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黒い狼②
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エレナって……ああ、リシス王国を裏切ったっていう、英雄の奥さんか。
他の奴らは魔力の臭いばかりが嫁さん選びの基準なのに、コイツばかりやたら俺の顔に執着してるのって、つまりはそういうこと。
アルデフィアの英雄譚信者で、エレナ姫みたいな人間の奥さんが欲しいーって拗らせちゃってんのね。理解したわ。
「最初にリシス王国の王子を見た時は、失望したんだ。血ぃ繋がってるはずなのに、やって来たのはエレナとは似ても似つかねぇ男だったからな。正直、俺のエレナを探す為にも戦争派につくべきかと思ってたんだが……エドワード。お前が来た。これはもう運命だろう?」
……まあ、俺も母親が王家の血筋だからね。血縁からして、エレナ姫と似てても不思議はないわな。
でも人間の美醜がよくわからないってことは……ぶっちゃけお前、髪と目の色だけで判断してんだろ。あと、髪質。
巻毛の金髪で碧眼なんて、リシス王国では珍しくもねぇぞ。やっすい運命だな。おい。
しかし理由がわかったなら、対処はしやすい。
顎を掴む手をはらいのけ、いやらしく全身を撫で回してたもう一方の手首を掴む。
「……あなた達獣人には男と女の違いなんて些細なことかもしれませんけどね。それでも私は、エレナ姫と違って男なんですよ」
「っ!?」
身体強化で筋力を上げた手で、勢いよくヴィダルスを投げ飛ばす。
完全に油断していたヴィダルスの体は簡単に宙に浮き、そのまま強かに床に叩きつけられた。
「エレナ姫のような深窓の御令嬢をお望みでしたら、他を当たってください。私は自分より弱い男に抱かれる趣味はありません」
……まあ、自分より強い男でも、ごめんだけど。こんだけきつく言っておけば、こいつが俺に抱いてた幻想も崩れ去っただろ。
放課後一人で校舎内を探索している途中で捕まったから、周囲に人気はないとはいえ、あまり騒ぎを大きくはしたくない。緊急時は魔法で撃退する許可も得ているけど、怪我をさせたりしたら問題になっちゃうかもだし。いやまあ、そうなったらそうなったで聖魔法で治すけど、ランドルーク家はセネーバではかなり力ある貴族の家って設定だったことを考えると、できるだけ騒動は起こしたくない。
これで幻滅して、二度と俺に付き纏わないでくれ。ヴィダルス。お前だって、闇魔法で二十年近く操られたうえに、最後は暗殺者送り込んだ罪被せられて自害させられる原作ランドルーク当主みたいにはなりたくないだろ? お互い不幸だ。
そんなことを考えながら憐れみが混ざった侮蔑の視線を向けていたのだが、何故かヴィダルスは声をあげて笑い出した。
「つまり……お前より強ければいいんだな?」
ゾクリと、鳥肌が立った。
「やっぱ、お前は最高だ。エドワード。俺は愛する番の為に国を裏切ったエレナの剛毅さは気に入っているが、病弱で弱っちいとこだけは気に食わなかったんだよ。俺の子どもを産む女は、心身共に強くねぇとなァ」
瞳孔が開いたギラギラした目で、まっすぐ俺を見つめながら、ゆらりとヴィダルスが立ち上がる。
殺気混じりの強い魔力の圧に、冷たい汗がこめかみを伝った。
「戦って証明してやるよ。エドワード。俺がお前の雄として、いかに相応しいかってことをよぉ。手足が折れても、気にすんな。暫くお前は、俺のベッドで俺に抱かれるだけの生活だ。動けなくても、何の支障もねぇ。看病しながら、腹に子宮ができるまでパンパンに種を注いでやっからよぉ」
ーーやべえ。逆効果だったみたいだわ。全部。
どうすっかなー……転移魔法で逃げるべきか、もう二度と俺に関わろうと思わないくらいまでボコボコにすべきか。後者を選んだ場合、校舎の被害が尋常でなさそうなんだが。いや、ギャグでなく。
「魔力の相性が悪かったとしても心配すんな。俺は狼獣人だが、獅子の血が濃いからな。他の女も番にできる。子どもは他の女に任せて、お前はただ俺の精だけ受け入れればいい。ちゃんと平等に愛してやるよ。嬉しいだろぉ?」
他の奴らは魔力の臭いばかりが嫁さん選びの基準なのに、コイツばかりやたら俺の顔に執着してるのって、つまりはそういうこと。
アルデフィアの英雄譚信者で、エレナ姫みたいな人間の奥さんが欲しいーって拗らせちゃってんのね。理解したわ。
「最初にリシス王国の王子を見た時は、失望したんだ。血ぃ繋がってるはずなのに、やって来たのはエレナとは似ても似つかねぇ男だったからな。正直、俺のエレナを探す為にも戦争派につくべきかと思ってたんだが……エドワード。お前が来た。これはもう運命だろう?」
……まあ、俺も母親が王家の血筋だからね。血縁からして、エレナ姫と似てても不思議はないわな。
でも人間の美醜がよくわからないってことは……ぶっちゃけお前、髪と目の色だけで判断してんだろ。あと、髪質。
巻毛の金髪で碧眼なんて、リシス王国では珍しくもねぇぞ。やっすい運命だな。おい。
しかし理由がわかったなら、対処はしやすい。
顎を掴む手をはらいのけ、いやらしく全身を撫で回してたもう一方の手首を掴む。
「……あなた達獣人には男と女の違いなんて些細なことかもしれませんけどね。それでも私は、エレナ姫と違って男なんですよ」
「っ!?」
身体強化で筋力を上げた手で、勢いよくヴィダルスを投げ飛ばす。
完全に油断していたヴィダルスの体は簡単に宙に浮き、そのまま強かに床に叩きつけられた。
「エレナ姫のような深窓の御令嬢をお望みでしたら、他を当たってください。私は自分より弱い男に抱かれる趣味はありません」
……まあ、自分より強い男でも、ごめんだけど。こんだけきつく言っておけば、こいつが俺に抱いてた幻想も崩れ去っただろ。
放課後一人で校舎内を探索している途中で捕まったから、周囲に人気はないとはいえ、あまり騒ぎを大きくはしたくない。緊急時は魔法で撃退する許可も得ているけど、怪我をさせたりしたら問題になっちゃうかもだし。いやまあ、そうなったらそうなったで聖魔法で治すけど、ランドルーク家はセネーバではかなり力ある貴族の家って設定だったことを考えると、できるだけ騒動は起こしたくない。
これで幻滅して、二度と俺に付き纏わないでくれ。ヴィダルス。お前だって、闇魔法で二十年近く操られたうえに、最後は暗殺者送り込んだ罪被せられて自害させられる原作ランドルーク当主みたいにはなりたくないだろ? お互い不幸だ。
そんなことを考えながら憐れみが混ざった侮蔑の視線を向けていたのだが、何故かヴィダルスは声をあげて笑い出した。
「つまり……お前より強ければいいんだな?」
ゾクリと、鳥肌が立った。
「やっぱ、お前は最高だ。エドワード。俺は愛する番の為に国を裏切ったエレナの剛毅さは気に入っているが、病弱で弱っちいとこだけは気に食わなかったんだよ。俺の子どもを産む女は、心身共に強くねぇとなァ」
瞳孔が開いたギラギラした目で、まっすぐ俺を見つめながら、ゆらりとヴィダルスが立ち上がる。
殺気混じりの強い魔力の圧に、冷たい汗がこめかみを伝った。
「戦って証明してやるよ。エドワード。俺がお前の雄として、いかに相応しいかってことをよぉ。手足が折れても、気にすんな。暫くお前は、俺のベッドで俺に抱かれるだけの生活だ。動けなくても、何の支障もねぇ。看病しながら、腹に子宮ができるまでパンパンに種を注いでやっからよぉ」
ーーやべえ。逆効果だったみたいだわ。全部。
どうすっかなー……転移魔法で逃げるべきか、もう二度と俺に関わろうと思わないくらいまでボコボコにすべきか。後者を選んだ場合、校舎の被害が尋常でなさそうなんだが。いや、ギャグでなく。
「魔力の相性が悪かったとしても心配すんな。俺は狼獣人だが、獅子の血が濃いからな。他の女も番にできる。子どもは他の女に任せて、お前はただ俺の精だけ受け入れればいい。ちゃんと平等に愛してやるよ。嬉しいだろぉ?」
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