139 / 311
ワニの村②
しおりを挟む
いや、何でそこで引き合いに出されるのが、ヴィダルスなんだ。俺の番はアストルディアだぞ。ヴィダルスより、ずっと強いんだ。しかも王子様なんだぞ!
……とはもちろん言えないので、とりあえず「……私は応える気はないですけどね」と苦笑いをして、お茶を濁す。
くそ、俺の番はアストルディアだって、めちゃくちゃ表明したいー! ついでにアンポンタンの前で敬語キャラ貫くの最近アホらしくなって来たから、アストルディアの前と同じようにめちゃくちゃ素で接したーい!
……アホで単純だけど、ほんとかわいい奴らなんだよ。こっちが取り繕ってんのが、申し訳なくなるくらいに。でもアホだから、俺が素のままで接したりアストルディアの番だってことバラしたら、悪気なくペロッと他の奴らに言っちゃいそうなんだよ。あくまでもうっかり。言えん、言えん。
「……それにさあ、俺、今嫁さんにしたいって思ってる子、別にいるし」
ポッと頬を赤らめて、乙女のように両手で顔を押さえる二足歩行ワニ(とてもシュール)の、瞳孔が縦に長い瞳の先にいるのは……楽しげに笑いながら、ドスドスと地面を豪快に踏み固める四足歩行のカバ(めちゃくちゃシュール)の姿が。……へ?
「……いやあ、さり気に魔力相性いいんじゃね、とは前から思ってたし、性格もすげえ合うなあって思ってたんだよね。でも、絶対向こうも雌側なる気なさそうだし、爬虫類は嫌かなって思って諦めてたんだけど……童貞喪失した後ならエッチしてもいいとか、これ完全に脈あるよね。俺の嫁になってもいいってことだよね」
……いや、それタンクも、ポンダーが雌側の前提で話してね? と、思ったけど、言えない。
めちゃくちゃ軽くセックス予約してるなあと思ってたのに、思った以上に本気だった恋するワニに、今まで全く気づいてなかった俺が何て言えよう。てか、俺、マジで男同士の恋愛センサーポンコツだな。
「カバの嫁さんか! 住居環境似てるし、魔力も力も強いし、最高だな! 絶対物にしろよ、ポンダー」
「うふふ~、でしょでしょ! とりあえず、タンクは王宮兵団入りたいみたいだから、タンクが産んだ子どもを俺が村で育てるのもいーかなーなんて思って。ほら、新兵は基本長期休みの時以外は、兵団の寮で生活しないといけないっしょ? 子育てでキャリア断絶とかかわいそうだし、この村だって高齢化深刻だし。俺が村で仕事しながら子ども育てて、休日に戻ってきた奥さん孝行すれば最高かなあって思ってたりするんだよね。タンクは三男だし、去年長男が嫁さん迎えたみたいで、卒業後実家に戻る選択肢はないって言ってたし」
「そこまで将来について、深く考えてるなんて……ポンダー、お前大人になったなあ」
いや、付き合ってすらいないのに、深く将来について考え過ぎだろ。そして、そこまで考えているのに、ポンダーが子どもを産むという選択肢はないのな。
「いけー! タンク号! 蹂躙するのじゃー!」
「ははあ! アンゼ様ノオオセノママニー……なあんちゃって」
補強のチェックに飽きたらしいアンゼを背中に乗せて、ガキ丸出しでぎゃはぎゃは笑いながら地ならしをしているタンクを見ながら、合掌する。……何となくだが、もうタンクは逃げられない気がする。
アンポンタンの中で一番魔力が高く実力もあるのはタンクだが、一番コミュ力が高くて口がうまいのはポンダーだ。けして頭がいいわけでも腹黒というわけでもないんだが、何だかんだで話しているうちに周りがタンクの望み通りに動いてしまいがちだったりする。俺が今ここで汗水垂らして働いているのが、その証拠だ。
ポンダーが本気で口説いたら、タンクは絶対丸めこまれる。これはもう、予想ではなく、確信だ。
……え? アンゼは何が一番かって? えーと、その、まあ……一番かわいいんじゃないか。うん。一応三人のうちではリーダー的な存在だし。
……とはもちろん言えないので、とりあえず「……私は応える気はないですけどね」と苦笑いをして、お茶を濁す。
くそ、俺の番はアストルディアだって、めちゃくちゃ表明したいー! ついでにアンポンタンの前で敬語キャラ貫くの最近アホらしくなって来たから、アストルディアの前と同じようにめちゃくちゃ素で接したーい!
……アホで単純だけど、ほんとかわいい奴らなんだよ。こっちが取り繕ってんのが、申し訳なくなるくらいに。でもアホだから、俺が素のままで接したりアストルディアの番だってことバラしたら、悪気なくペロッと他の奴らに言っちゃいそうなんだよ。あくまでもうっかり。言えん、言えん。
「……それにさあ、俺、今嫁さんにしたいって思ってる子、別にいるし」
ポッと頬を赤らめて、乙女のように両手で顔を押さえる二足歩行ワニ(とてもシュール)の、瞳孔が縦に長い瞳の先にいるのは……楽しげに笑いながら、ドスドスと地面を豪快に踏み固める四足歩行のカバ(めちゃくちゃシュール)の姿が。……へ?
「……いやあ、さり気に魔力相性いいんじゃね、とは前から思ってたし、性格もすげえ合うなあって思ってたんだよね。でも、絶対向こうも雌側なる気なさそうだし、爬虫類は嫌かなって思って諦めてたんだけど……童貞喪失した後ならエッチしてもいいとか、これ完全に脈あるよね。俺の嫁になってもいいってことだよね」
……いや、それタンクも、ポンダーが雌側の前提で話してね? と、思ったけど、言えない。
めちゃくちゃ軽くセックス予約してるなあと思ってたのに、思った以上に本気だった恋するワニに、今まで全く気づいてなかった俺が何て言えよう。てか、俺、マジで男同士の恋愛センサーポンコツだな。
「カバの嫁さんか! 住居環境似てるし、魔力も力も強いし、最高だな! 絶対物にしろよ、ポンダー」
「うふふ~、でしょでしょ! とりあえず、タンクは王宮兵団入りたいみたいだから、タンクが産んだ子どもを俺が村で育てるのもいーかなーなんて思って。ほら、新兵は基本長期休みの時以外は、兵団の寮で生活しないといけないっしょ? 子育てでキャリア断絶とかかわいそうだし、この村だって高齢化深刻だし。俺が村で仕事しながら子ども育てて、休日に戻ってきた奥さん孝行すれば最高かなあって思ってたりするんだよね。タンクは三男だし、去年長男が嫁さん迎えたみたいで、卒業後実家に戻る選択肢はないって言ってたし」
「そこまで将来について、深く考えてるなんて……ポンダー、お前大人になったなあ」
いや、付き合ってすらいないのに、深く将来について考え過ぎだろ。そして、そこまで考えているのに、ポンダーが子どもを産むという選択肢はないのな。
「いけー! タンク号! 蹂躙するのじゃー!」
「ははあ! アンゼ様ノオオセノママニー……なあんちゃって」
補強のチェックに飽きたらしいアンゼを背中に乗せて、ガキ丸出しでぎゃはぎゃは笑いながら地ならしをしているタンクを見ながら、合掌する。……何となくだが、もうタンクは逃げられない気がする。
アンポンタンの中で一番魔力が高く実力もあるのはタンクだが、一番コミュ力が高くて口がうまいのはポンダーだ。けして頭がいいわけでも腹黒というわけでもないんだが、何だかんだで話しているうちに周りがタンクの望み通りに動いてしまいがちだったりする。俺が今ここで汗水垂らして働いているのが、その証拠だ。
ポンダーが本気で口説いたら、タンクは絶対丸めこまれる。これはもう、予想ではなく、確信だ。
……え? アンゼは何が一番かって? えーと、その、まあ……一番かわいいんじゃないか。うん。一応三人のうちではリーダー的な存在だし。
580
お気に入りに追加
2,079
あなたにおすすめの小説
新しい道を歩み始めた貴方へ
mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。
そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。
その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。
あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。
あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
嫌われ者の長男
りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....
変態村♂〜俺、やられます!〜
ゆきみまんじゅう
BL
地図から消えた村。
そこに肝試しに行った翔馬たち男3人。
暗闇から聞こえる不気味な足音、遠くから聞こえる笑い声。
必死に逃げる翔馬たちを救った村人に案内され、ある村へたどり着く。
その村は男しかおらず、翔馬たちが異変に気づく頃には、すでに囚われの身になってしまう。
果たして翔馬たちは、抱かれてしまう前に、村から脱出できるのだろうか?
【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます
夏ノ宮萄玄
BL
オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。
――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。
懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。
義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。
心からの愛してる
マツユキ
BL
転入生が来た事により一人になってしまった結良。仕事に追われる日々が続く中、ついに体力の限界で倒れてしまう。過労がたたり数日入院している間にリコールされてしまい、あろうことか仕事をしていなかったのは結良だと噂で学園中に広まってしまっていた。
全寮制男子校
嫌われから固定で溺愛目指して頑張ります
※話の内容は全てフィクションになります。現実世界ではありえない設定等ありますのでご了承ください
【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます
猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」
「いや、するわけないだろ!」
相川優也(25)
主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。
碧スバル(21)
指名ナンバーワンの美形ホスト。博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。
「僕の方がぜってー綺麗なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ」
「スバル、お前なにいってんの……?」
冗談? 本気? 二人の結末は?
美形病みホスと平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる