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獣人コンプレックス
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「それじゃあ皆さんは、小型草食獣人の方でも性的対象になるんですね」
「なるは、なるよ。……でも、結婚はできないかな」
「親族の奴らが、強い子作れ作れうるさいからねー」
「……俺は、親から大型肉食獣人以外認めないって言われてるわ。大型なら、俺より弱くてもいいとか言うんだぜ? 信じられるか? 下剋上上等なクズリのプライドどこ行ったって話だよな」
「イタチ科の種族って、結構種族コンプ抱きがちだよね。やっぱりおならが臭いから?」
「屁のことは放っとけ!」
……なるほど。個人の嗜好よりも、社会的な圧力の方が強そうだな。
「獣人は強い相手じゃないと食指が動かないと思ってたので、意外でした」
「強い相手に抱かれたい奴もいれば、番に強いと思われたい奴もいるってだけの話だよ」
「ほら、アンゼとかさー、ちっちゃくてかわいいから。実力はあるのに、強く見えないっしょ?」
「けれど、小型草食獣人なら、否応なく強者として扱ってくれるからね」
「……おい、お前ら。勝手に俺の心理を見透かすな。そんなに俺はわかりやすいか?」
「「わかりやすい」」
親友二人に弄られて凹むアンゼを生温く見守っていると、タンクが深々とため息を吐いた。
「てかさあ、一応草食獣人の括りに入れられてる俺的には、その『小型草食獣人』って呼び方自体納得できないんだよね」
「……それはどういう意味ですか?」
「だってさ、どいつもこいつも『小型草食獣人』を弱い奴の総称みたいに言うのに、そん中には鼠とかも含まれてんのよ? 完全に雑食かつわりとグルメになった獣人ではあまりいないけど、種族元の動物は昆虫食メインの奴とかも、何故か草食扱いで同じ括りに入れられるわけ。『草食獣人』って何よって、話だよね。俺、そこらの肉食獣人に負けない自信あるのに、『草食獣人』ってだけでワンランク下みたいな扱いされるの、マジ心外」
「でもまだ哺乳類なだけマシじゃないー? 哺乳類系獣人の爬虫類獣人差別、結構えげつないよー。俺みたいに魔力が高くて怖がられてる種族ならいいけど、リザードマン系は毒持ちじゃない限り、見下されてひでぇ扱いされるらしいし」
「結局さー。王族や上級貴族にいるような一部の種族以外は、みんな多かれ少なかれ劣等感があるんだよなー。だから、自分が下に見れると思った種族はとことん見下してバランス取ろうとしてるっつーか」
さっきまでのゆるい様子から一点、憂鬱そうに種族差別を語る三人の顔には、重苦しくて暗い陰が垣間見えた。
それだけきっと、自身の種族が原因で辛い思いをしてきたのだろう。
「……でも、だからこそよけいに、エド様が種族問わずガンガン倒しまくるの見てスッキリしたっつーか」
「……え?」
「わかる、わかる。俺を草食動物の癖にどうのこうの言ってたクマ野郎、一回戦であっさりやられてたしな。正直、見ててめっちゃ気持ち良かった!」
「有名な兵団の人達次々と倒したうえに、最後はあのヴィダルス様まで倒しちゃったもんねー。いくらエド様が強いっていっても、あくまでそれはクラスレベルだと思ってたからめっちゃ興奮したわー。王族のヴィダルス様でも倒されるなら、俺が負けても仕方ないと思ったし」
「ちょ、ちょっと待ってください。あの試合を見て、『人間は怖い』とかは思わなかったんですか?」
俺の問いに、三人はそろってキョトンとした表情を浮かべた。
「……え。リシス王国にはエド様レベルの強さの人が、ゴロゴロいるわけ?」
「いや……そういうわけではないですが」
「じゃあ、別に怖くねーな。一人が強いだけじゃ、戦争には勝てねぇし」
「なるは、なるよ。……でも、結婚はできないかな」
「親族の奴らが、強い子作れ作れうるさいからねー」
「……俺は、親から大型肉食獣人以外認めないって言われてるわ。大型なら、俺より弱くてもいいとか言うんだぜ? 信じられるか? 下剋上上等なクズリのプライドどこ行ったって話だよな」
「イタチ科の種族って、結構種族コンプ抱きがちだよね。やっぱりおならが臭いから?」
「屁のことは放っとけ!」
……なるほど。個人の嗜好よりも、社会的な圧力の方が強そうだな。
「獣人は強い相手じゃないと食指が動かないと思ってたので、意外でした」
「強い相手に抱かれたい奴もいれば、番に強いと思われたい奴もいるってだけの話だよ」
「ほら、アンゼとかさー、ちっちゃくてかわいいから。実力はあるのに、強く見えないっしょ?」
「けれど、小型草食獣人なら、否応なく強者として扱ってくれるからね」
「……おい、お前ら。勝手に俺の心理を見透かすな。そんなに俺はわかりやすいか?」
「「わかりやすい」」
親友二人に弄られて凹むアンゼを生温く見守っていると、タンクが深々とため息を吐いた。
「てかさあ、一応草食獣人の括りに入れられてる俺的には、その『小型草食獣人』って呼び方自体納得できないんだよね」
「……それはどういう意味ですか?」
「だってさ、どいつもこいつも『小型草食獣人』を弱い奴の総称みたいに言うのに、そん中には鼠とかも含まれてんのよ? 完全に雑食かつわりとグルメになった獣人ではあまりいないけど、種族元の動物は昆虫食メインの奴とかも、何故か草食扱いで同じ括りに入れられるわけ。『草食獣人』って何よって、話だよね。俺、そこらの肉食獣人に負けない自信あるのに、『草食獣人』ってだけでワンランク下みたいな扱いされるの、マジ心外」
「でもまだ哺乳類なだけマシじゃないー? 哺乳類系獣人の爬虫類獣人差別、結構えげつないよー。俺みたいに魔力が高くて怖がられてる種族ならいいけど、リザードマン系は毒持ちじゃない限り、見下されてひでぇ扱いされるらしいし」
「結局さー。王族や上級貴族にいるような一部の種族以外は、みんな多かれ少なかれ劣等感があるんだよなー。だから、自分が下に見れると思った種族はとことん見下してバランス取ろうとしてるっつーか」
さっきまでのゆるい様子から一点、憂鬱そうに種族差別を語る三人の顔には、重苦しくて暗い陰が垣間見えた。
それだけきっと、自身の種族が原因で辛い思いをしてきたのだろう。
「……でも、だからこそよけいに、エド様が種族問わずガンガン倒しまくるの見てスッキリしたっつーか」
「……え?」
「わかる、わかる。俺を草食動物の癖にどうのこうの言ってたクマ野郎、一回戦であっさりやられてたしな。正直、見ててめっちゃ気持ち良かった!」
「有名な兵団の人達次々と倒したうえに、最後はあのヴィダルス様まで倒しちゃったもんねー。いくらエド様が強いっていっても、あくまでそれはクラスレベルだと思ってたからめっちゃ興奮したわー。王族のヴィダルス様でも倒されるなら、俺が負けても仕方ないと思ったし」
「ちょ、ちょっと待ってください。あの試合を見て、『人間は怖い』とかは思わなかったんですか?」
俺の問いに、三人はそろってキョトンとした表情を浮かべた。
「……え。リシス王国にはエド様レベルの強さの人が、ゴロゴロいるわけ?」
「いや……そういうわけではないですが」
「じゃあ、別に怖くねーな。一人が強いだけじゃ、戦争には勝てねぇし」
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