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ワニの村③
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「お、兄ちゃん、イケる口だね! ほらほら、もっともっと飲んだ飲んだ」
「俺らだけだったら、洪水対策なんてまずやらなかっただろうから、兄ちゃんには本当感謝してんだよ。おかげで、水に流された財産の持ち主は誰かで、喧嘩しなくて済む」
「去年なんかひどかったもんなー。俺の秘蔵の酒も食い物も、根こそぎかっぱらいやがって……」
「いや、あれは間違いなく俺の家から流れたもんだった!」
「まだいうか!」
……いや、そこで真っ先に出る財産が、金や宝石じゃなく、酒と食い物ってどういうことなんだよ。
つくづくワニ獣人って独自の価値観で生きてるなー。さすがポンダーの一族。
内心苦笑いをしながら、注がれたどぶろくのような酒をあおる。リシス王国基準では成人してるので、酒も余裕で合法だ。洗練されてない粗野な味の酒だが、これはこれで美味しい。
「……これは、魚醤を使ったブーリ魚の刺身サラダが合いそうですね」
「な、なんだ、兄ちゃん、その魚!? どっからだした!?」
「以前作った料理を魔法で収納してたんですよ。塩漬けして発酵させた魚のタレを使ってるので、癖は強いんですが酒には合います」
ちなみに魚醤も、ブーリ魚から俺が指示を出して作らせました。辺境伯領では、好きな人はすごく好きだけど、駄目な人はとことん駄目な賛否両論だった調味料。
ブーリ魚の刺身と、生で食べれるカットした様々な野菜を、柑橘類の絞り汁とブーリ魚醤、砂糖、細かく砕いたナッツ類、ニンニクっぽいの&玉ねぎっぽいの揚げたもの、輪切りの唐辛子っぽいので和えた、エスニック風サラダです。ここ地球じゃないから、エスニックも何もねぇけど。
「というわけで、毒見としてポンダー。あ~ん」
「わぁい! エド様の料理大好き! ……うん、うん。ちょっと癖があるけど、酸っぱ辛うま~。お魚すごく美味しいし、お酒にも合う~」
「……と、まあ。ワニ獣人のポンダーの舌にも合うようなので、良かったら皆さんもどうぞ」
「はい、はーい! エド様! 俺も食べるー!」
「野菜たっぷりだし、俺も食べたいなー」
「はいはい。もちろん、アンゼとタンクもどうぞ」
「「よっしゃあ!/やったあ!」」
パクパク食べだすアンポンタンにつられるように、他のワニ獣人のおじさん達も、フォークを伸ばしだす。
アストルディア的には嫌いじゃないけど、そこまで感動するものでもない様子だったエスニック風味付けだけど、どうやらワニ獣人には局地的にヒットしたようで、みんな酒に合う合うと喜んで食べてくれている。
……ふふふ、単に俺が食べたくなったから出したツマミだったが、意図せず集落のおっさん達の餌付けにも成功。てか、これ、俺がツマミにする分残ってる? 全部食われてない?
「……いやあ、兄ちゃんは、魔法はすげえし、料理は美味いし、本当いい奴だなあ! 俺、ちょっと感動しちまったよ!」
かろうじて確保できたサラダをちびちびツマミにしてると、酔っぱらったポンダーのはとこの父親……どうもワニ獣人の村の村長らしい……が、上機嫌で絡んできた。
「いやね。人間の奴隷だった俺のじいさんから、ワニ獣人をはじめとした爬虫類獣人は醜いって人間に嫌われて、特にひどい目に遭ってたって聞いてたからよお。正直ポンダーが人間の友達連れてくるって聞いた時は、警戒してたんだわ。この半世紀で、人間もずいぶん変わったんだなあ」
「いや、それはそうとは限りませんよ。俺の周りでも、獣人を忌避する人間は多かったですし。ワニ獣人も他の獣人も種族関係なく、獣人ってだけでひどい対応をする人間も多いとは思います」
せっかく見直してもらったのを水にさすようで悪いのだが、俺だけを見て人間を一元化されても困るのだ。
下手に人間に対して期待されると、失望された時の反動が怖い。そして俺やクリス以上に獣人に友好的な人間が思いつかない現状では、将来的に失望される可能性が非常に高いのだ。
「でも、俺はそんな人間の獣人に対する意識を、今後変えていきたいと思っているんですよ。そしていずれは、人間も獣人も対等な立場で共存できる社会を作りたい。その第一歩が、今回の恩売りなんです」
「俺らだけだったら、洪水対策なんてまずやらなかっただろうから、兄ちゃんには本当感謝してんだよ。おかげで、水に流された財産の持ち主は誰かで、喧嘩しなくて済む」
「去年なんかひどかったもんなー。俺の秘蔵の酒も食い物も、根こそぎかっぱらいやがって……」
「いや、あれは間違いなく俺の家から流れたもんだった!」
「まだいうか!」
……いや、そこで真っ先に出る財産が、金や宝石じゃなく、酒と食い物ってどういうことなんだよ。
つくづくワニ獣人って独自の価値観で生きてるなー。さすがポンダーの一族。
内心苦笑いをしながら、注がれたどぶろくのような酒をあおる。リシス王国基準では成人してるので、酒も余裕で合法だ。洗練されてない粗野な味の酒だが、これはこれで美味しい。
「……これは、魚醤を使ったブーリ魚の刺身サラダが合いそうですね」
「な、なんだ、兄ちゃん、その魚!? どっからだした!?」
「以前作った料理を魔法で収納してたんですよ。塩漬けして発酵させた魚のタレを使ってるので、癖は強いんですが酒には合います」
ちなみに魚醤も、ブーリ魚から俺が指示を出して作らせました。辺境伯領では、好きな人はすごく好きだけど、駄目な人はとことん駄目な賛否両論だった調味料。
ブーリ魚の刺身と、生で食べれるカットした様々な野菜を、柑橘類の絞り汁とブーリ魚醤、砂糖、細かく砕いたナッツ類、ニンニクっぽいの&玉ねぎっぽいの揚げたもの、輪切りの唐辛子っぽいので和えた、エスニック風サラダです。ここ地球じゃないから、エスニックも何もねぇけど。
「というわけで、毒見としてポンダー。あ~ん」
「わぁい! エド様の料理大好き! ……うん、うん。ちょっと癖があるけど、酸っぱ辛うま~。お魚すごく美味しいし、お酒にも合う~」
「……と、まあ。ワニ獣人のポンダーの舌にも合うようなので、良かったら皆さんもどうぞ」
「はい、はーい! エド様! 俺も食べるー!」
「野菜たっぷりだし、俺も食べたいなー」
「はいはい。もちろん、アンゼとタンクもどうぞ」
「「よっしゃあ!/やったあ!」」
パクパク食べだすアンポンタンにつられるように、他のワニ獣人のおじさん達も、フォークを伸ばしだす。
アストルディア的には嫌いじゃないけど、そこまで感動するものでもない様子だったエスニック風味付けだけど、どうやらワニ獣人には局地的にヒットしたようで、みんな酒に合う合うと喜んで食べてくれている。
……ふふふ、単に俺が食べたくなったから出したツマミだったが、意図せず集落のおっさん達の餌付けにも成功。てか、これ、俺がツマミにする分残ってる? 全部食われてない?
「……いやあ、兄ちゃんは、魔法はすげえし、料理は美味いし、本当いい奴だなあ! 俺、ちょっと感動しちまったよ!」
かろうじて確保できたサラダをちびちびツマミにしてると、酔っぱらったポンダーのはとこの父親……どうもワニ獣人の村の村長らしい……が、上機嫌で絡んできた。
「いやね。人間の奴隷だった俺のじいさんから、ワニ獣人をはじめとした爬虫類獣人は醜いって人間に嫌われて、特にひどい目に遭ってたって聞いてたからよお。正直ポンダーが人間の友達連れてくるって聞いた時は、警戒してたんだわ。この半世紀で、人間もずいぶん変わったんだなあ」
「いや、それはそうとは限りませんよ。俺の周りでも、獣人を忌避する人間は多かったですし。ワニ獣人も他の獣人も種族関係なく、獣人ってだけでひどい対応をする人間も多いとは思います」
せっかく見直してもらったのを水にさすようで悪いのだが、俺だけを見て人間を一元化されても困るのだ。
下手に人間に対して期待されると、失望された時の反動が怖い。そして俺やクリス以上に獣人に友好的な人間が思いつかない現状では、将来的に失望される可能性が非常に高いのだ。
「でも、俺はそんな人間の獣人に対する意識を、今後変えていきたいと思っているんですよ。そしていずれは、人間も獣人も対等な立場で共存できる社会を作りたい。その第一歩が、今回の恩売りなんです」
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