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お前は何もわかっていない②
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……あ、すごい。
胸の中にあった淀みみたいなの、今完全消滅した。
アストルディア、実はヒーラーのスキルあったりすんの?
まあ、俺が対アストルディア関係で激チョロというのが正解な気はするけど。激チョロなのに、すぐメンヘラになるとか……ヤバいな俺。アストルディアがホストなら、今頃破産させられてる。
てか、今さり気なく重要そうな情報を暴露されたような……。
「あの、さ。アストルディア、その……」
「……すまない。少し感情的になり過ぎたな」
次の瞬間、ボワンとお犬様に変化するアストルディア。うわん、きゃわいいぃぃ! ……って。
「今日はもう休むか。お前も、俺の話を整理する時間が必要だろう」
そう言ってさっさとベッドへ向かうアストルディアの尻尾を、唖然と見送る。
……え、ここで話終わらしちゃうの? 何か今の、ここから重要な話する的なアレじゃなかったの?
「……なんかなー……」
油断すれば、すぐに俺はメンヘラに陥るし。
アストルディアはそんな俺を当然みたいに受け止めてくれるけど、必要以上に自身のことは打ち明けようとはしない。
何てか、歪だよね。俺らの関係ってすごく。
「……ほら、おいで。エディ」
けれど魅惑のモフモフにこんな風に誘惑されたら、抗えるわけなくて。
すぐさま俺は悪いわんこの後を追ってベッドに飛び込み、そのモフモフで柔らかい毛皮に溺れる。
衝動のままに毛皮をモフりまくる俺の顔をペロリと舐めたアストルディアは、そのまま俺に寄り添うように丸くなった。
……ううーん、ますますメンヘラ拗らせている客と、それを甘い言葉で宥めすかして誤魔化すホストって感じだな! もしくは結婚詐欺師と、その被害者?
すうすうと、早々に寝息を立てはじめたわんこモードアストルディアをながめながら、ため息を吐く。
アストルディアを信じたいのに、信じきれなくて。
寧ろ信じたふりをして、利用しろとさえ思う自分もいて。
それなのに……日に日にどうしようとないくらい、俺を「親友」と言ってくれるアストルディアに溺れている。
原作エドワードはどうだったのだろう。
同じように、疑心暗鬼になりながらも、アストルディアを親友と思わずにはいられなかったのか。
それともいずれ戦争が起こりアストルディアと敵対することを知らなかった分、疑うことなく親友として過ごすことができたのだろうか。
「……あ。そういや結局、アストルディアと俺の魔力相性良いのか教えてもらってねぇや」
思わず漏らした言葉に、ぴくりとアストルディアの耳が動いた。……どうやら狸寝入りだったらしい。そして、魔力相性について言及しなかったこともわざとか。
「……気ぃ向いたら、また教えてね」
ため息と共に素直なお耳に囁いて、その体を抱きしめる。……まあ、こんだけアストルディアの魔力に包まれて落ち着く時点で相性悪いはずもねーが。
関係が歪であっても、アストルディアが俺を親友として受け入れてくれていることは確かで。
俺がこの学校を卒業するまではまだ時間がある。
だから……大丈夫。まだ、大丈夫。
きっと未来は変えられるはず。
「……親善試合?」
「そう、学校側から提案があってね。留学生側から、必ず一人は出て欲しいんだってさ」
アストルディアとはほぼ毎晩部屋で会っているが、クリスとジェフと個室で情報交換する時間も必要だ。
なので3日に一度はクリスに部屋に呼び出され、猫かぶり第二モードで色々話をしている。その間、かわいいお犬様をベランダで待たせることはできないので、ベランダに手紙を置いて来なくてよい旨を伝えている。それでも夜中寝るタイミングで絶対来るけど。……お犬様の毛皮に包まれないと眠れない体質になったら、どうしてくれるんだ。
護衛の為に無理やり一人部屋を二人部屋にしてベッドを詰め込んだクリスとジェフの部屋は、二人の強い魔力が混ざり合っていて、非常に落ち着かない。いつも通り必要最小限の報告だけで帰ろうと思っていたのに、聞き逃せない話をされた。
「それって……実質俺一択じゃねぇ? どさくさに紛れて暗殺される可能性もあるのにクリスを出すわけにいかねぇし、クリスの護衛のジェフは論外だろ」
胸の中にあった淀みみたいなの、今完全消滅した。
アストルディア、実はヒーラーのスキルあったりすんの?
まあ、俺が対アストルディア関係で激チョロというのが正解な気はするけど。激チョロなのに、すぐメンヘラになるとか……ヤバいな俺。アストルディアがホストなら、今頃破産させられてる。
てか、今さり気なく重要そうな情報を暴露されたような……。
「あの、さ。アストルディア、その……」
「……すまない。少し感情的になり過ぎたな」
次の瞬間、ボワンとお犬様に変化するアストルディア。うわん、きゃわいいぃぃ! ……って。
「今日はもう休むか。お前も、俺の話を整理する時間が必要だろう」
そう言ってさっさとベッドへ向かうアストルディアの尻尾を、唖然と見送る。
……え、ここで話終わらしちゃうの? 何か今の、ここから重要な話する的なアレじゃなかったの?
「……なんかなー……」
油断すれば、すぐに俺はメンヘラに陥るし。
アストルディアはそんな俺を当然みたいに受け止めてくれるけど、必要以上に自身のことは打ち明けようとはしない。
何てか、歪だよね。俺らの関係ってすごく。
「……ほら、おいで。エディ」
けれど魅惑のモフモフにこんな風に誘惑されたら、抗えるわけなくて。
すぐさま俺は悪いわんこの後を追ってベッドに飛び込み、そのモフモフで柔らかい毛皮に溺れる。
衝動のままに毛皮をモフりまくる俺の顔をペロリと舐めたアストルディアは、そのまま俺に寄り添うように丸くなった。
……ううーん、ますますメンヘラ拗らせている客と、それを甘い言葉で宥めすかして誤魔化すホストって感じだな! もしくは結婚詐欺師と、その被害者?
すうすうと、早々に寝息を立てはじめたわんこモードアストルディアをながめながら、ため息を吐く。
アストルディアを信じたいのに、信じきれなくて。
寧ろ信じたふりをして、利用しろとさえ思う自分もいて。
それなのに……日に日にどうしようとないくらい、俺を「親友」と言ってくれるアストルディアに溺れている。
原作エドワードはどうだったのだろう。
同じように、疑心暗鬼になりながらも、アストルディアを親友と思わずにはいられなかったのか。
それともいずれ戦争が起こりアストルディアと敵対することを知らなかった分、疑うことなく親友として過ごすことができたのだろうか。
「……あ。そういや結局、アストルディアと俺の魔力相性良いのか教えてもらってねぇや」
思わず漏らした言葉に、ぴくりとアストルディアの耳が動いた。……どうやら狸寝入りだったらしい。そして、魔力相性について言及しなかったこともわざとか。
「……気ぃ向いたら、また教えてね」
ため息と共に素直なお耳に囁いて、その体を抱きしめる。……まあ、こんだけアストルディアの魔力に包まれて落ち着く時点で相性悪いはずもねーが。
関係が歪であっても、アストルディアが俺を親友として受け入れてくれていることは確かで。
俺がこの学校を卒業するまではまだ時間がある。
だから……大丈夫。まだ、大丈夫。
きっと未来は変えられるはず。
「……親善試合?」
「そう、学校側から提案があってね。留学生側から、必ず一人は出て欲しいんだってさ」
アストルディアとはほぼ毎晩部屋で会っているが、クリスとジェフと個室で情報交換する時間も必要だ。
なので3日に一度はクリスに部屋に呼び出され、猫かぶり第二モードで色々話をしている。その間、かわいいお犬様をベランダで待たせることはできないので、ベランダに手紙を置いて来なくてよい旨を伝えている。それでも夜中寝るタイミングで絶対来るけど。……お犬様の毛皮に包まれないと眠れない体質になったら、どうしてくれるんだ。
護衛の為に無理やり一人部屋を二人部屋にしてベッドを詰め込んだクリスとジェフの部屋は、二人の強い魔力が混ざり合っていて、非常に落ち着かない。いつも通り必要最小限の報告だけで帰ろうと思っていたのに、聞き逃せない話をされた。
「それって……実質俺一択じゃねぇ? どさくさに紛れて暗殺される可能性もあるのにクリスを出すわけにいかねぇし、クリスの護衛のジェフは論外だろ」
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