71 / 311
後遺症②
しおりを挟む
お説教ではなく、まさかの慰めの言葉。思わず口元に自嘲の笑みが浮かぶ。
「……闇魔法を制御できず、アストルディア第二王子がいなければ、ヴィダルスを殺していたかもしれないのにか?」
「だから、結果だけ見ればって言ったでしょ。もし、アストルディアが先に動かなければ、僕がジェフの異能でエディを止めさせていたし。実際あの時、エディが闇魔法を使ったこと自体は、間違ってなかったと思うよ。衆人環視の中、リシス王国の英雄候補が無理やり王族の番にされるとか最悪だもん。セネーバは確実にうちの国を舐めるだろうし、セネーバに対する国民の嫌悪感と恐怖心はそれこそうなぎ登りだったろうからさ」
大げさに肩を竦めてため息を吐いたクリスは、すぐに口元に浮かべていた笑みを消して、真面目な表情で俺を見据えた。
「……ただ、闇魔法の扱いには本当気をつけて。あんな短時間の【甘夢】であれだけ飲みこまれるとなると、さらに上級の闇魔法を使ったらどうなるかわからないよ。最悪、発狂するかも」
「……だろうな」
「エディは知らないかもしれないけど、そもそも闇属性持ちはそれが発覚した時点で、親元から離されてジェフのように国で管理されるのが普通なんだよ。エディは聖属性があるから相殺されると辺境伯がごねて、特別に許されているだけで。それだけ闇属性というのは、危険な性質なんだ」
「…………」
声で他人の精神に干渉するジェフの異能は、性質からして闇属性由来なんだろうとは思ってたけど、闇属性持ちが親元から引き離されて国で管理されているという話は初耳だった。
そもそも闇属性がそんなに国から危険視されていること自体、魔法じじいはもちろん、他の誰も教えてくれなかった。おそらく、いざと言う時に俺が使用を躊躇ったりしないように、クソ親父が口止めしていたのだろう。
「ジェフは僕の護衛であると同時に、監視対象でもあるんだよ。ジェフは僕と魔法による主従契約を結んでいて、僕の命令に従う代わりに、『力』を使った時の反動の一部を自動的に僕が肩代わりすることになっている。僕は闇属性をもっていないし、複数属性の中でも聖属性が特別強いからね」
『それでもご主人様にあまり負担をかけられないから、極力声は出さないようにしてるんだよ。わりと勝手に異能が発動されちゃうから』
「ジェフは他に属性を持たない純粋な闇属性だから、特別制御が難しいんだ。最初はさっきのエディみたいに思考だけでも異能が発動してたんだけど、訓練して何とか声だけに異能を集中させることに成功したんだよ」
『オレンジ髪だから、火属性交じりだと思った? 残念、純闇でした☆』
ニコニコと笑うジェフが書く言葉はいつも通り軽く、だからこそよけいにゾッとした。常に闇に支配されているこいつの精神状態は、一体どうなっているのだろう。
「だから僕は闇魔法使用後の後遺症のことも、実体験で知ってるんだ。一度闇魔法を発動させると、暫くは後遺症で精神的に不安定になりやすい。そして精神的に不安定になればなるほど、体内に闇が蓄積されやすくなるし、勝手に闇魔法が発動してしまいやすくなるんだよ」
『美味しいもの食べるとか、ゆっくりお風呂に入るとか、好きな人とイチャラブセックスするとかして、何とかメンタルを安定させてね。エディならできるできる』
「ジェフなら僕がメンタルケアをすれば落ち着くけど、エディは僕らといる時はいつも気を張ってるからさ。一人で頑張れとしか言いようがないんだよね」
ため息混じりにそう言って、クリスは魔力回復ポーションを差し出した。
「取り敢えずこれあげるから、魔力回復していつでも聖魔法を使えるようにしておきなよ。状態異常を回復する系の奴なら、少しは精神的に持ち直すからさ」
「……ありがたく使わせてもらう」
「骨もくっついたみたいだし、後のことは僕に任せて部屋に戻っていいよ。できれば明日の朝までは、心を乱すような相手とは接触しないで。一晩経てば、大分マシになるはずだから」
「わかった……恩に着る」
「……闇魔法を制御できず、アストルディア第二王子がいなければ、ヴィダルスを殺していたかもしれないのにか?」
「だから、結果だけ見ればって言ったでしょ。もし、アストルディアが先に動かなければ、僕がジェフの異能でエディを止めさせていたし。実際あの時、エディが闇魔法を使ったこと自体は、間違ってなかったと思うよ。衆人環視の中、リシス王国の英雄候補が無理やり王族の番にされるとか最悪だもん。セネーバは確実にうちの国を舐めるだろうし、セネーバに対する国民の嫌悪感と恐怖心はそれこそうなぎ登りだったろうからさ」
大げさに肩を竦めてため息を吐いたクリスは、すぐに口元に浮かべていた笑みを消して、真面目な表情で俺を見据えた。
「……ただ、闇魔法の扱いには本当気をつけて。あんな短時間の【甘夢】であれだけ飲みこまれるとなると、さらに上級の闇魔法を使ったらどうなるかわからないよ。最悪、発狂するかも」
「……だろうな」
「エディは知らないかもしれないけど、そもそも闇属性持ちはそれが発覚した時点で、親元から離されてジェフのように国で管理されるのが普通なんだよ。エディは聖属性があるから相殺されると辺境伯がごねて、特別に許されているだけで。それだけ闇属性というのは、危険な性質なんだ」
「…………」
声で他人の精神に干渉するジェフの異能は、性質からして闇属性由来なんだろうとは思ってたけど、闇属性持ちが親元から引き離されて国で管理されているという話は初耳だった。
そもそも闇属性がそんなに国から危険視されていること自体、魔法じじいはもちろん、他の誰も教えてくれなかった。おそらく、いざと言う時に俺が使用を躊躇ったりしないように、クソ親父が口止めしていたのだろう。
「ジェフは僕の護衛であると同時に、監視対象でもあるんだよ。ジェフは僕と魔法による主従契約を結んでいて、僕の命令に従う代わりに、『力』を使った時の反動の一部を自動的に僕が肩代わりすることになっている。僕は闇属性をもっていないし、複数属性の中でも聖属性が特別強いからね」
『それでもご主人様にあまり負担をかけられないから、極力声は出さないようにしてるんだよ。わりと勝手に異能が発動されちゃうから』
「ジェフは他に属性を持たない純粋な闇属性だから、特別制御が難しいんだ。最初はさっきのエディみたいに思考だけでも異能が発動してたんだけど、訓練して何とか声だけに異能を集中させることに成功したんだよ」
『オレンジ髪だから、火属性交じりだと思った? 残念、純闇でした☆』
ニコニコと笑うジェフが書く言葉はいつも通り軽く、だからこそよけいにゾッとした。常に闇に支配されているこいつの精神状態は、一体どうなっているのだろう。
「だから僕は闇魔法使用後の後遺症のことも、実体験で知ってるんだ。一度闇魔法を発動させると、暫くは後遺症で精神的に不安定になりやすい。そして精神的に不安定になればなるほど、体内に闇が蓄積されやすくなるし、勝手に闇魔法が発動してしまいやすくなるんだよ」
『美味しいもの食べるとか、ゆっくりお風呂に入るとか、好きな人とイチャラブセックスするとかして、何とかメンタルを安定させてね。エディならできるできる』
「ジェフなら僕がメンタルケアをすれば落ち着くけど、エディは僕らといる時はいつも気を張ってるからさ。一人で頑張れとしか言いようがないんだよね」
ため息混じりにそう言って、クリスは魔力回復ポーションを差し出した。
「取り敢えずこれあげるから、魔力回復していつでも聖魔法を使えるようにしておきなよ。状態異常を回復する系の奴なら、少しは精神的に持ち直すからさ」
「……ありがたく使わせてもらう」
「骨もくっついたみたいだし、後のことは僕に任せて部屋に戻っていいよ。できれば明日の朝までは、心を乱すような相手とは接触しないで。一晩経てば、大分マシになるはずだから」
「わかった……恩に着る」
266
お気に入りに追加
2,137
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
その捕虜は牢屋から離れたくない
さいはて旅行社
BL
敵国の牢獄看守や軍人たちが大好きなのは、鍛え上げられた筋肉だった。
というわけで、剣や体術の訓練なんか大嫌いな魔導士で細身の主人公は、同僚の脳筋騎士たちとは違い、敵国の捕虜となっても平穏無事な牢屋生活を満喫するのであった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜
・話の流れが遅い
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
番から逃げる事にしました
みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。
前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。
彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。
❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。
❋独自設定有りです。
❋他視点の話もあります。
❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
モブなのに執着系ヤンデレ美形の友達にいつの間にか、なってしまっていた
マルン円
BL
執着系ヤンデレ美形×鈍感平凡主人公。全4話のサクッと読めるBL短編です(タイトルを変えました)。
主人公は妹がしていた乙女ゲームの世界に転生し、今はロニーとして地味な高校生活を送っている。内気なロニーが気軽に学校で話せる友達は同級生のエドだけで、ロニーとエドはいっしょにいることが多かった。
しかし、ロニーはある日、髪をばっさり切ってイメチェンしたエドを見て、エドがヒロインに執着しまくるメインキャラの一人だったことを思い出す。
平凡な生活を送りたいロニーは、これからヒロインのことを好きになるであろうエドとは距離を置こうと決意する。
タイトルを変えました。
前のタイトルは、「モブなのに、いつのまにかヒロインに執着しまくるキャラの友達になってしまっていた」です。
急に変えてしまい、すみません。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
新しい道を歩み始めた貴方へ
mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。
そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。
その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。
あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。
あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?
※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
完結·助けた犬は騎士団長でした
禅
BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。
ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。
しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。
強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ……
※完結まで毎日投稿します
男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~
さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。
そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。
姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。
だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。
その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。
女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。
もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。
周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか?
侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
転生したけどやり直す前に終わった【加筆版】
リトルグラス
BL
人生を無気力に無意味に生きた、負け組男がナーロッパ的世界観に転生した。
転生モノ小説を読みながら「俺だってやり直せるなら、今度こそ頑張るのにな」と、思いながら最期を迎えた前世を思い出し「今度は人生を成功させる」と転生した男、アイザックは子供時代から努力を重ねた。
しかし、アイザックは成人の直前で家族を処刑され、平民落ちにされ、すべてを失った状態で追放された。
ろくなチートもなく、あるのは子供時代の努力の結果だけ。ともに追放された子ども達を抱えてアイザックは南の港町を目指す──
***
第11回BL小説大賞にエントリーするために修正と加筆を加え、作者のつぶやきは削除しました。(23'10'20)
**
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる