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第二章

アイラはヨシュアをモフモフしたい

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「獣臭いですわ」

「あ!アイラさん!いらっしゃい!」

昨日この街に出没した魔物の事はすぐに私の下にも届きまして、騒ぎが落ち着いた今日やっと外出が認められてここに来たのですが、宿舎に入った途端のこの獣臭は一体?

「アイラ、久しぶりだな?屋敷に顔出せなくて悪い。帰って来た途端昨日の騒ぎだろ?帰る暇なくてな?」

「お兄様。ご無事でなによりですわ。それにしても部屋に充満しているこの臭いは?」

「あはは。ちょっと大きな獲物を運び入れたからな。その内消えるだろ」

あら?この辺りに狩りができるような野生の動物など生息していたでしょうか?覚えがありませんが。

「ナイスタイミングですアイラさん!!もう少しでご飯の用意出来ますので良かったら食べていって下さい!」

え?もしかして凄まじく室内に臭いを残している、それを食せと仰ってるのかしら?私あまり気が乗りませんわ。

「ああ、僕。昨日の肉の味が忘れられない・・・・・あんな見た目で食べたらあの味って詐欺だよね」

「キャ!ハ、ハイト様いらしたのですね?気が付きませんでしたわ」

貴方いつの間に背後にいたのです?え?最初から座ってた?どれだけ影が薄いんですの?あら?でもハイト様のこの反応。本当に美味しいのですわね?

「きっと暫くはこのお肉が続きますから、飽きないよう工夫して料理しないといけませんね。でも部位によって味わいが違うのできっと最後まで楽しんで頂けますよ!」

まぁ。ティファがそう仰るのでしたら信用致しますわ。
それはともかく・・・・。

「あの、ヨシュア様が見当たりませんが、どちらに?」

この間思わずヨシュア様を巻き込んでしまった気がします。四人でお出かけになった成果をお聞きしたいのですが、まだお仕事中なのかしら?

「アイラ。最近やけにヨシュアと一緒にいるが、何故なんだ?前はそんなに仲良くなかっただろ?」

「そうですか?そういえば最近よく話すようになりましたわね?それが何か?」

「何かって。お前一応嫁入り前なんだから気をつけろよ」

あら?その嫁入り前の小娘達にちょっかいを出していたのはお兄様、貴方ではないのですか?最近は落ち着きましたけれど、私がそれらを処理するのに、どれ程大変だったか、ご存知ないのでしょうか?つまり、貴方にそんな事言われたくありません。

「フィクス。棚上げしてると妹に嫌われるよ?アイラ嬢やっと兄離れ出来たんだから。遠くから見守る、ぐらいの兄の懐の深さを見せたらどうなの?」

「俺は今だって見守っている。で?ヨシュアとは変な事になってないよな?」

お兄様。周りの目が途轍もなく冷ややかですわよ?
なんですかそれ。そんな訳ないでしょう?

「何故そんな話に?私はヨシュア様にお聞きしたい事があっただけなのですが?」

「なんだそれは。兄に話してみろ」

「え?何故?嫌です」

そんな顔しても駄目ですわよ、お兄様?
あら、そういえば・・・・。

「お兄様はギャド様とティファがお付き合いされていると知っていますか?」

「は?」

「あ、正しくは・・・・・」

言葉足らずでしたわ。付き合ってるではなく、付き合っている振りでしたわね?

「ティファ、本当なのか?俺が居ない間にギャドと?」

「え?はい!実は・・・・」

「マジかよ。何故あの筋肉と?アイツの一体どこが良くて?」

いけませんわ。お兄様、人の話を最後まで聞いてません。
あらぬ誤解を招きそうな・・・・。

「え?ギャドさんの筋肉はとても良いです!アレがどうやって出来ているのか、とても興味があります!それにギャドさんはカッコいいと思いますよ?」

ティファ。貴方絶対ちゃんと理解せずに発言しておりますわね?そして、無駄に相手を振り回している事に気が付いておりませんね?私、先程からお兄様と何故か背後の方から不穏な空気をビンビン感じるのですけど?

「ギャドさんがその気になれば、私はお役御免ですから!
それまでは恋人としてギャドさんに付き合います!」

「お役御免ってなんなんだ?ギャドはティファの事、大事にしてないのか?」

「あははー!大事になんて、そんな大袈裟なー!」

「ブッフォ!」

あら、いけないわ。
こんな話をしていたらいつの間にか皆様が休憩で帰って来てしまいました。ブッフォ?

「ちょっとメルロー。関わらない方がいいって」

「そ、そうだぞ?あそこに入ったら最後。抜け出せなくなる」

「俺は笑いの為なら多少のリスクは恐れないぜ?止めてくれるな」

ヨシュア様も戻っていらっしゃいますでしょうか?
少し入り口を覗いて来ましょう。

「ティファ。今からでも遅くないから考え直した方がいい。すぐギャドと別れるんだ」

「んー?でも私が勝手に決める訳には・・・・」

「そうだぞフィクス?いくらなんでも恋人がいる女性をたぶらかしちゃいけないなぁ?」

「え?恋人?いえ、私は・・・・」

「帰って来たら速攻問いただしてアイツの恥ずかしい過去の数々の汚点を突き付けた上、穏便に別れてもらおう。そうしよう」

お兄様。それ成功しても相手の女性から嫌われますわよ?どうか正気に戻って下さいませ。そして、もう少し冷静になって下さいませ。おかしいですわね?お兄様昔はあんな感じではなかったのですが。ティファの前だと残念なイケメンだと言わざる得ない有様ですわね。

「お?アイラ嬢来てたのか?」

「お疲れ様ですヨシュア様。昨日は、上手くいきましたか?」

「・・・・俺にはアレが上手くいったとは到底思えない。そんで、ギャドの行動も理解出来ない」

「何か、揉め事でも?」

あら?ヨシュア様近くで見ると瞳の色が変化した時と同じ色ですのね?髪の色は違いますけど癖っ毛は同じですわ。

「ギャド。セラと婚約するらしい」

「・・・・・は?」

「多分そうしないとセラ嬢無理矢理他の家の奴と婚約させられそうだったみたいでさ?でもなぁ、いいのかなと思ってさ?」

「ティファの事ですか?」

あら?ヨシュア様、何故そんな不思議そうな顔なさるのでしょうか?ギャド様ティファに気がありますわよね?

「いや?そうじゃなくてさ、セラ嬢宰相の娘だろ?それがギャドと婚約って。万が一、二人が夫婦になったらギャド立場的に危うくない?下手すると、二人の子供に王位継承権が与えられるだろ?」

「あ」

そうですわ。私、とても大切な事を忘れていましたわ。
普段余りにもそんな素振り見せない方ですから。
彼実は王族の血を継いでいましたわね。

「ギャドもセラ嬢も王族側の人間だろ?血が薄いとはいえそんな二人が一緒になって大丈夫なのかぁ?多分これ政略的なもの、働いてると思うぞ?」

申し訳ありません。私ヨシュア様のこと誤解していましたわ。てっきり貴方もギャド様側の人間かと・・・・。
ちゃんと頭、使えていたのですわね?貴方も立派な成人男性ですものね?でも、なんだか少し残念ですわ。

「それにギャドの奴、全く分かってないみたいだけど、自分から事態をややこしくしてんだよなぁ。ティファの誤解をまだ解いてないのに婚約決めちゃったんだぜ?」

ギャド様、頭より体が先に動くのですね?分かります。

「どいつもこいつも世話の焼ける。昨日だって結局、変化してーーー」

「え?ヨシュア様、首輪がなくても魔術使って良いのですか?」

「・・・・・いや、あれも緊急事態だったから」

「狡いですわ!!」

ヨシュア様が変化するわんちゃん、もとい狼姿はとても綺麗ですのよ?私、一度でいいからあの姿のヨシュア様を、モフモフしたいのです!

「私もう一度見たいですわ!見せて下さいませ!」

「断る。機密事項だと言っただろ?」

プライベートで使った癖にぃ!ケチィーー!!

「じゃあバラしますわよ?」

「は?」

「仕事関係ないのに魔力を使ったって陛下にバラします」

「・・・・・・お前。少しは大人になったと思ったら」

なんと仰られても結構!私は、私はあのワンちゃんを撫で回したいのですわぁぁぁぁ!!!
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