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アストルディアとヴィダルス
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ぶわりと、アストルディアの尻尾が膨らんだ。
……こ、これは初ちゅーの時のあの? 俺、何か変なこと言った?
しかし、アストルディア。相変わらず表情はぴくりとも変化しない。お犬様モードならそこまで気にならなかったが、人型だと落差がひでぇ。どっちを信じるべきかわからなくて、脳がバグるわ。
「……何故そう思った?」
「いや、俺魔力感知能力あるじゃん。二人の魔力すげぇ似てるから、そうなんじゃないかな~って」
「そう言うことか。……その疑問に答えるには、まずは俺とヴィダルスの関係を説明する必要があるな」
そう言って咳払いしたアストルディアの尻尾は、既にいつも通り垂れ下がっている。……あれ、さっきの幻? 俺の見間違い?
そんな俺の戸惑いは、すぐ後に告げられたアストルディアの衝撃発言によってかき消された。
「あれは俺のはとこであり、二人の従兄弟の子どもだ」
「え……?」
「独立の英雄である初代国王アルデフィア・セネバの妹の狼獣人と、アルデフィアの右腕だった獅子獣人ニルカグル・ランドルーク……つまり、俺の父親の妹である獅子獣人の娘が、あいつの祖父母なんだ。生まれてきた狼獣人の息子に、さらに父方の従兄弟の獅子獣人の娘が嫁いだ。そして生まれてきたのが、あいつだ」
「ちょ、ちょっと待って。頭の中で家系図組み立てるから。人間と違って性別ごちゃまぜなだけに、よけいに混乱してる」
……取り敢えず、ランドルーク家は、現王配であるアストルディアの父親の生家で。
アストルディアの親父の妹と、英雄の妹が結婚して生まれた息子に、さらにアストルディアの親父の兄弟の誰かの娘が嫁いで、生まれたのがヴィダルス、と……?
「何で王家は、そんなにランドルーク家に姻戚狙い撃ちにされてんの」
「獣人同士で子どもが作れるくらい相性が合う相手は、少ないと言っただろう。セネバ家の魔力とランドルーク家の魔力が相性が良く、互いに魔力量が多い肉食獣人なこともあり、結果的に親戚同士の婚姻ばかりになったんだ」
そんだけ血が混じり合ってたんじゃ、アストルディアとヴィダルスの魔力が似ててもおかしくはない、のか? ……いや、ちょっと待て。
「リシス王家であるエレナ姫の血はどこに行ったんだよ」
「エレナとアルデフィアは魔力の質が似ていたから、子が作れた。そしてアルデフィアと父ニルカグルは、独立以前はリシス王家の奴隷だった。……系譜こそ残ってはいないが、俺は力が強い獣人奴隷を繁殖させる名目で、性奴隷として扱っていた王族がいてもおかしくはないと思っている。人型になった獣人は、人間にとって魅力的な容姿をしているしな」
「ああ……」
……なんか逃れられない血縁の呪縛を垣間見た気がする。近親相姦とまではいかないが、前世妹、本当にこういうの好きな。
こんなんばっかで、正直気が滅入ってくるわ……。
「……そういや、俺も一応エレナ姫とは血が繋がってるしな。道理でヴィダルスと相性がいいわけだ」
「そうなのか? お前の魔力の性質は、王家ともランドルーク家とも似ていないが」
「え?」
「似た魔力同士なら子どもは作れるが、魔力の発展はない。だから、本来は魔力の性質は似てないのに、相性が良い魔力の持ち主を探した方がいいんだ。そんな相手は対獣人だとまず出会えないから、運命の番と言われている」
……今度は俺のリシス王家の血、どこ行ったー!?
いや、もろリシス王家直系のクリスが、ヴィダルスにタゲロックされてない時点で、獣人に比べて既に色々混ざってんだろうが。……クソ親父の血が濃すぎるとか、そう言うわけじゃないよな? 違うと言ってくれ。
「まあ、そんな訳で、俺とヴィダルスの魔力は非常に似通っている。だが総合的には俺の方が強く、あれはそれが気に食わないんだ。だから、よけいにお前があれに目をつけられないように気をつけていたんだが……容姿で目をつけられるのは盲点だった」
「そういや、俺とエレナ姫ってそんな似てるの?」
「髪と目の色だけはな。……見てみるか? 歴史の教科書に載っているぞ」
「さすが偉人。え、と。歴史の教科書は確かこれ……!?」
なんだ、やっぱヴィダルスの目が節穴だけかー……と思って教科書をめくった俺は、仰天した。
「……くりそつじゃん」
……こ、これは初ちゅーの時のあの? 俺、何か変なこと言った?
しかし、アストルディア。相変わらず表情はぴくりとも変化しない。お犬様モードならそこまで気にならなかったが、人型だと落差がひでぇ。どっちを信じるべきかわからなくて、脳がバグるわ。
「……何故そう思った?」
「いや、俺魔力感知能力あるじゃん。二人の魔力すげぇ似てるから、そうなんじゃないかな~って」
「そう言うことか。……その疑問に答えるには、まずは俺とヴィダルスの関係を説明する必要があるな」
そう言って咳払いしたアストルディアの尻尾は、既にいつも通り垂れ下がっている。……あれ、さっきの幻? 俺の見間違い?
そんな俺の戸惑いは、すぐ後に告げられたアストルディアの衝撃発言によってかき消された。
「あれは俺のはとこであり、二人の従兄弟の子どもだ」
「え……?」
「独立の英雄である初代国王アルデフィア・セネバの妹の狼獣人と、アルデフィアの右腕だった獅子獣人ニルカグル・ランドルーク……つまり、俺の父親の妹である獅子獣人の娘が、あいつの祖父母なんだ。生まれてきた狼獣人の息子に、さらに父方の従兄弟の獅子獣人の娘が嫁いだ。そして生まれてきたのが、あいつだ」
「ちょ、ちょっと待って。頭の中で家系図組み立てるから。人間と違って性別ごちゃまぜなだけに、よけいに混乱してる」
……取り敢えず、ランドルーク家は、現王配であるアストルディアの父親の生家で。
アストルディアの親父の妹と、英雄の妹が結婚して生まれた息子に、さらにアストルディアの親父の兄弟の誰かの娘が嫁いで、生まれたのがヴィダルス、と……?
「何で王家は、そんなにランドルーク家に姻戚狙い撃ちにされてんの」
「獣人同士で子どもが作れるくらい相性が合う相手は、少ないと言っただろう。セネバ家の魔力とランドルーク家の魔力が相性が良く、互いに魔力量が多い肉食獣人なこともあり、結果的に親戚同士の婚姻ばかりになったんだ」
そんだけ血が混じり合ってたんじゃ、アストルディアとヴィダルスの魔力が似ててもおかしくはない、のか? ……いや、ちょっと待て。
「リシス王家であるエレナ姫の血はどこに行ったんだよ」
「エレナとアルデフィアは魔力の質が似ていたから、子が作れた。そしてアルデフィアと父ニルカグルは、独立以前はリシス王家の奴隷だった。……系譜こそ残ってはいないが、俺は力が強い獣人奴隷を繁殖させる名目で、性奴隷として扱っていた王族がいてもおかしくはないと思っている。人型になった獣人は、人間にとって魅力的な容姿をしているしな」
「ああ……」
……なんか逃れられない血縁の呪縛を垣間見た気がする。近親相姦とまではいかないが、前世妹、本当にこういうの好きな。
こんなんばっかで、正直気が滅入ってくるわ……。
「……そういや、俺も一応エレナ姫とは血が繋がってるしな。道理でヴィダルスと相性がいいわけだ」
「そうなのか? お前の魔力の性質は、王家ともランドルーク家とも似ていないが」
「え?」
「似た魔力同士なら子どもは作れるが、魔力の発展はない。だから、本来は魔力の性質は似てないのに、相性が良い魔力の持ち主を探した方がいいんだ。そんな相手は対獣人だとまず出会えないから、運命の番と言われている」
……今度は俺のリシス王家の血、どこ行ったー!?
いや、もろリシス王家直系のクリスが、ヴィダルスにタゲロックされてない時点で、獣人に比べて既に色々混ざってんだろうが。……クソ親父の血が濃すぎるとか、そう言うわけじゃないよな? 違うと言ってくれ。
「まあ、そんな訳で、俺とヴィダルスの魔力は非常に似通っている。だが総合的には俺の方が強く、あれはそれが気に食わないんだ。だから、よけいにお前があれに目をつけられないように気をつけていたんだが……容姿で目をつけられるのは盲点だった」
「そういや、俺とエレナ姫ってそんな似てるの?」
「髪と目の色だけはな。……見てみるか? 歴史の教科書に載っているぞ」
「さすが偉人。え、と。歴史の教科書は確かこれ……!?」
なんだ、やっぱヴィダルスの目が節穴だけかー……と思って教科書をめくった俺は、仰天した。
「……くりそつじゃん」
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