俺の悪役チートは獣人殿下には通じない

空飛ぶひよこ

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幸せな時間

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 最初に作ったコロッケとは違い、今回は炒めたみじん切り玉ねぎっぽいのも入れる。

「玉ねぎ炒める甘い香りって何でこんな幸せな気持ちに、なるんだろうなー……」

 すくそばで、甘い玉ねぎの香りにひくひく鼻を鳴らして尻尾ふりふりしてるお犬様がいるからこそ、なおさら幸せに感じる。
 前世ではこんな幸せ、当たり前なものだった気がするんだけどな。
 潰して炒めたひき肉、玉ねぎと混ぜたネルドゥース芋に、さらにすりおろしたにんにくもどきと、マヨネーズを加えてこねる。
 ……あ、この五年間でマヨネーズとソース、レシピを確立して、養殖場とは別の店で販売してます。ネルドゥース辺境伯領発の調味料として、今や国中にレシピを求められる大人気商品です。
 いや、ね。俺としてはソースはともかくサルモネラ菌が怖くてマヨネーズを売り出すつもりはなかったんだけど。自家消費分のマヨネーズ、聖魔法使わなくても食中毒にならないか試しに鑑定してみたら、「酢の割合が10%前後ならば、食中毒は発生しない」と俺が知らない豆知識がわざわざ記載されてまして。何か鑑定さんによる「だからマヨネーズを普及させろ」という無言の圧を感じたので、ディック紹介の適当な業者頼って売り出しました。
 ソースはお犬様と会っている時に食べさせてあげたいなって試行錯誤してたら、【未完成のソース】って品名でわざわざ足りない材料記載してくれてやんの。何か鑑定さんの手のひらの上でコロコロされてる感じで、素直に感謝できん。ありがたいはありがたいんだが。

「よし、今日もいい感じに揚げあがったぞ」

 バッター液とパン粉をつけて揚げ焼きしたコロッケを、まずは揚げたてをお味見。
 うん、やっぱ俺的にはにんにくマヨネーズが入った方が美味いや。懐かしい味。
 そうだ。前世妹がマヨラーで、ポテサラの残りをコロッケにリメイクした奴気に入った結果、ノーマルのコロッケにもマヨネーズいれようになったんだっけな。にんにくは、誰の提案だっけ。

「はいはい。お犬様もどーぞ」

 一人懐かしさに浸ってると、お犬様が前足で膝を叩いてテシテシ抗議してきたので、余分な油を魔法で除去したコロッケをいくつか皿に乗せて渡してやる。
 ……尻尾ふりふりコロッケにバクつくお犬様テラキュート。舌やけどしないでね。
 追加の分を揚げてる間にパンとキャベツもどきを切る。
 前世の俺は油断するとつい分厚くなっちゃって千切り苦手だったんだけど、ここでも活躍する【剣術】スキル。芸術的にまで細くて柔らかいキャベツもどきの千切りが、一瞬で出来上がった。多分今の俺の手の動き、常人は肉眼で捉えられん奴。
 パンにキャベツもどきを挟んで、ソースにくぐらせたコロッケを挟み、少し潰したら完成。キャベツもどきがあるので、今回はネルの実は挟まない。ソースの原材料にも使ってるし。

「よし、ぶりかぶらも良い感じ。できたよー。お犬様。食べよう」

 さて、幸せなお昼の時間です。


「ん~。ブーリ魚のカルパッチョ。シコシコの白身に、柑橘類の香りのドレッシングが絡んでおいしー! シャクシャクの野菜との歯ごたえの対比が噛んでて気持ちいいし。ぶりかぶらは、ブーリの旨味を吸ったカブもどきがとろっと蕩けるし、にんじんっぽいのもいい感じ。あと、やっぱコロッケパンにはソースとキャベツだな! キャベツのシャクシャクとコロッケのホクホクさくさく、パンのふんわり感がまさに三位一体! 味の宝石箱じゃー」

 はい、お犬様は当然何も褒めてはくれないので一人グルメリポーターごっこで遊んでる俺です。
 虚しい? 俺の切ない一人遊びにも一切反応せずに俺が出した料理を夢中で食べてくれるお犬様がすぐ傍にいるのに、虚しいわけないだろ!
 しゃべれなくても、全身で美味しいって伝えてくれてる姿、たまらなく愛おしいだろ! 俺は三国一の果報者だ!
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