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女神の愛の呪い

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 なんか詳細わかんねーかなーと思って文字を指でつつくと、新たな文字が出てきた。どうやらクリックで詳細が見れるシステムのようだ。ありがたい。

「……は?」


【女神の愛の呪い】
 この世界の根源となる物語の悪役を割り当てられたエドワードに、女神が与えた独自スキル。
 鍛錬を怠らなければ人類最強になれる剣術・魔法の才、運命を改変するにあたって優位になりそうな前世の記憶を思い出すことができる能力が、生まれながらに備わっている。(ただし前世の記憶をどこまで思い出せるかは、女神の判断による)
 しかし、どれほど強くなっても、どれだけ前世の記憶を駆使しても、アストルディア・セネバを倒すことはできない。


 アストルディア・セネバ。常に眉間に皺を寄せて無駄に威圧感を垂れ流した、白銀の髪をした狼獣人。
 ――未来のセネーバ国王にして、二十も年下の暗殺者に手を出すことになるショタコンヒーローの名前である。

「……はい、これでセネーバに戦争で勝てるルートは消えましたー!」

 人類最強になったとしても、絶対に勝てないって、どんだけ強いんだよ。アストルディア。いや、そりゃあ物語のヒーローなんだからめちゃくちゃ強いのは道理ではあるんだけど、妹の小説は別に戦闘重視のBLじゃなかったんだし、そこまで強くなくてもいいじゃないか。アストルディア。もはや魔王レベルじゃねぇか。

「……てか、俺のチートも大概じゃね?」

 ラスボスとはいえ、性奴隷まで堕ちた男にそこまでチートもりもりにする必要が……あるか。あるな。性奴隷堕ちした後に、闇魔法駆使して有力獣人貴族の家を乗っ取って住人全て傀儡にして、裏で操りながら息子を暗殺者に仕立て上げたんだったよな。小説内ではさらっと語られてるけど、よくよく考えたら結構やばい能力者だわ。
 しかも戦争で片腕なくしてんのに、最後の戦闘時は優秀な暗殺者である息子を圧倒的な力でねじ伏せるし。アストルディアともそこそこ良い戦いしたうえで殺されるし。ある程度のチートは必要か。それでも人類最強はやり過ぎだとは思うけど。

「……戦争で勝てないなら、何とかして戦争回避できるようにするか、出奔して国を飛び出すかのどっちかだよなー」

 出奔してしまえば、話は簡単だ。俺は人類最強のポテンシャルの持ち主。身一つで逃げ出したとしても、冒険者なり傭兵なりでいくらでも生計を立てられるだろう。大陸を渡ってしまえば、唯一の弱点であるアストルディアとの接点もなくなるろうし。
 ただし、その場合ネルドゥース辺境伯領は間違いなく滅びる。妹の小説は「故郷を滅ぼされた」としか描写はなかったから、リシス王国全体の被害状況がどれくらいかは微妙だけど、辺境伯領が滅びることだけは間違いない。
 クソ親父の強要がなかったとしても、俺は辺境伯嫡男としてそれだけは許容できない。……逆に辺境伯領以外が滅びるなら、気にせず出奔するけども。大事なのは自分の領地で、はっきり言って国とかどうでもいいです。はい。

「となると、和解一択か……」

 正確な戦争時期はわからないが、アストルディアと小説の俺は学生時代に何らかの交流があって、国をまたいだ親友になると妹は話していた。その後戦争になるとしても、おそらく後十年くらいはまだ時間があるはず。
 それまでに俺は、戦争回避を後押しきるくらい、リシス王国で発言力を持った立場にいなければならない。

 その為に俺ができることは……。
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