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トゥンクしちゃうじゃん②
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その時、脳裏に天使のラッパの音がして、美しいハレルヤの歌声が響きわたった。
【親友】【親友】【親友】【親友】【親友】……。
『ねえ、お犬様……お犬様が俺のことどう思ってるかわからないけど、俺にとってお犬様は生まれて初めてできた友達なんだ』
『…………』
『生まれて初めての友達で、多分最初で最後の親友』
覚えてて、くれた。
一方的な片想いなんかじゃなかった。
「っアストルディアー!!!」
「だから愛称で呼べ、と」
「アスティーーー!!!!!」
前世の某芸人さんのノリで、愛称を叫びながら首もとに縋り付く。
嬉しい。嬉しい。嬉しい。
……なんかもう、将来的に裏切られるとか、どうでもよくなってきた……!
「……俺のこと、親友って思ってくれてるの? 俺だけの一方的な気持ちじゃなくて?」
「思ってなければ、わざわざ約束の日にネーバ山の山頂に行ったりしない。俺はお前のように転移魔法は使えないから、それなりに時間がかかるんだぞ。あそこまで行くのも、その許可を取るのも」
優しく頭を撫でられ、歓喜でぶわりと涙が溢れてきた。
「また泣いたな」
ペロリと厚い舌で涙を舐め取られても、もはや嫌だとも思わない。
だって、アストルディアはお犬様なんだよ?
お犬様が、俺のことを親友だって思ってくれて、涙を舐め取ってくれてんだよ?
こんなの……ご褒美じゃん!
「それなら……なんで自分が獣人だって言ってくれなかったんだよ……俺、ずっと神獣扱いしてたのに」
「四年前のセネーバとリシス王国の情勢を考えろ。自分が獣人で、セネーバの王子だなんて言えるか」
「……言えない、ね。それは」
「それに、夢で神託を受けた女神からも、口止めされてたからな。絶対に正体を明かすなと」
……あの、クソ女神ぃいい! やっぱり全て計ってやがったあああ!!!
「……神託って……それがあったから、アスティは俺と仲良くしてくれたの?」
もしあの時のお犬様の行動が全て女神の神託あり気だとしたら……やっぱりちょっとショックではあるな。
いや……それでもあの時の優しさは本物だって思いたいけど。
「親友だと思ってなければ、山を登っていないと言っただろう。女神の神託は最初に出会ったあの日、ネーバ山の吹雪の地を巡回しろと言うだけで、それ以外の行動は全て俺自身の意思だ」
「本当? じゃあ、あの時助けてくれたのも……」
「まさか俺と同年代の子どもが、あんな場所にいるとは思わなかったからな。もっとも俺の助けなぞなくても、お前なら何とかなっただろうが」
「アスティ……」
感極まって、ぎゅうぎゅうにアストルディアを抱き締めて、胸元に顔を埋める。
「……うう……筋肉なのに……モフモフじゃないのに、すごく落ちつくよぉ……」
「毛皮が所望なら、生やしてやろうか? もっとも微妙な調整が難しいから、その場合は獣面になるが」
「やめて。二足歩行のお犬様とか、即堕ちしちゃう。新たな扉開いちゃう」
別に俺はケモナーじゃないから、アストルディア以外の獣人に萌えはない。だからモフモフ獣人共に囲まれた学園生活にも、特に何も感じない。
だがアストルディアの獣面状態にキュンとしてしまったら……正直他の狼獣人の生徒に、何らかの反応をしてしまわない自信がない。だって、狼の顔ってあまり区別つかんし。ぶっちゃけ今だって、狼獣人の生徒に完全獣化されたら、お犬様重ねてときめきそうだし。
だからこそ、俺の今後の精神衛生の為にも、アストルディアには人型か、完全獣化状態でいてほしい。2つの間にある、ミッシングリングは知らない方がいいのだ。
「そうか。……なら、お前のぬいぐるみを壊した償いの意味も込めて、こちらの状態にするか」
「うわあ、完全お犬様モードだぁ~」
もうね。今の俺の目は完全にハートですよ。ハート。
人型状態でもトゥンクするからと言って、やっぱお犬様モードには敵いませんよ。モフモフ最強。愛してる。
【親友】【親友】【親友】【親友】【親友】……。
『ねえ、お犬様……お犬様が俺のことどう思ってるかわからないけど、俺にとってお犬様は生まれて初めてできた友達なんだ』
『…………』
『生まれて初めての友達で、多分最初で最後の親友』
覚えてて、くれた。
一方的な片想いなんかじゃなかった。
「っアストルディアー!!!」
「だから愛称で呼べ、と」
「アスティーーー!!!!!」
前世の某芸人さんのノリで、愛称を叫びながら首もとに縋り付く。
嬉しい。嬉しい。嬉しい。
……なんかもう、将来的に裏切られるとか、どうでもよくなってきた……!
「……俺のこと、親友って思ってくれてるの? 俺だけの一方的な気持ちじゃなくて?」
「思ってなければ、わざわざ約束の日にネーバ山の山頂に行ったりしない。俺はお前のように転移魔法は使えないから、それなりに時間がかかるんだぞ。あそこまで行くのも、その許可を取るのも」
優しく頭を撫でられ、歓喜でぶわりと涙が溢れてきた。
「また泣いたな」
ペロリと厚い舌で涙を舐め取られても、もはや嫌だとも思わない。
だって、アストルディアはお犬様なんだよ?
お犬様が、俺のことを親友だって思ってくれて、涙を舐め取ってくれてんだよ?
こんなの……ご褒美じゃん!
「それなら……なんで自分が獣人だって言ってくれなかったんだよ……俺、ずっと神獣扱いしてたのに」
「四年前のセネーバとリシス王国の情勢を考えろ。自分が獣人で、セネーバの王子だなんて言えるか」
「……言えない、ね。それは」
「それに、夢で神託を受けた女神からも、口止めされてたからな。絶対に正体を明かすなと」
……あの、クソ女神ぃいい! やっぱり全て計ってやがったあああ!!!
「……神託って……それがあったから、アスティは俺と仲良くしてくれたの?」
もしあの時のお犬様の行動が全て女神の神託あり気だとしたら……やっぱりちょっとショックではあるな。
いや……それでもあの時の優しさは本物だって思いたいけど。
「親友だと思ってなければ、山を登っていないと言っただろう。女神の神託は最初に出会ったあの日、ネーバ山の吹雪の地を巡回しろと言うだけで、それ以外の行動は全て俺自身の意思だ」
「本当? じゃあ、あの時助けてくれたのも……」
「まさか俺と同年代の子どもが、あんな場所にいるとは思わなかったからな。もっとも俺の助けなぞなくても、お前なら何とかなっただろうが」
「アスティ……」
感極まって、ぎゅうぎゅうにアストルディアを抱き締めて、胸元に顔を埋める。
「……うう……筋肉なのに……モフモフじゃないのに、すごく落ちつくよぉ……」
「毛皮が所望なら、生やしてやろうか? もっとも微妙な調整が難しいから、その場合は獣面になるが」
「やめて。二足歩行のお犬様とか、即堕ちしちゃう。新たな扉開いちゃう」
別に俺はケモナーじゃないから、アストルディア以外の獣人に萌えはない。だからモフモフ獣人共に囲まれた学園生活にも、特に何も感じない。
だがアストルディアの獣面状態にキュンとしてしまったら……正直他の狼獣人の生徒に、何らかの反応をしてしまわない自信がない。だって、狼の顔ってあまり区別つかんし。ぶっちゃけ今だって、狼獣人の生徒に完全獣化されたら、お犬様重ねてときめきそうだし。
だからこそ、俺の今後の精神衛生の為にも、アストルディアには人型か、完全獣化状態でいてほしい。2つの間にある、ミッシングリングは知らない方がいいのだ。
「そうか。……なら、お前のぬいぐるみを壊した償いの意味も込めて、こちらの状態にするか」
「うわあ、完全お犬様モードだぁ~」
もうね。今の俺の目は完全にハートですよ。ハート。
人型状態でもトゥンクするからと言って、やっぱお犬様モードには敵いませんよ。モフモフ最強。愛してる。
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