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黒い狼①
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アストルディアと俺達留学トリオは何故かクラスは違っていたのだが(個人的には人間を口説きたい奴らを、アストルディアに牽制させない為じゃないかと疑っている)アストルディアは食事のたびにクリスと話すていで俺達の席にやって来るし、夜は毎晩(全然冗談じゃなかった……)俺の所に泊まりに来ているので、交流は続いている。
相変わらず魔法で臭いを全消ししている俺は、他の獣人生徒から遠巻きにされてはいるけど、これはこれで獣人を客観的に観察できる良い機会だと思って早々に割り切った。
クリスは案の定悪女ムーヴで様々な生徒を誑かして情報を引き出しているが、ジェフは口説いてくる獣人を笑顔でガン無視しているので、周囲の生徒との親密度は俺と似たようなもんである。ジェフの役割はクリスの護衛だから、仕方ないっちゃ仕方ないが、三人中二人がアストルディア以外の獣人生徒と交流皆無って大丈夫なんだろうか……。二国の友好関係、さらに悪化しない?
まあ、俺の主目的はアストルディアの好感度を上げることだから、他の生徒との交流は全てクリスにお任せして……と、思ってたのだが、最近状況が変わってきた。
「……おい、エドワード。いつまで魔力の臭い消してんだよ。さっさとよくわかんねぇ魔法解いて、お前の臭い嗅がせろよ。俺と少しでも相性良いとわかった時点で、種付けして俺の女にしてやっからよお」
……非モテ生活を満喫してた、俺こと、エドワード・ネルドゥース17歳。
最近下品で粗暴な黒い狼男に、ストーカーのように付き纏われてます。……どうしてこうなった!
「……私だって、別に臭いを消したくて消してるわけじゃありませんよ。アストルディア殿下がおっしゃっていたでしょう? 私が常用していたものの香りが獣人が生理的に嫌う香りで、それが体内に蓄積されているため、魔力の臭いごと全て魔法で消臭せざるを得ないんです」
「最初来た時、くっさかったもんな。お前。でもよお、だったらその嫌な臭いだけ消す方法もあんじゃねぇの?」
「ちょっと……さっきから、近いですよ」
人の首もとにマズル埋めて、くんかくんかすんな。
そもそもお前、俺より一個下だろ。
馴れ馴れし過ぎなんだよ。勝手に呼び捨てすんな。
喉元まで出かけた言葉を飲みこみ、必死に笑みを作る。
できればこいつは敵に回したくない……いや、もう絶対無理な気はしてるけども。
「どうせそのうち抱くんだ。今からこの距離感慣れとけ。にしても、ちっせえケツだな。こんなんで、俺のデケぇの全部飲み込めんのか? ちゃんと瘤まで入らねぇと、せっかく出してやった種が外に出てくんぞ」
思いきりケツを鷲掴みされ、こめかみに血管が浮く。
アストルディアと同じくらい立派な体躯の、このクソガキの名前はヴィダルス・ランドルーク。
ヴィダルスなんて名前は、こいつの自己紹介を聞いた時がはじめましてだったが、ランドルークという家名自体は既に知っていた。
原作で、主人公をアストルディアの後宮に送り込んだ家こそが他でもないランドルーク家。
つまり原作エドワードを性奴隷にして主人公を産ませた後、闇魔法で逆襲されて使用人ごと家を乗っ取られたランドルーク家の馬鹿当主は、こいつかこいつの親族というわけである。……うわい、すげぇ会いたくなかった。
「しっかし、エドワード……お前はいつ見ても美しいなァ」
爪の生えた手が、俺の顎を掴む。
マズルが俺の顔につきそうな距離だけに、黒い毛の中に隠れたヴィダルスの黒い瞳がうっとりと細まるのがはっきり見てとれた。
「人間の美醜なんぞよくわかんねぇと思ってたが、お前は別格だ……波打った金の髪も、空のようなこの目も、お前は全てが美しい。俺の理想そのものだ」
「……誰と重ねて、そんなことをおっしゃってるのですか? 私を身代わりにするのではなく、きちんとその方にお気持ちを伝えられてはいかがですか」
「妬いてんのか? 安心しろよ。絵の中の女は、抱けねぇ。俺のエレナは、お前だ。エドワード」
相変わらず魔法で臭いを全消ししている俺は、他の獣人生徒から遠巻きにされてはいるけど、これはこれで獣人を客観的に観察できる良い機会だと思って早々に割り切った。
クリスは案の定悪女ムーヴで様々な生徒を誑かして情報を引き出しているが、ジェフは口説いてくる獣人を笑顔でガン無視しているので、周囲の生徒との親密度は俺と似たようなもんである。ジェフの役割はクリスの護衛だから、仕方ないっちゃ仕方ないが、三人中二人がアストルディア以外の獣人生徒と交流皆無って大丈夫なんだろうか……。二国の友好関係、さらに悪化しない?
まあ、俺の主目的はアストルディアの好感度を上げることだから、他の生徒との交流は全てクリスにお任せして……と、思ってたのだが、最近状況が変わってきた。
「……おい、エドワード。いつまで魔力の臭い消してんだよ。さっさとよくわかんねぇ魔法解いて、お前の臭い嗅がせろよ。俺と少しでも相性良いとわかった時点で、種付けして俺の女にしてやっからよお」
……非モテ生活を満喫してた、俺こと、エドワード・ネルドゥース17歳。
最近下品で粗暴な黒い狼男に、ストーカーのように付き纏われてます。……どうしてこうなった!
「……私だって、別に臭いを消したくて消してるわけじゃありませんよ。アストルディア殿下がおっしゃっていたでしょう? 私が常用していたものの香りが獣人が生理的に嫌う香りで、それが体内に蓄積されているため、魔力の臭いごと全て魔法で消臭せざるを得ないんです」
「最初来た時、くっさかったもんな。お前。でもよお、だったらその嫌な臭いだけ消す方法もあんじゃねぇの?」
「ちょっと……さっきから、近いですよ」
人の首もとにマズル埋めて、くんかくんかすんな。
そもそもお前、俺より一個下だろ。
馴れ馴れし過ぎなんだよ。勝手に呼び捨てすんな。
喉元まで出かけた言葉を飲みこみ、必死に笑みを作る。
できればこいつは敵に回したくない……いや、もう絶対無理な気はしてるけども。
「どうせそのうち抱くんだ。今からこの距離感慣れとけ。にしても、ちっせえケツだな。こんなんで、俺のデケぇの全部飲み込めんのか? ちゃんと瘤まで入らねぇと、せっかく出してやった種が外に出てくんぞ」
思いきりケツを鷲掴みされ、こめかみに血管が浮く。
アストルディアと同じくらい立派な体躯の、このクソガキの名前はヴィダルス・ランドルーク。
ヴィダルスなんて名前は、こいつの自己紹介を聞いた時がはじめましてだったが、ランドルークという家名自体は既に知っていた。
原作で、主人公をアストルディアの後宮に送り込んだ家こそが他でもないランドルーク家。
つまり原作エドワードを性奴隷にして主人公を産ませた後、闇魔法で逆襲されて使用人ごと家を乗っ取られたランドルーク家の馬鹿当主は、こいつかこいつの親族というわけである。……うわい、すげぇ会いたくなかった。
「しっかし、エドワード……お前はいつ見ても美しいなァ」
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「……誰と重ねて、そんなことをおっしゃってるのですか? 私を身代わりにするのではなく、きちんとその方にお気持ちを伝えられてはいかがですか」
「妬いてんのか? 安心しろよ。絵の中の女は、抱けねぇ。俺のエレナは、お前だ。エドワード」
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