俺の悪役チートは獣人殿下には通じない

空飛ぶひよこ

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後遺症②

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 お説教ではなく、まさかの慰めの言葉。思わず口元に自嘲の笑みが浮かぶ。

「……闇魔法を制御できず、アストルディア第二王子がいなければ、ヴィダルスを殺していたかもしれないのにか?」

「だから、結果だけ見ればって言ったでしょ。もし、アストルディアが先に動かなければ、僕がジェフの異能でエディを止めさせていたし。実際あの時、エディが闇魔法を使ったこと自体は、間違ってなかったと思うよ。衆人環視の中、リシス王国の英雄候補が無理やり王族の番にされるとか最悪だもん。セネーバは確実にうちの国を舐めるだろうし、セネーバに対する国民の嫌悪感と恐怖心はそれこそうなぎ登りだったろうからさ」

 大げさに肩を竦めてため息を吐いたクリスは、すぐに口元に浮かべていた笑みを消して、真面目な表情で俺を見据えた。

「……ただ、闇魔法の扱いには本当気をつけて。あんな短時間の【甘夢】であれだけ飲みこまれるとなると、さらに上級の闇魔法を使ったらどうなるかわからないよ。最悪、発狂するかも」

「……だろうな」

「エディは知らないかもしれないけど、そもそも闇属性持ちはそれが発覚した時点で、親元から離されてジェフのように国で管理されるのが普通なんだよ。エディは聖属性があるから相殺されると辺境伯がごねて、特別に許されているだけで。それだけ闇属性というのは、危険な性質なんだ」

「…………」

 声で他人の精神に干渉するジェフの異能は、性質からして闇属性由来なんだろうとは思ってたけど、闇属性持ちが親元から引き離されて国で管理されているという話は初耳だった。
 そもそも闇属性がそんなに国から危険視されていること自体、魔法じじいはもちろん、他の誰も教えてくれなかった。おそらく、いざと言う時に俺が使用を躊躇ったりしないように、クソ親父が口止めしていたのだろう。

「ジェフは僕の護衛であると同時に、監視対象でもあるんだよ。ジェフは僕と魔法による主従契約を結んでいて、僕の命令に従う代わりに、『力』を使った時の反動の一部を自動的に僕が肩代わりすることになっている。僕は闇属性をもっていないし、複数属性の中でも聖属性が特別強いからね」

『それでもご主人様にあまり負担をかけられないから、極力声は出さないようにしてるんだよ。わりと勝手に異能が発動されちゃうから』

「ジェフは他に属性を持たない純粋な闇属性だから、特別制御が難しいんだ。最初はさっきのエディみたいに思考だけでも異能が発動してたんだけど、訓練して何とか声だけに異能を集中させることに成功したんだよ」

『オレンジ髪だから、火属性交じりだと思った? 残念、純闇でした☆』

 ニコニコと笑うジェフが書く言葉はいつも通り軽く、だからこそよけいにゾッとした。常に闇に支配されているこいつの精神状態は、一体どうなっているのだろう。

「だから僕は闇魔法使用後の後遺症のことも、実体験で知ってるんだ。一度闇魔法を発動させると、暫くは後遺症で精神的に不安定になりやすい。そして精神的に不安定になればなるほど、体内に闇が蓄積されやすくなるし、勝手に闇魔法が発動してしまいやすくなるんだよ」

『美味しいもの食べるとか、ゆっくりお風呂に入るとか、好きな人とイチャラブセックスするとかして、何とかメンタルを安定させてね。エディならできるできる』

「ジェフなら僕がメンタルケアをすれば落ち着くけど、エディは僕らといる時はいつも気を張ってるからさ。一人で頑張れとしか言いようがないんだよね」

 ため息混じりにそう言って、クリスは魔力回復ポーションを差し出した。

「取り敢えずこれあげるから、魔力回復していつでも聖魔法を使えるようにしておきなよ。状態異常を回復する系の奴なら、少しは精神的に持ち直すからさ」

「……ありがたく使わせてもらう」

「骨もくっついたみたいだし、後のことは僕に任せて部屋に戻っていいよ。できれば明日の朝までは、心を乱すような相手とは接触しないで。一晩経てば、大分マシになるはずだから」

「わかった……恩に着る」
 
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