俺の悪役チートは獣人殿下には通じない

空飛ぶひよこ

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不穏と、新しい希望と

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 さて、クリスにありのままを報告すべきか。誤魔化すべきか。……なんて、迷うまでもなく、報告するの一択だ。
 一度忠告されたのにも関わらず、これ以上無駄に情報を隠したりしたら、クリスに使えない駒だと切り捨てられるに決まってる。交流自体は無くならないだろうけど、その後意図的にリシス王国中枢の情報を遮断される可能性が高い。
 俺はまだ、クリスとの繋がりを断つわけにはいかないのだ。
 そもそも俺が言わなくても、既にどこからか情報を得ている気もするし。

「……祭りで女の人の首を締めているヴィダルスを見つけたので、こっそり遠隔魔法で止めたら、何故かすぐに特定されました」

「あれ? うさ耳で大立ち回りしたことは、報告してくれないの」

「ヴィダルスが取り巻き一人伸されたくらいで、気にする男だとは思えないので、割愛しただけです」

 ……ほらほら、やっぱり全部知ってたあ! 
 どうせ祭りにアストルディアと行ったことも、アストルディアにケツ処女どころか結腸処女までぶち抜かれたことも察してるんだろ! 処女喪失のことは、こんな人目がある場所では絶対報告しねぇからな!

「エディは粘着系変態の思考をわかってないな~。ねえ? ジェフ。ジェフがヴィダルスの立場だったらどう思う?」

『俺のクリス……じゃなかった、俺のエディに踏まれやがって! って怒るね』

「ほら、こういう人種は、こういうあり得ない思考回路になるの。それがわかってないから、魔法でヴィダルスの女を助けちゃったりするんだよ。存在自体を完全に無視しないといけないのに」

『でも、正直あそこまでいったら、完全に無視したところで手遅れな気がする。昔の俺みたいだもん』

「……ジェフは僕が徹底的に無視した結果、無視できない存在になる為に、護衛まで登りつめたんだもんね。ご愁傷さま。エディ。多分どっちかが死ぬまで付きまとわれるよ」

『俺は一生、クリスの下僕だもんね。死ぬまで……というか死んでも一緒だよ』

「闇魔法使いのジェフが言うと、笑えないんだよなあ。死んでも幽霊かアンデッドになって付きまとわれそうで。まあ、いいけど」

 ……いいんだ。
 何か本当に知れば知るほど、恐ろしい二人だな。
 ジェフとこのノリと、ヴィダルスが一緒だとか悪い冗談だろ。怖すぎだわ。

「……とりあえず、暫くは食堂使わないようにします」

「問題を先送りするだけな気がするけど、まあいいんじゃない? 今のエディがアストルディアと同じ席で昼ご飯食べてたら、色々まずそうな気がするし」

「……バレると、思うか?……」

「獣人は臭い主体だからそうそうバレないとは思うけど、ヴィダルスは変に勘が良いからね。気づかなかったとしても、エディが発情してると思って襲いかかってきそう」

 主語を言わない小声の俺の問いにも、はっきりと答えてくれてありがとう。クリス。
 とりあえず今日から昼は、ぼっち飯にチャレンジします。亜空間に、食うもの色々あるし。



「……とは言っても、教室で食べてたらヴィダルスが押しかけてきそうだしなあ」

 天気もいいし、中庭ランチと洒落込むかと思って来たわけだが、既に先客が。

「……ええ!? まじで? ポンダー、ポンダー! アンゼ、こないだの建国祭で童貞卒業したって!」

「ちょ、声がデケェわ。タンク」

「まーじーでー? 相手は、どの種族よ。セクシーな爬虫類の子?」

「鰐のお前じゃないんだから……聞いて、驚け。ハイエナの女の子だ!」

「え、それ童貞卒業してる? 処女喪失してない?」

「まじかー。アンゼは女の子に孕まされたい側だったのは意外だったわー」

「ちゃんと童貞卒業したわ! ……ケツも掘られたけど」

「すげえ! 童貞と処女、同時卒業おめでとう、アンゼ!」

「対女の子だと、孕まされる側でも普通はケツ掘られないから、なかなか貴重な体験したね!」

「……くそ、からかわれるのも嫌だが、素直に祝福されるのも、それはそれで複雑だ」

 ……うーん。このアホな会話は、紛れもなく、うちのクラスのアン・ポン・タン。
 これからもっと獣人と交流しなきゃって思ってたし、せっかくだから昼食一緒取らせてもらうかな。



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