131 / 311
まだ存在しない君へ
しおりを挟む
何故か黙り込んだアストルディアに視線を向けると、三角お耳がペタンと伏せっていた。
「どうした? アスティ」
「……お前が、たくさんの獣人と交流することで、獣人のことを知ろうとしてくれることは、嬉しい。だが……」
「だが?」
「……少し、妬いてしまう」
相変わらず無表情なのに、そんなことを言ってしょげてるのがおかしくて、思わず噴き出してしまった。
「……本当、お前はかわいいな! アスティ」
本当に、どんな姿でも、アストルディアはとてもかわいい。
「安心しろよ。アスティ。……誰と親しくなろうと、お前は俺にとって特別な存在であることは変わりないからさ」
たとえどれだけ親しい相手ができても、アストルディア以上に特別な存在になることはないと断言できる。
だってアストルディアは、たった一人の俺の親友で、俺の番なのだから。
「お前のことが、大好きだよ。アスティ」
笑顔で告げた好意に、アストルディアは何故か傷ついたような目をした。
「……『最愛の弟の、次に』か」
「え?」
「いや、何でもない。俺も、お前のことを大好きだよ。エディ」
小さく呟かれたアストルディアの言葉は、俺の耳には届かなかったけど、いつもと同じ表情のはずのアストルディアが何故か涙をこらえているように思えて。
思わず食事を中断して席を立ち、その体を抱き締めていた。
「っエディ……」
「……本当に、本当に、俺はお前が好きだよ。アスティ。頼むから、俺の気持ちを疑わないでくれ」
俺は確かに、アストルディアが好きだ。
それは幼い頃からただ一人弱音を受け止め続けてくれた親友に対する好きなのか、一緒に運命を抗ってくれる戦友としての好きなのか、狼獣人であるアストルディアにとって特別な存在である「番」としての好きなのか。俺自身にも、よくわからない。
わからないけど……俺はもう、アストルディアを手放せない。たとえ未来に行き着く先が地獄だったとしても、道連れにしてしまうくらいに、依存してしまっている。
ーーアストルディアの本当の運命の相手は、俺でないことなんて知っているのに。
「エディ……俺は……」
「……なあ。アスティ。飯が終わったら、今日もシないか?」
今の自分のポジションが、本当ならば生まれることすらできないであろう息子のものだとわかってなお、浅ましい俺はアストルディアを誘惑する。
「最低週一だって言ってたけど……別に増えても悪いもんじゃないだろ」
ただただ、アストルディアを俺に縛り付けたくて。
どれだけ抗ったとしても、強制的にやって来るかもしれない未来よりも、俺を選んで欲しくて。
まだ夕食が終わってないのにも関わらず、俺はアストルディアの唇に口づけた。
「っエディ……!」
「……もう、ベッド行くか。アスティ。ヤった後に、また腹減ったら、残りを食べればいい」
……ごめん、ごめんな。
ネルドゥース領の民の為ならなんて言い訳してたけど……本当は俺自身の為なんだ。
アストルディアと一緒に、未来を変えたくて。
獣人と人間が対立する世界を変えて、アストルディアと一緒に幸せになることができる未来が欲しくて。
俺は、本来の小説の主人公であるお前を、生まれる前から消滅させる。
消滅させたうえで、ちゃっかりお前のポジションまで奪うんだ。本来の運命では、散々虐待を加えているうえでのその仕打ち。最低な親だよな。お前は俺を、恨んでいいよ。お前は、その権利がある。
「……おいで。アスティ」
ーーそれでも俺は、アストルディアが欲しいんだ。
「……エディ……エディ……俺の、番……」
「……そうだよ。アスティ。俺はお前の番だ」
初めての時のように理性をなくした獣のように俺を求めるアストルディアの背中に、手を回す。
「…………俺だけが、お前の番だよ」
流れた涙は、快感による生理的なものだったろうか。
「どうした? アスティ」
「……お前が、たくさんの獣人と交流することで、獣人のことを知ろうとしてくれることは、嬉しい。だが……」
「だが?」
「……少し、妬いてしまう」
相変わらず無表情なのに、そんなことを言ってしょげてるのがおかしくて、思わず噴き出してしまった。
「……本当、お前はかわいいな! アスティ」
本当に、どんな姿でも、アストルディアはとてもかわいい。
「安心しろよ。アスティ。……誰と親しくなろうと、お前は俺にとって特別な存在であることは変わりないからさ」
たとえどれだけ親しい相手ができても、アストルディア以上に特別な存在になることはないと断言できる。
だってアストルディアは、たった一人の俺の親友で、俺の番なのだから。
「お前のことが、大好きだよ。アスティ」
笑顔で告げた好意に、アストルディアは何故か傷ついたような目をした。
「……『最愛の弟の、次に』か」
「え?」
「いや、何でもない。俺も、お前のことを大好きだよ。エディ」
小さく呟かれたアストルディアの言葉は、俺の耳には届かなかったけど、いつもと同じ表情のはずのアストルディアが何故か涙をこらえているように思えて。
思わず食事を中断して席を立ち、その体を抱き締めていた。
「っエディ……」
「……本当に、本当に、俺はお前が好きだよ。アスティ。頼むから、俺の気持ちを疑わないでくれ」
俺は確かに、アストルディアが好きだ。
それは幼い頃からただ一人弱音を受け止め続けてくれた親友に対する好きなのか、一緒に運命を抗ってくれる戦友としての好きなのか、狼獣人であるアストルディアにとって特別な存在である「番」としての好きなのか。俺自身にも、よくわからない。
わからないけど……俺はもう、アストルディアを手放せない。たとえ未来に行き着く先が地獄だったとしても、道連れにしてしまうくらいに、依存してしまっている。
ーーアストルディアの本当の運命の相手は、俺でないことなんて知っているのに。
「エディ……俺は……」
「……なあ。アスティ。飯が終わったら、今日もシないか?」
今の自分のポジションが、本当ならば生まれることすらできないであろう息子のものだとわかってなお、浅ましい俺はアストルディアを誘惑する。
「最低週一だって言ってたけど……別に増えても悪いもんじゃないだろ」
ただただ、アストルディアを俺に縛り付けたくて。
どれだけ抗ったとしても、強制的にやって来るかもしれない未来よりも、俺を選んで欲しくて。
まだ夕食が終わってないのにも関わらず、俺はアストルディアの唇に口づけた。
「っエディ……!」
「……もう、ベッド行くか。アスティ。ヤった後に、また腹減ったら、残りを食べればいい」
……ごめん、ごめんな。
ネルドゥース領の民の為ならなんて言い訳してたけど……本当は俺自身の為なんだ。
アストルディアと一緒に、未来を変えたくて。
獣人と人間が対立する世界を変えて、アストルディアと一緒に幸せになることができる未来が欲しくて。
俺は、本来の小説の主人公であるお前を、生まれる前から消滅させる。
消滅させたうえで、ちゃっかりお前のポジションまで奪うんだ。本来の運命では、散々虐待を加えているうえでのその仕打ち。最低な親だよな。お前は俺を、恨んでいいよ。お前は、その権利がある。
「……おいで。アスティ」
ーーそれでも俺は、アストルディアが欲しいんだ。
「……エディ……エディ……俺の、番……」
「……そうだよ。アスティ。俺はお前の番だ」
初めての時のように理性をなくした獣のように俺を求めるアストルディアの背中に、手を回す。
「…………俺だけが、お前の番だよ」
流れた涙は、快感による生理的なものだったろうか。
822
お気に入りに追加
2,154
あなたにおすすめの小説
男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~
さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。
そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。
姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。
だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。
その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。
女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。
もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。
周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか?
侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?
【完結】第三王子は、自由に踊りたい。〜豹の獣人と、第一王子に言い寄られてますが、僕は一体どうすればいいでしょうか?〜
N2O
BL
気弱で不憫属性の第三王子が、二人の男から寵愛を受けるはなし。
表紙絵
⇨元素 様 X(@10loveeeyy)
※独自設定、ご都合主義です。
※ハーレム要素を予定しています。

僕だけの番
五珠 izumi
BL
人族、魔人族、獣人族が住む世界。
その中の獣人族にだけ存在する番。
でも、番には滅多に出会うことはないと言われていた。
僕は鳥の獣人で、いつの日か番に出会うことを夢見ていた。だから、これまで誰も好きにならず恋もしてこなかった。
それほどまでに求めていた番に、バイト中めぐり逢えたんだけれど。
出会った番は同性で『番』を認知できない人族だった。
そのうえ、彼には恋人もいて……。
後半、少し百合要素も含みます。苦手な方はお気をつけ下さい。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い

番から逃げる事にしました
みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。
前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。
彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。
❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。
❋独自設定有りです。
❋他視点の話もあります。
❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
*
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました
楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。
ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。
喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。
「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」
契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。
エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる