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アストルディア先生の獣人講義

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「……エドワード。お前は獣人の男心というものが、全くわかっていない」

「……はい」

「多くの獣人が番に求めるものは、魔力の相性と強さだ。人間と違って、獣人の場合は魔力量と強さが比例する為勘違いされやすいが、獣人が本能的に求めるのは魔力量よりも強さなんだ。まずはこれを覚えておけ」

「……はい」

「魔力量が多くとも身体能力が低く、攻撃魔法も苦手な人間は、子を産んでもらう打算で近づくものは多いが実際に性的魅力を感じているものは少ない。反対に身体能力は高いが魔力が少ない人間は、性的対象にはなるが、魔力が少ない子どもが生まれる可能性が高い為、本気で番にしようと考えるものは少ない。つまり、前者は嫁にするにはいいが性的魅力に欠ける女で、後者は遊びにはいいが嫁には向かない女だとでも覚えておけ」

「ひでぇ喩え」

「そして、獣人が、どんな人間を性的対象に見るかと言えば、これは個人差がある。子どもを作る為の魔力の相性は大切だが、個人の好みというものもあるからな。元の性別が男女どちらであっても、雌雄どちらかの側しかなれないと言うものもいるし、相手によって変わるものもいる。だが雄側を希望するものの多くは、自分より小柄な相手を好む傾向にある。……で、それを踏まえてだ」

「……あのぅ、アスティ先生」

「なんだ?」

「足が……足が痺れたので、崩してもいいですか?」

 ヴィダルスを二人で見送ってから、三時間ほど経過した現在。
 俺は自室でアストルディアを見上げながら、正座させられてます。……いや、異世界でも正座なんてあるんだね。リシス王国にはなかったから、今世初正座だよ……慣れてないと、きっつ。

「駄目だ。話が終わるまではそのままでいろ」

 俺の涙で滲んだ上目遣いの訴えを、一刀両断するアストルディア……ううう、何でこんなに怒ってるんだ。アストルディアには直接迷惑かけてないのに……なんて言ったら絶対火に油注ぐことになるんだろな。黙っとこ。

「続けるぞ。それを踏まえて、お前のことを考えてみろ。お前はヴィダルスよりは、小柄だよな?」

「……いや、あいつ並みの体格の奴なんて、それこそアスティくらい……」

「事実だけを述べろ。お前は、ヴィダルスより?」

「…………小さいです」

「お前は魔力の匂いこそ魔法で消しているが、リシス王国からやって来る人間が皆魔力量が多いことは、事前に獣人生徒に知らされている。つまり、お前は?」

「魔力の相性さえ良ければ……番にするうえで優良物件と言える、かな、と……」

「さて。そんなお前はヴィダルスに何をして、何を言った?」

「……身体強化で筋力をあげて投げ飛ばして、『私は自分より弱い男に抱かれる趣味はありません』と言いました……」

「さて……今まで俺が語ってきたことを統括して考えたら、お前のその言動は獣人の男にどう捉えられると思う? ヴィダルスがお前の容姿を気に入っていることも含めて、考えてみろ」

「……優秀な子を産んでくれそうな、見かけと体格が好みの女が、肉体的魅力をアピールしながら『私を抱きたかったら、強さを見せろ』と煽ってきた……? 」

「まあ、そういうことになるな」

 ……うおー!! 何てことしてんだ、俺は!?
 想像すると、めちゃくちゃキモいぞ! それに乗せられたヴィダルスも含めて!

「ちなみにこれはまだヴィダルスには気づかれてないが、お前とヴィダルスの魔力は最高の相性だぞ。それこそ奴がその気になれば、一日でお前に子宮を作って孕ませられるくらいだ。獣人同士でここまで相性が良い相手が見つかれば、運命の番と言われるな」

「まじかよ……」

 ……まあ、性奴隷化して闇魔法で反撃されるまでの間に子ども孕ませられる時点で、魔力相性が悪いわけないよね。まだ未来のランドルーク家当主があいつだと確定したわけじゃないけど。
 今ですら面倒くさいのに、魔力相性の良さまでバレたら、めちゃくちゃヤバい予感しかしない……。何とかして、今までの行動キャンセルできんかなー……あいつ、俺に関することだけ記憶喪失ならんかな……って、うん?

「ということは、俺とアスティの魔力相性も良いのか?」






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