから何だって言うんだ? お前が俺を闇魔法で破滅させる時は、お前も闇魔法に飲まれて破滅してんだろお? 最高じゃねぇか」
当然のように返された言葉に、絶句する。
「番と共に生きられねぇ平穏な人生よか、番と共に破滅して共に死ねる人生の方がずっと幸福だ。狼獣人なら、みなそう思う。……つくづく種族の業って奴は恐ろしいぜ。俺の獅子獣人の血は、どこ行ったんだよ」
喉を鳴らして笑いながら、ヴィダルスは俺の手を取り、ベロリと薬指の噛み跡を舐めた。
「俺を諦めさせたきゃ、俺を殺せ。エドワード。俺は生きてる限り、お前を追いかけ続ける。お前は俺の唯一の番で、命を懸けるに値する獲物だからなァ」
「……それが、定められた運命だからか」
「俺がそう決めたからだ。そしてお前が、そう決めさせた。お前が、どこかで俺の愛を受け入れていたら。お前が、親善試合で俺と戦う前に負けていたら。決勝戦で、俺を負かさなかったら。きっとお前への想いはここまで育たなかった。全部お前のせいだ。エドワード。必ず、責任は取ってもらう。お前の体と、人生でよお」
……それが全て、女神によって操作された感情だって言っても、ヴィダルスはけして認めはしないんだろうな。
本当にどこまでも、かわいそうな奴だ。
「お前が何て言おうが、俺の気持ちは変わらないし、お前が俺の野望を邪魔するようなら、容赦なく殺してやる」
ヴィダルスの牙の餌食になった俺の右手の薬指は、骨まで噛みちぎられて、皮だけでつながっている状態だった。
皮まで切れたら、再生がより困難になる。慌ててもげかけた指を切断面にくっつけて、聖魔法を唱える。
「っ……痕が」
俺の実力なら、たとえ腕が引き千切られても、すぐに聖魔法を唱えれば痕を残さず治すことができる。
それなのに、回復した俺の右手の薬指には、ミミズ腫れのように、噛みちぎられた跡がくっきり残ったままだった。
アストルディアにつけられた、うなじの噛み痕のように。
「それは、予約の証だ。エドワード。お前がどれだけ拒絶しようが、たとえ俺以外と番ってようが、一年半後には必ずお前のうなじを噛んでお前を番にする。無理やりでも、お前を俺のもんにする。本当は今すぐそうしてぇが、残念ながらまだ力不足だからな。その指の跡だけで満足してやるよ」
にいっと歯を剥き出しにして、ヴィダルスは狂気に満ちた笑みを浮かべた。
「お前が俺の求愛に応えてくれるのなら、大切に大切にしてやるつもりだったが、どこまでも拒絶するなら仕方ねぇ。一年半後もお前が同じ言葉を口にするようなら、そん時は鎖に繋いで、ランドルーク家の地下牢に閉じ込めて飼ってやるよ。服も着せねぇ、他の誰にも会わせねぇ。ただ俺が望んだ時に股開いて、ガキを孕むだけの存在まで堕としてから、俺だけを愛するように調教してやる。安心しろ。正妻扱いでも、性奴隷扱いでも、番は番だ。俺は、一生お前だけを愛してやるよ」
ぞくりと、鳥肌が立った。
まるで俺が自ら、原作通りヴィダルスの性奴隷になる道を選んでしまったような気がして。
「……考え直せ。ヴィダルス。今ならまだ間に合う。お前がうなじを噛んでない今なら、まだ別の番を選べるんだ」
敬語をやめて、まっすぐにヴィダルスを見据えた。
「俺を番にしたら、お前は必ず不幸になるぞ。そうなれば遠くない未来に俺は闇魔法に飲まれ、お前を操って破滅に導く。絶対にだ。悪いことを言わないから、他を当たれ。王族であるお前の番になりたい奴なんていくらでもいるだろ」
心からの俺の忠告に、ヴィダルスは心底嬉しそうに目を細めた。
「やっと敬語をやめて、素を出したなァ。エドワード。確かにお前の闇魔法? はやべぇ。すでに一度やられてっしなァ」
「じゃあ……」
「でも、だから何だって言うんだ? お前が俺を闇魔法で破滅させる時は、お前も闇魔法に飲まれて破滅してんだろお? 最高じゃねぇか」
当然のように返された言葉に、絶句する。
「番と共に生きられねぇ平穏な人生よか、番と共に破滅して共に死ねる人生の方がずっと幸福だ。狼獣人なら、みなそう思う。……つくづく種族の業って奴は恐ろしいぜ。俺の獅子獣人の血は、どこ行ったんだよ」
喉を鳴らして笑いながら、ヴィダルスは俺の手を取り、ベロリと薬指の噛み跡を舐めた。
「俺を諦めさせたきゃ、俺を殺せ。エドワード。俺は生きてる限り、お前を追いかけ続ける。お前は俺の唯一の番で、命を懸けるに値する獲物だからなァ」
「……それが、定められた運命だからか」
「俺がそう決めたからだ。そしてお前が、そう決めさせた。お前が、どこかで俺の愛を受け入れていたら。お前が、親善試合で俺と戦う前に負けていたら。決勝戦で、俺を負かさなかったら。きっとお前への想いはここまで育たなかった。全部お前のせいだ。エドワード。必ず、責任は取ってもらう。お前の体と、人生でよお」
……それが全て、女神によって操作された感情だって言っても、ヴィダルスはけして認めはしないんだろうな。
本当にどこまでも、かわいそうな奴だ。
「お前が何て言おうが、俺の気持ちは変わらないし、お前が俺の野望を邪魔するようなら、容赦なく殺してやる」
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