61 / 311
試合開始①
しおりを挟む
……あーもう、こいつ本当に下品過ぎて嫌。
何故かこいつと会うたびに、何もしてないブラッドリーの好感度が上がるんだよな。あいつ下品なこと言おうとするたび、顔真っ赤にしてたし。今思うと、坊ちゃん臭さが抜けない不良って、ギャップが可愛かった気もする。もう少し優しくしてやるべきだったか……いや、あいつが俺に惚れてたんなら、どっちにしろ駄目だったわ。
ニヤニヤ笑いながら上機嫌に尻尾を揺らして去るヴィダルスの背中を睨みつけていると、ドスドスと近づいてくるデカい熊の姿が。
おやまあ。招かれざる客がまた一人。
「……貴方は?」
「お前の初戦相手のヤンガルド・フープスだ」
敵意顕わに睨みつけてきたのは、アストルディアやヴィダルスよりさらに一回りデカい熊獣人の生徒。
はじめましてのはずなのに、何故か牙を剥き出しで俺を威嚇してくる。
「クラスの奴らを体術の講義で倒して調子に乗ってるようだがな。あいつらは、ただの雑魚だ。人間なんていう繁殖でしか取り柄がない劣等種が、獣人様に勝てるわけがないってことを俺が思い知らせてやるよ」
吐き捨てられた侮蔑の言葉に、怒るよりも少し感動してしまった。
おおう、留学前にはステレオタイプだと想像していた、人間を見下す系獣人がようやく話しかけてきた。
どいつもこいつも俺を得体の知らない奴と忌避するか、雌扱いするかのどちらかで、意外にこの手の獣人今までいなかったんだよなー。新鮮新鮮。
「フープスさん。貴方はどのような得物を使われるのですか?」
内心とは裏腹に、敢えて冷たい眼差しで問いかける。
新鮮だとしても、別にお近づきになりたいタイプじゃないからね。鬱陶しいのは、ヴィダルスだけで十分だ。
「はあ? 人間ごときに武器なんか使うわけないだろ。お前なんか、牙と爪で十分だ」
「じゃあ、私もそうしましょう」
嘲るように口端を吊り上げ、目を細めてやる。
「貴方と戦う時は、武器も身体強化以外の魔法も使いません。ちょうど、貴方が雑魚と言った、クラスメイトを倒した時と同じ条件ですね。もし武器を使われたとしても、貴方程度ならそれで十分倒せるでしょうけど」
「……ふざけるな! 人間風情が、俺を侮るか!」
「侮ってません。冷静で客観的な分析の結果です」
ぶっちゃけ君さ、図体こそデカいけど、魔力全然大したことないよね? かなり優しく見積って、雪山エリアにいる魔物くらい?
正直全く負ける気しないんだけど。
「……決めた。ヴィダルス様が何て言おうが関係ない。俺が勝ったら、絶対にお前を犯す。お前なんぞ、獣人様の子を産むしか価値がないってことを、体で思い知らせてやる」
だーかーら。獣人ったら、すぐそういう発想になるー。性欲に頭やられてんのか。俺なんかバリバリ童貞なのに、この学校来てから一度も自慰をしてないくらい性欲なくなってんだぞ! 毎晩アストルディアが泊まりに来るせいでな!
「できるものなら、どうぞご自由に。それでは後ほど試合で会いましょう」
充血した目で睨みつけてくるヤンガルドに、吐き捨てるようにそう言って、足早にその場から立ち去る。……て、言っても、俺がいた場所にあいつが来たわけだから、行く場所特にないんだけど。
どうしよう。審判席に行ったクリスにでも会いに行くかな。ここからまあまあ離れてるけど……はっ! 審査員席にいるアストルディアが、さり気にこちらを見てる!? 距離があるからわからないけど、何かまた怒ってる気配がする!?
……アストルディアの聴力なら、さっきの会話も聞こえたりすんのかな。この距離でも。やっべ、また余計なこと言ったって怒られるかも。
でもヴィダルスと違って、こいつなら絶対大丈夫だから……絶対勝つから、許して。
「ーーそれでは、第一試合に参加する選手は、こちらにお集まりください」
あ、呼ばれた。準備体操、十分できんかったな。
まあ、次のヤンガルド戦が準備体操みたいなものだからいいか。
何故かこいつと会うたびに、何もしてないブラッドリーの好感度が上がるんだよな。あいつ下品なこと言おうとするたび、顔真っ赤にしてたし。今思うと、坊ちゃん臭さが抜けない不良って、ギャップが可愛かった気もする。もう少し優しくしてやるべきだったか……いや、あいつが俺に惚れてたんなら、どっちにしろ駄目だったわ。
ニヤニヤ笑いながら上機嫌に尻尾を揺らして去るヴィダルスの背中を睨みつけていると、ドスドスと近づいてくるデカい熊の姿が。
おやまあ。招かれざる客がまた一人。
「……貴方は?」
「お前の初戦相手のヤンガルド・フープスだ」
敵意顕わに睨みつけてきたのは、アストルディアやヴィダルスよりさらに一回りデカい熊獣人の生徒。
はじめましてのはずなのに、何故か牙を剥き出しで俺を威嚇してくる。
「クラスの奴らを体術の講義で倒して調子に乗ってるようだがな。あいつらは、ただの雑魚だ。人間なんていう繁殖でしか取り柄がない劣等種が、獣人様に勝てるわけがないってことを俺が思い知らせてやるよ」
吐き捨てられた侮蔑の言葉に、怒るよりも少し感動してしまった。
おおう、留学前にはステレオタイプだと想像していた、人間を見下す系獣人がようやく話しかけてきた。
どいつもこいつも俺を得体の知らない奴と忌避するか、雌扱いするかのどちらかで、意外にこの手の獣人今までいなかったんだよなー。新鮮新鮮。
「フープスさん。貴方はどのような得物を使われるのですか?」
内心とは裏腹に、敢えて冷たい眼差しで問いかける。
新鮮だとしても、別にお近づきになりたいタイプじゃないからね。鬱陶しいのは、ヴィダルスだけで十分だ。
「はあ? 人間ごときに武器なんか使うわけないだろ。お前なんか、牙と爪で十分だ」
「じゃあ、私もそうしましょう」
嘲るように口端を吊り上げ、目を細めてやる。
「貴方と戦う時は、武器も身体強化以外の魔法も使いません。ちょうど、貴方が雑魚と言った、クラスメイトを倒した時と同じ条件ですね。もし武器を使われたとしても、貴方程度ならそれで十分倒せるでしょうけど」
「……ふざけるな! 人間風情が、俺を侮るか!」
「侮ってません。冷静で客観的な分析の結果です」
ぶっちゃけ君さ、図体こそデカいけど、魔力全然大したことないよね? かなり優しく見積って、雪山エリアにいる魔物くらい?
正直全く負ける気しないんだけど。
「……決めた。ヴィダルス様が何て言おうが関係ない。俺が勝ったら、絶対にお前を犯す。お前なんぞ、獣人様の子を産むしか価値がないってことを、体で思い知らせてやる」
だーかーら。獣人ったら、すぐそういう発想になるー。性欲に頭やられてんのか。俺なんかバリバリ童貞なのに、この学校来てから一度も自慰をしてないくらい性欲なくなってんだぞ! 毎晩アストルディアが泊まりに来るせいでな!
「できるものなら、どうぞご自由に。それでは後ほど試合で会いましょう」
充血した目で睨みつけてくるヤンガルドに、吐き捨てるようにそう言って、足早にその場から立ち去る。……て、言っても、俺がいた場所にあいつが来たわけだから、行く場所特にないんだけど。
どうしよう。審判席に行ったクリスにでも会いに行くかな。ここからまあまあ離れてるけど……はっ! 審査員席にいるアストルディアが、さり気にこちらを見てる!? 距離があるからわからないけど、何かまた怒ってる気配がする!?
……アストルディアの聴力なら、さっきの会話も聞こえたりすんのかな。この距離でも。やっべ、また余計なこと言ったって怒られるかも。
でもヴィダルスと違って、こいつなら絶対大丈夫だから……絶対勝つから、許して。
「ーーそれでは、第一試合に参加する選手は、こちらにお集まりください」
あ、呼ばれた。準備体操、十分できんかったな。
まあ、次のヤンガルド戦が準備体操みたいなものだからいいか。
238
お気に入りに追加
2,130
あなたにおすすめの小説
王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜
・不定期
【完結】第三王子は、自由に踊りたい。〜豹の獣人と、第一王子に言い寄られてますが、僕は一体どうすればいいでしょうか?〜
N2O
BL
気弱で不憫属性の第三王子が、二人の男から寵愛を受けるはなし。
表紙絵
⇨元素 様 X(@10loveeeyy)
※独自設定、ご都合主義です。
※ハーレム要素を予定しています。
【完結】ここで会ったが、十年目。
N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化)
我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。
(追記5/14 : お互いぶん回してますね。)
Special thanks
illustration by おのつく 様
X(旧Twitter) @__oc_t
※ご都合主義です。あしからず。
※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。
※◎は視点が変わります。
男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~
さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。
そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。
姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。
だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。
その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。
女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。
もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。
周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか?
侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?
光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。
みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。
生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。
何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。
★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします
*
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!?
しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です!
めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので!
本編完結しました!
リクエストの更新が終わったら、舞踏会編をはじめる予定ですー!
僕だけの番
五珠 izumi
BL
人族、魔人族、獣人族が住む世界。
その中の獣人族にだけ存在する番。
でも、番には滅多に出会うことはないと言われていた。
僕は鳥の獣人で、いつの日か番に出会うことを夢見ていた。だから、これまで誰も好きにならず恋もしてこなかった。
それほどまでに求めていた番に、バイト中めぐり逢えたんだけれど。
出会った番は同性で『番』を認知できない人族だった。
そのうえ、彼には恋人もいて……。
後半、少し百合要素も含みます。苦手な方はお気をつけ下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる