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ワニの村④
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「恩売りって、兄ちゃん。もうちょい良い言い方あんだろ……」
「下手に誤魔化すより、はっきり目的を伝えた方が、獣人の方は私のこと信用してくれるでしょう? 別に無理に恩を返させたいってわけでもないんですよ。ただ、これが交易をはじめる際の、良いきっかけになればいいなって思ってるだけで」
恩返しを強要したところで、獣人と人間の関係が改善するとは思わない。欲しいのは、「以前良くしてもらったし、せっかくだから少しくらいなら便宜をはかっていいかな」と思うくらいの、それくらいの好意でいい。
少しの好意、少しの交易、少しの交流……それを積み重ねた先に、共存の道はあると俺は思っている。
「獣人でも、良い人もいれば悪い人もいるでしょう? 人間だって同じです。先入観なしで、信用して良い相手かどうか見極めてください。今回のことが、そのきっかけになればいいなと、私は思ってます」
「……兄ちゃんは、本当気持ちいい男だなあ。そこまではっきり腹を割ってもらえたら、こっちも応えなきゃって気になるじゃねぇか。なあ、あんた、俺の息子の嫁に来ねぇか? まだ八歳だけどよ」
「はは、今、自分を誰にどう高く売りつけるか考えている最中なんで、十年後に独身で息子さんが乗り気だった時に、またお話ください」
「……だからおじさん、うちの村に嫁ぐのは絶対ヴィダルス様が許さないってば」
「え? ってことはエド様がセネーバに嫁いでくる可能性もあるってことか?」
「エド様がセネーバ国民になってくれるなら、歓迎するけど。エド様、獣人もいけるの?」
さてさて。興味津々なアンゼとタンクに、何て答えてやるべきか。
「……それが、リシス王国とセネーバとの戦争を止めるきっかけになるなら。私は、いつでもセネーバに嫁ぎますよ」
まあ、これくらいは良いだろうと思って口にした言葉に、ヒューッと酔っぱらい共が色めきだった。
「よし、タンク! エド様口説いて、嫁にしろ! そしたら卒業後も美味い飯食わせてもらえる!」
「ええ~……俺には荷が重いよ。ヴィダルス様怖いし。アンゼがプロポーズすればいいじゃない」
「俺は、ヴィダルス様よりエド様が怖いから無理!」
「……誰が怖いですって?」
「びゃっ!」
肩に手を回して低い声で囁いてやると、アンゼは黒◯げ危機一髪のように飛び上がって震えだした。
タンクによけいなこと言うからだ。一瞬ポンダーの目、すげえ怖かったんだからな。
「……まあ、戦争回避の為に一番いい嫁ぎ先は、アストルディア第二王子ですかねぇ。どうも魔力相性は良いみたいなんですよ。本人はクリスを狙っているようですけど、うちの王太子嫁がせるわけにはいかないですし、私で妥協してくれませんかね」
既に番なことはお首に出さず、あくまで一方的な片思いという体で、アストルディアを話題に出す。せっかくなのでワニ獣人のアストルディアの評価も知りたい。
「いやいやいや~! エド様、それ無理! 狼獣人の執着甘く見すぎ」
「狼獣人は、執着がえげつないんだよ。番じゃなくても、一度番にしようと思った時点で、もうその相手しか見えなくなるというか……」
「とゆうか、同じ理由で、既にヴィダルス様にタゲロックされてる時点でエド様もう逃げられないっしょ。セネーバに嫁ぐんなら、大人しくヴィダルス様に嫁いだ方がいーよ。下手したら番になった相手、殺されちゃう」
「「それもそうだ(な/ね)」」
いや、ヴィダルスの話はいいから。アストルディアの話してくれ。
「……でも、ぶっちゃけ、アストルディア殿下がクリス王子狙ってるって嘘くさくね」
「わかる。狼獣人特有の、番に対する熱情みたいなの感じないよね。昼休みしか会いに行っていないみたいだし」
「エド様に近づくなってうるさいヴィダルス様を、大人しくさせるための方便なんじゃって疑っちゃう~。アストルディア王子、恋とか似合わないしー」
……おい。アンポンタンにすら、演技疑われてるぞ。アストルディア。大丈夫なのか。
「下手に誤魔化すより、はっきり目的を伝えた方が、獣人の方は私のこと信用してくれるでしょう? 別に無理に恩を返させたいってわけでもないんですよ。ただ、これが交易をはじめる際の、良いきっかけになればいいなって思ってるだけで」
恩返しを強要したところで、獣人と人間の関係が改善するとは思わない。欲しいのは、「以前良くしてもらったし、せっかくだから少しくらいなら便宜をはかっていいかな」と思うくらいの、それくらいの好意でいい。
少しの好意、少しの交易、少しの交流……それを積み重ねた先に、共存の道はあると俺は思っている。
「獣人でも、良い人もいれば悪い人もいるでしょう? 人間だって同じです。先入観なしで、信用して良い相手かどうか見極めてください。今回のことが、そのきっかけになればいいなと、私は思ってます」
「……兄ちゃんは、本当気持ちいい男だなあ。そこまではっきり腹を割ってもらえたら、こっちも応えなきゃって気になるじゃねぇか。なあ、あんた、俺の息子の嫁に来ねぇか? まだ八歳だけどよ」
「はは、今、自分を誰にどう高く売りつけるか考えている最中なんで、十年後に独身で息子さんが乗り気だった時に、またお話ください」
「……だからおじさん、うちの村に嫁ぐのは絶対ヴィダルス様が許さないってば」
「え? ってことはエド様がセネーバに嫁いでくる可能性もあるってことか?」
「エド様がセネーバ国民になってくれるなら、歓迎するけど。エド様、獣人もいけるの?」
さてさて。興味津々なアンゼとタンクに、何て答えてやるべきか。
「……それが、リシス王国とセネーバとの戦争を止めるきっかけになるなら。私は、いつでもセネーバに嫁ぎますよ」
まあ、これくらいは良いだろうと思って口にした言葉に、ヒューッと酔っぱらい共が色めきだった。
「よし、タンク! エド様口説いて、嫁にしろ! そしたら卒業後も美味い飯食わせてもらえる!」
「ええ~……俺には荷が重いよ。ヴィダルス様怖いし。アンゼがプロポーズすればいいじゃない」
「俺は、ヴィダルス様よりエド様が怖いから無理!」
「……誰が怖いですって?」
「びゃっ!」
肩に手を回して低い声で囁いてやると、アンゼは黒◯げ危機一髪のように飛び上がって震えだした。
タンクによけいなこと言うからだ。一瞬ポンダーの目、すげえ怖かったんだからな。
「……まあ、戦争回避の為に一番いい嫁ぎ先は、アストルディア第二王子ですかねぇ。どうも魔力相性は良いみたいなんですよ。本人はクリスを狙っているようですけど、うちの王太子嫁がせるわけにはいかないですし、私で妥協してくれませんかね」
既に番なことはお首に出さず、あくまで一方的な片思いという体で、アストルディアを話題に出す。せっかくなのでワニ獣人のアストルディアの評価も知りたい。
「いやいやいや~! エド様、それ無理! 狼獣人の執着甘く見すぎ」
「狼獣人は、執着がえげつないんだよ。番じゃなくても、一度番にしようと思った時点で、もうその相手しか見えなくなるというか……」
「とゆうか、同じ理由で、既にヴィダルス様にタゲロックされてる時点でエド様もう逃げられないっしょ。セネーバに嫁ぐんなら、大人しくヴィダルス様に嫁いだ方がいーよ。下手したら番になった相手、殺されちゃう」
「「それもそうだ(な/ね)」」
いや、ヴィダルスの話はいいから。アストルディアの話してくれ。
「……でも、ぶっちゃけ、アストルディア殿下がクリス王子狙ってるって嘘くさくね」
「わかる。狼獣人特有の、番に対する熱情みたいなの感じないよね。昼休みしか会いに行っていないみたいだし」
「エド様に近づくなってうるさいヴィダルス様を、大人しくさせるための方便なんじゃって疑っちゃう~。アストルディア王子、恋とか似合わないしー」
……おい。アンポンタンにすら、演技疑われてるぞ。アストルディア。大丈夫なのか。
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