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出ばるダサメガネの正体は③
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あ、よくよく考えたら俺、神獣であるお犬様から直接山頂に招かれてるじゃん。獣人の崇拝対象であるお犬様が許可したんだから、ますますセネーバから山への立ち入りを咎められる筋合いねぇわ。
……あーあ。お犬様俺に【神獣の加護】的なのくれんかな。ステータス何度も確認したけど、残念ながらそういうスキルは増えてなかったんだよな。また会って仲良くなれたらくれるかな。
別にそれを何かに利用する気も公表する気もないけど……そういうスキルもらえたらお犬様と確かな絆があるような気がするじゃん。……本当にまた、会えるかな。
「……白銀の子犬って、それ……」
「種類までは知らんけど。すげぇ魔力だったし、多分フェンリルだと思う」
「フェンリルの実在を信じるなんて……いや、申し訳ありません。エドワード様にも年齢相応に子どもらしいところはあるんですね。少し安心しました」
……おい、なんだその生温い目は。ちょっと待て。何で俺がサンタクロースの実在を信じる子どもみたいな目で見られないといけないんだ。魔物がうじゃうじゃ生息しているんだから、フェンリルだって普通に存在してるだろう。
お犬様、いるもん! 俺、ちゃんと見たもん!
今すぐダンテを転移魔法でネーバ山に連れてって、お犬様のすごさを見せつけてやりたいいい! しないし、したとしてもお犬様と再会できるとは限らんけど! ……あ、なんかますます凹んできた。お犬様、会いたいよー……。
「……まあ、何にせよ。そういう方法で手に入れたからには、セネーバには文句は言わせん。で、ダンテ。これらは辺境伯領で栽培できると思うか?」
「できるでしょうね。ただこの芋なんかは、栽培方法によってはますます土地を痩せさせてしまうんで注意が必要ですが」
「連作障害のことか」
「おや、エドワード様はそんなことまでご存知なんですか」
「詳しくはないがな」
連作障害を起こさないよう色々実験が必要だと思っていたが、この調子ならば俺が介入しなくてもダンテが適切なやり方で栽培してくれそうだ。ありがたい。
「なら、これはネルドゥース芋、こっちがネルドゥース豆、これをネルドゥースソバとでも名付けて、辺境伯領に広めてくれ。この青い実は……そうだな。ネルの実とでも呼ぼうか。第一王子に、この件に関して包み隠さず報告しても構わないが、これらを辺境伯領外に出す前には必ず父上と相談してくれ。この条件さえ守ってくれれば、後は好きにしてくれて構わない」
「おや、これらの発見者がエドワード様であることを皆に知らしめなくて良いのですか?」
「父上が許可しないだろう。父上は俺の価値が王家に広まって、王宮で囲われることを恐れているからな。名声は全てお前と父上にやる。だが第一王子には必ず、俺がこれらを発見したことを伝えて欲しい」
第一王子クリストファーは、俺と同じ8歳。通常なら、そんな子どもに何ができると思うところだが、ダンテ曰く俺と変わらないくらいの聡明さを持つという。もしかしたら俺と同じ転生者か、もしくは天然の天才かもしれない。
たとえ発見者が俺であるという事実が公表されなくても、クリストファーさえそれを把握していれば、色々うまいこと動かしてくれるかもしれん。
「俺は将来セネーバと戦争になって、辺境伯領に被害がでる可能性を潰したい。その為に、セネーバと友好関係を築くことを望んでいるであろうクリストファー王子との繋がりが欲しい」
「……殿下の側近候補として推薦してみましょうか?」
「だから、それは父上が許さないって言ってるだろう」
「いくら辺境伯様でも王家の命令には逆らえないと思いますが」
「そもそも俺自身、王家に仕える気持ちはさらさらないんだ。俺が守りたいのは、この国ではなく辺境伯領だからな」
目的が一致しているから協力関係は結べるが、それでも俺とクリストファーは、互いに絶対的な味方にはなれない。
俺が辺境伯領さえ無事ならリシス王国が滅びても構わないと思っているように、クリストファーは王族である以上リシス王国の為なら辺境伯領を切り捨てる立場だ。
後で面倒くさいことにならないよう、その立場の違いは最初から明確にしておいた方がいい。
「どうせ5年後には俺も王子も王都の貴族学校に進学するんだ。直接交流するのはその時からでもいい。それまではダンテ、お前を通して互いに情報だけ交換しておきたい」
「その前に、王都の式典に参加されたりはなさらないのですか?」
「あの父上が俺を同伴させるわけないだろ」
俺はその理由が、俺を【国境の守護者】としてゴリゴリに縛りつけたいが故だと知ってるけど、傍から見たらこれも一種の虐待みたいなもんだよなー。何せ小さい頃から徹底的に他貴族との交流遮断されてたし。
他領の貴族なんか、俺が不義の子だから第一子でありながら父上から冷遇されてると思ってるんじゃねぇの? 実際は重過ぎる期待の裏返しなんだけどな。嬉しくねー。
俺の家庭教師になってしばらく経つダンテもそのことは重々承知してるのか、引きつった笑みを浮かべながらもそれ以上突っ込なかった。
「……それでは私が、クリストファー殿下との手紙を取り持ちましょう。恐らくあなた達は仲良くなれると思います。とてもよく似てらっしゃるので」
「うん。よろしくね」
……まあ、多分笑顔の裏で狐と狸の騙し合いをする関係になるんだろうなー。やっぱり俺の癒やしはお犬様だけだよ。あと、もうすぐ生まれる弟か妹。
嬉しそうに収穫物を抱えて、立ち去るダンテの背中が扉をくぐる瞬間丸まったのを半目で見送り、大きく深呼吸する。
さて、これで農業改革と王家に協力者をつくるのは、目処がついた。他に俺が出来そうなことは……。
「……とりあえず隙を見て、またネーバ山の頂上に行くことだけは確定だな」
やれることはまだまだある。
せいぜい足掻けるだけ、足掻いてみるか。
……あーあ。お犬様俺に【神獣の加護】的なのくれんかな。ステータス何度も確認したけど、残念ながらそういうスキルは増えてなかったんだよな。また会って仲良くなれたらくれるかな。
別にそれを何かに利用する気も公表する気もないけど……そういうスキルもらえたらお犬様と確かな絆があるような気がするじゃん。……本当にまた、会えるかな。
「……白銀の子犬って、それ……」
「種類までは知らんけど。すげぇ魔力だったし、多分フェンリルだと思う」
「フェンリルの実在を信じるなんて……いや、申し訳ありません。エドワード様にも年齢相応に子どもらしいところはあるんですね。少し安心しました」
……おい、なんだその生温い目は。ちょっと待て。何で俺がサンタクロースの実在を信じる子どもみたいな目で見られないといけないんだ。魔物がうじゃうじゃ生息しているんだから、フェンリルだって普通に存在してるだろう。
お犬様、いるもん! 俺、ちゃんと見たもん!
今すぐダンテを転移魔法でネーバ山に連れてって、お犬様のすごさを見せつけてやりたいいい! しないし、したとしてもお犬様と再会できるとは限らんけど! ……あ、なんかますます凹んできた。お犬様、会いたいよー……。
「……まあ、何にせよ。そういう方法で手に入れたからには、セネーバには文句は言わせん。で、ダンテ。これらは辺境伯領で栽培できると思うか?」
「できるでしょうね。ただこの芋なんかは、栽培方法によってはますます土地を痩せさせてしまうんで注意が必要ですが」
「連作障害のことか」
「おや、エドワード様はそんなことまでご存知なんですか」
「詳しくはないがな」
連作障害を起こさないよう色々実験が必要だと思っていたが、この調子ならば俺が介入しなくてもダンテが適切なやり方で栽培してくれそうだ。ありがたい。
「なら、これはネルドゥース芋、こっちがネルドゥース豆、これをネルドゥースソバとでも名付けて、辺境伯領に広めてくれ。この青い実は……そうだな。ネルの実とでも呼ぼうか。第一王子に、この件に関して包み隠さず報告しても構わないが、これらを辺境伯領外に出す前には必ず父上と相談してくれ。この条件さえ守ってくれれば、後は好きにしてくれて構わない」
「おや、これらの発見者がエドワード様であることを皆に知らしめなくて良いのですか?」
「父上が許可しないだろう。父上は俺の価値が王家に広まって、王宮で囲われることを恐れているからな。名声は全てお前と父上にやる。だが第一王子には必ず、俺がこれらを発見したことを伝えて欲しい」
第一王子クリストファーは、俺と同じ8歳。通常なら、そんな子どもに何ができると思うところだが、ダンテ曰く俺と変わらないくらいの聡明さを持つという。もしかしたら俺と同じ転生者か、もしくは天然の天才かもしれない。
たとえ発見者が俺であるという事実が公表されなくても、クリストファーさえそれを把握していれば、色々うまいこと動かしてくれるかもしれん。
「俺は将来セネーバと戦争になって、辺境伯領に被害がでる可能性を潰したい。その為に、セネーバと友好関係を築くことを望んでいるであろうクリストファー王子との繋がりが欲しい」
「……殿下の側近候補として推薦してみましょうか?」
「だから、それは父上が許さないって言ってるだろう」
「いくら辺境伯様でも王家の命令には逆らえないと思いますが」
「そもそも俺自身、王家に仕える気持ちはさらさらないんだ。俺が守りたいのは、この国ではなく辺境伯領だからな」
目的が一致しているから協力関係は結べるが、それでも俺とクリストファーは、互いに絶対的な味方にはなれない。
俺が辺境伯領さえ無事ならリシス王国が滅びても構わないと思っているように、クリストファーは王族である以上リシス王国の為なら辺境伯領を切り捨てる立場だ。
後で面倒くさいことにならないよう、その立場の違いは最初から明確にしておいた方がいい。
「どうせ5年後には俺も王子も王都の貴族学校に進学するんだ。直接交流するのはその時からでもいい。それまではダンテ、お前を通して互いに情報だけ交換しておきたい」
「その前に、王都の式典に参加されたりはなさらないのですか?」
「あの父上が俺を同伴させるわけないだろ」
俺はその理由が、俺を【国境の守護者】としてゴリゴリに縛りつけたいが故だと知ってるけど、傍から見たらこれも一種の虐待みたいなもんだよなー。何せ小さい頃から徹底的に他貴族との交流遮断されてたし。
他領の貴族なんか、俺が不義の子だから第一子でありながら父上から冷遇されてると思ってるんじゃねぇの? 実際は重過ぎる期待の裏返しなんだけどな。嬉しくねー。
俺の家庭教師になってしばらく経つダンテもそのことは重々承知してるのか、引きつった笑みを浮かべながらもそれ以上突っ込なかった。
「……それでは私が、クリストファー殿下との手紙を取り持ちましょう。恐らくあなた達は仲良くなれると思います。とてもよく似てらっしゃるので」
「うん。よろしくね」
……まあ、多分笑顔の裏で狐と狸の騙し合いをする関係になるんだろうなー。やっぱり俺の癒やしはお犬様だけだよ。あと、もうすぐ生まれる弟か妹。
嬉しそうに収穫物を抱えて、立ち去るダンテの背中が扉をくぐる瞬間丸まったのを半目で見送り、大きく深呼吸する。
さて、これで農業改革と王家に協力者をつくるのは、目処がついた。他に俺が出来そうなことは……。
「……とりあえず隙を見て、またネーバ山の頂上に行くことだけは確定だな」
やれることはまだまだある。
せいぜい足掻けるだけ、足掻いてみるか。
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