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ワニの村⑤
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「……まあ、ヴィダルス様のこととか、アストルディア王子の意思とか、色々問題はあるが。もし兄ちゃんが王子と結婚したら、セネーバ国民はお祭り騒ぎだろうなあ」
酒をちびちび舐めていた村長が、酒精混じりのため息と共にしみじみと呟く。
「なんせ兄ちゃんの色合いは、今は亡きエレナ姫とそっくりだ。そして、アストルディア王子は色合いこそ違えど、建国の英雄であるアルデフィア王の再来と言われてる方だ。奴隷から開放された半世紀前同様、未来が見えなくなってきているセネーバに、新しい時代が来ると、みんな大喜びで兄ちゃんを歓迎するはずさ」
「……なら、いいんですけどね」
「でもヴィダルス様も、顔や雰囲気はともかく、色合いはアルデフィア王そっくりだからな。兄ちゃんとヴィダルス様が結婚しても、十分盛り上がるだろうけどな!」
……おい、最後のはよけいだ。俺はあいつとは絶対結婚しない。絶対にだ。
一人内心イラッとしながら酒を煽ると、いい感じに酒が回ってきたらしいポンダーが話の腰を折ってきた。
「てかさあ、てかさあ! おじさんさっき、ワニ獣人は人間からしたら醜くく見えるって言ってたけど、おかしくね? 前、エド様、獣人みんな人化したら、人間的には美形だって言ってたじゃん! 嘘ついたのー!?」
……いや、ポンダー、ちょっと待て。俺はまだ、アストルディアの話を色々聞きたいんだが。
「なに!? 兄ちゃん、人化すれば爬虫類系の獣人でも、人間からはモテモテになれんのか!?」
「え、なら国交再開後、他の奴らが人化する前に、うちの若い奴ら人化させて交流させれば、婚活がめちゃくちゃ有利になるんじゃねぇの!?」
「対人間だと、生まれるのは絶対ワニ獣人にはなるが、子が生まれやすくて魔力が高い雌が釣れるかもしれないなら、良い話だよなあ!」
「ちょ、皆さん、落ち着いてください。私は、お祭りの時に爬虫類系獣人の方の人化した姿は見てないので、何とも……」
「じゃあ、今見てよ! ほら!」
一瞬にしてポンダーが、ワニの尻尾が生えた、エキゾチックな雰囲気の美青年に変わった。
体型も身長も獣面状態と同じ感じなのに、人化するとしなやかな体に均整の取れた筋肉がついているのが際立って、妙に色気を感じる。
ただ、問題は。
「ああ、肌の色はそのままなんですね。あと、目もワニのまま、瞳孔が縦長で」
「え? 駄目? 俺、ブサイク!?」
「いえ、十分美形ですよ。ただ、好みが分かれる感じではあります。好きな人はすごく好きでしょうけど」
緑褐色の肌も、猫のような縦長の瞳孔も、好きな人は好きだろうが、けして万人受けはしないだろう。ブーリ魚醤と同じだ。
哺乳類系獣人の場合、肌の色は人間に近いようだったから、爬虫類系獣人を醜いと言う人間がいたのもわからなくもない。
「じゃあ、エド様は俺は?」
「俺も俺もー」
「……アンゼは、イケメンと言うより、美少年ですね。タンクは普通にかっこいいです」
アンゼは、茶色と黒のまだら髪に、丸いお耳がついた、黒目がちの美ショタ。
タンクは灰褐色の髪に灰色の小さい耳がついた、涼しげな目の美マッチョだった。
アンゼはともかく、タンクは言われなければカバだなんてわからない。人間からするとちょっと間抜けに見える顔も、水生哺乳類特有の体脂肪率も、人化には反映されないようだ。
まあ、獣面状態でも、普通にマッチョ体型だったしな。獣化して地ならししてる時は、お腹ポヨンポヨンしてたが。……この辺の原理は、どうなってんだろ。人化獣人を総イケメンにしたい腐女子の夢が反映された結果だから、恐らくあまり突っ込んではいけないんだろう。
「ええ、タンクばっかずりぃ! 俺もかっこいいって言われたい!」
「……そうか。タンクの人化は、人間からすればイケメンなんだ……何としてでも、交易が開始する前に口説き落とさないと……」
約一名が闇落ちしかけている中、何故か俺も俺もと他の村人達まで人化しだしたので、肌の色が違うエキゾチック美中年が次々に爆誕していった。
結局洪水対策お疲れ様宴会は、参加者総人化の面白飲み会へと変わり、建国祭の時のように仮装パーティー的な感じで盛りに盛り上がった結果、それ以上アストルディアについての情報を引き出すことはできなかったのだった。
酒をちびちび舐めていた村長が、酒精混じりのため息と共にしみじみと呟く。
「なんせ兄ちゃんの色合いは、今は亡きエレナ姫とそっくりだ。そして、アストルディア王子は色合いこそ違えど、建国の英雄であるアルデフィア王の再来と言われてる方だ。奴隷から開放された半世紀前同様、未来が見えなくなってきているセネーバに、新しい時代が来ると、みんな大喜びで兄ちゃんを歓迎するはずさ」
「……なら、いいんですけどね」
「でもヴィダルス様も、顔や雰囲気はともかく、色合いはアルデフィア王そっくりだからな。兄ちゃんとヴィダルス様が結婚しても、十分盛り上がるだろうけどな!」
……おい、最後のはよけいだ。俺はあいつとは絶対結婚しない。絶対にだ。
一人内心イラッとしながら酒を煽ると、いい感じに酒が回ってきたらしいポンダーが話の腰を折ってきた。
「てかさあ、てかさあ! おじさんさっき、ワニ獣人は人間からしたら醜くく見えるって言ってたけど、おかしくね? 前、エド様、獣人みんな人化したら、人間的には美形だって言ってたじゃん! 嘘ついたのー!?」
……いや、ポンダー、ちょっと待て。俺はまだ、アストルディアの話を色々聞きたいんだが。
「なに!? 兄ちゃん、人化すれば爬虫類系の獣人でも、人間からはモテモテになれんのか!?」
「え、なら国交再開後、他の奴らが人化する前に、うちの若い奴ら人化させて交流させれば、婚活がめちゃくちゃ有利になるんじゃねぇの!?」
「対人間だと、生まれるのは絶対ワニ獣人にはなるが、子が生まれやすくて魔力が高い雌が釣れるかもしれないなら、良い話だよなあ!」
「ちょ、皆さん、落ち着いてください。私は、お祭りの時に爬虫類系獣人の方の人化した姿は見てないので、何とも……」
「じゃあ、今見てよ! ほら!」
一瞬にしてポンダーが、ワニの尻尾が生えた、エキゾチックな雰囲気の美青年に変わった。
体型も身長も獣面状態と同じ感じなのに、人化するとしなやかな体に均整の取れた筋肉がついているのが際立って、妙に色気を感じる。
ただ、問題は。
「ああ、肌の色はそのままなんですね。あと、目もワニのまま、瞳孔が縦長で」
「え? 駄目? 俺、ブサイク!?」
「いえ、十分美形ですよ。ただ、好みが分かれる感じではあります。好きな人はすごく好きでしょうけど」
緑褐色の肌も、猫のような縦長の瞳孔も、好きな人は好きだろうが、けして万人受けはしないだろう。ブーリ魚醤と同じだ。
哺乳類系獣人の場合、肌の色は人間に近いようだったから、爬虫類系獣人を醜いと言う人間がいたのもわからなくもない。
「じゃあ、エド様は俺は?」
「俺も俺もー」
「……アンゼは、イケメンと言うより、美少年ですね。タンクは普通にかっこいいです」
アンゼは、茶色と黒のまだら髪に、丸いお耳がついた、黒目がちの美ショタ。
タンクは灰褐色の髪に灰色の小さい耳がついた、涼しげな目の美マッチョだった。
アンゼはともかく、タンクは言われなければカバだなんてわからない。人間からするとちょっと間抜けに見える顔も、水生哺乳類特有の体脂肪率も、人化には反映されないようだ。
まあ、獣面状態でも、普通にマッチョ体型だったしな。獣化して地ならししてる時は、お腹ポヨンポヨンしてたが。……この辺の原理は、どうなってんだろ。人化獣人を総イケメンにしたい腐女子の夢が反映された結果だから、恐らくあまり突っ込んではいけないんだろう。
「ええ、タンクばっかずりぃ! 俺もかっこいいって言われたい!」
「……そうか。タンクの人化は、人間からすればイケメンなんだ……何としてでも、交易が開始する前に口説き落とさないと……」
約一名が闇落ちしかけている中、何故か俺も俺もと他の村人達まで人化しだしたので、肌の色が違うエキゾチック美中年が次々に爆誕していった。
結局洪水対策お疲れ様宴会は、参加者総人化の面白飲み会へと変わり、建国祭の時のように仮装パーティー的な感じで盛りに盛り上がった結果、それ以上アストルディアについての情報を引き出すことはできなかったのだった。
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