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君と創る未来②
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「エディ。お前はクリスから、『獣人の魔力が高い人間に対する執着を考えれば、たった一組婚姻関係を結んだくらいでは、友好的に国交を開始することはできないのでは』と言われたのだろう? ……俺はまず、その執着自体が間違いなのだと思っている」
小さくため息を吐きながら、アストルディアはうっすら星が瞬いている空を見上げた。
「確かにセネーバの民の出生数は減っているし、弱体化も進んできている。……でもそれは、魔力の多い獣人達が弱い血が混ざることを恐れて、小型草食獣人との交わりを嫌ったからだ。たとえ運命の番と言われるほどに魔力相性が良い相手でも、相手が弱い種族であれば嫌厭し、似たような魔力の獣人同士の婚姻だけを繰り返した結果が、今の状態なのだと俺は思っている。原始の女神の呪いでもなんでもない。様々な種族の魔力が混ざりあってこそ、強い獣人は生まれるのに、それを拒んだのは俺達自身ではないかと」
「……だとしたら、よけいに俺達の婚姻は意味がないんじゃないか。王族自らが、人間との婚姻を牽引したことになるぞ」
アストルディアの主張を大々的に表明する為には、アストルディア自らが小型の草食獣人と婚姻を結んで、強い子どもを作らなければ難しい気がする。
俺と婚姻を結んで強い子どもが生まれたとしても、「やっぱり魔力が高い人間に孕ませるのが一番いい」と思われるだけじゃないだろうか。わざと魔力が低い子どもを産むことなんかできないし、たとえやれたとしても、迫害される可能性がある子どもがかわいそうだからやりたくないし。
「違う。エディ。俺が草食獣人と婚姻を結んだところで、根本的な解決にはならない。仮に強い子どもが生まれたところで、草食獣人の母に似た子は肩身の狭い思いをすることになる。俺が変えたいのは、強さを至上とする獣人の意識そのものだ」
「……そんなの、どうやって」
多数派の意見を変えることは、容易じゃないことなんて、前世の記憶からしてもわかりきっている。
それなのに、どうやって国全体にはびこった価値観を、変えられるというというんだ。
「お前が人間というだけで怯える孤児院の子を見ただろう? 獣人の強さを至上とする価値観を作っているのは、人間に対する『恐れ』だ。セネーバの国民は皆、かつてのように人間の奴隷にされることを恐れている」
「……でも、学校の奴らは人間である俺達を、単に都合の良い繁殖相手と見なしていたぞ」
「恐れているからこそ、支配したがるんだ。支配することで、恐怖を克服できるから。そして、その恐れを生み出している理由の一つに、『無知』があると思っている」
「……『無知』?」
「ああ。孤児院の年少の子ども達を思い出してくれ。あの子達は、エディを人間というだけで恐れたが、エディの人となりを知れば膝で寝入ることができるまでになっただろう? あれと同じことだ」
そう言ってアストルディアは、俺の手を両手で握り締めた。
「国交回復の為の交渉材料は、まずは魔具や魔石で構わない。大事なのは、交易を通して互いを知ることだ。半世紀にも渡る国交断絶は、知らず知らずのうちに双方に無意識的な互いに対する恐怖心を根付かせている。俺はエディとの婚姻をきっかけに、まずは互いの無知故の恐怖を解消したい」
「っ」
「そこから、始めよう。エディ。俺は、お前となら同じ夢を見れる」
「……夢?」
「ああ。セネーバ国内の種族による格差をなくし、隣国の人間達とも共存する夢だ。……クリスにこんなことを言えば、きっと理想主義が過ぎると鼻で笑われるだろうが」
小さくため息を吐きながら、アストルディアはうっすら星が瞬いている空を見上げた。
「確かにセネーバの民の出生数は減っているし、弱体化も進んできている。……でもそれは、魔力の多い獣人達が弱い血が混ざることを恐れて、小型草食獣人との交わりを嫌ったからだ。たとえ運命の番と言われるほどに魔力相性が良い相手でも、相手が弱い種族であれば嫌厭し、似たような魔力の獣人同士の婚姻だけを繰り返した結果が、今の状態なのだと俺は思っている。原始の女神の呪いでもなんでもない。様々な種族の魔力が混ざりあってこそ、強い獣人は生まれるのに、それを拒んだのは俺達自身ではないかと」
「……だとしたら、よけいに俺達の婚姻は意味がないんじゃないか。王族自らが、人間との婚姻を牽引したことになるぞ」
アストルディアの主張を大々的に表明する為には、アストルディア自らが小型の草食獣人と婚姻を結んで、強い子どもを作らなければ難しい気がする。
俺と婚姻を結んで強い子どもが生まれたとしても、「やっぱり魔力が高い人間に孕ませるのが一番いい」と思われるだけじゃないだろうか。わざと魔力が低い子どもを産むことなんかできないし、たとえやれたとしても、迫害される可能性がある子どもがかわいそうだからやりたくないし。
「違う。エディ。俺が草食獣人と婚姻を結んだところで、根本的な解決にはならない。仮に強い子どもが生まれたところで、草食獣人の母に似た子は肩身の狭い思いをすることになる。俺が変えたいのは、強さを至上とする獣人の意識そのものだ」
「……そんなの、どうやって」
多数派の意見を変えることは、容易じゃないことなんて、前世の記憶からしてもわかりきっている。
それなのに、どうやって国全体にはびこった価値観を、変えられるというというんだ。
「お前が人間というだけで怯える孤児院の子を見ただろう? 獣人の強さを至上とする価値観を作っているのは、人間に対する『恐れ』だ。セネーバの国民は皆、かつてのように人間の奴隷にされることを恐れている」
「……でも、学校の奴らは人間である俺達を、単に都合の良い繁殖相手と見なしていたぞ」
「恐れているからこそ、支配したがるんだ。支配することで、恐怖を克服できるから。そして、その恐れを生み出している理由の一つに、『無知』があると思っている」
「……『無知』?」
「ああ。孤児院の年少の子ども達を思い出してくれ。あの子達は、エディを人間というだけで恐れたが、エディの人となりを知れば膝で寝入ることができるまでになっただろう? あれと同じことだ」
そう言ってアストルディアは、俺の手を両手で握り締めた。
「国交回復の為の交渉材料は、まずは魔具や魔石で構わない。大事なのは、交易を通して互いを知ることだ。半世紀にも渡る国交断絶は、知らず知らずのうちに双方に無意識的な互いに対する恐怖心を根付かせている。俺はエディとの婚姻をきっかけに、まずは互いの無知故の恐怖を解消したい」
「っ」
「そこから、始めよう。エディ。俺は、お前となら同じ夢を見れる」
「……夢?」
「ああ。セネーバ国内の種族による格差をなくし、隣国の人間達とも共存する夢だ。……クリスにこんなことを言えば、きっと理想主義が過ぎると鼻で笑われるだろうが」
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