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episode20
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意識が薄れる中、ニーナ姫が悪魔に交渉する声が頭に響いた。
「神か悪魔か知りませんが、命には命。そうおっしゃったわね!では、願う者が2人ならどう!?私の命とこの人の命を半分ずつ使うことはできる?」
『他人の為に自分の命を削ると?』
「私、本で読んだことがあるの。生存確率の低い病気に勝って、長く生きたって人がいるって。運命に勝ったってことでしょう?可能性があるのなら、目の前の人が死ぬのを見ているよりも、半分の命の運命に逆らって生きる方がずっといいとおもうわ!」
『運命か。面白い。』
『ならば勝って見せるがいい。』
『ワレラデミトドケテヤロウ』
『こんなことは初めてだが』
『さあ。其方の血を聖水に滴らせるのだ。』
『望みを叶えてやろう。』
ニーナは苦しむ私の横に転がったナイフで指先を傷をつくり、聖水にポタポタと鮮血を垂らした。
『契約完了だ。』
カタカタと聖水が動き出し、周りの景色もろとも私たちは瓶に吸い込まれて行った。
「うわぁぁあああああ!!!」
「きゃあああああああああ!」
目を覚ますと、私はベッドに横たわっていた。
「…ここはどこだ!?」
「カナンの客室ですよ。王子様?」
声のする方へ振り向くと、小柄な男が椅子に足組をして座っていた。
「お前は誰だ!?」
「私?私はチトです。王子様。」
「馬鹿を言うな!チトはドラゴンで…まさか…お前、聖水の悪魔…か?」
「あははは。察しがいいですね。そう。私は貴方が悪魔と呼ぶ者。」
「約束が違う!!私の願いは!」
「チトを生き返らせることでしょう?ドラゴンの姿で…とは聞いていませんが?」
「!?騙したな!?ニーナ姫はどうした!?」
「まぁまぁ。落ち着いてくださいよ。あのお姫様は生きていますよ?お望み通りね。ただ…」
「ただ、なんだ?」
「貴方と私たちとの事は記憶から消しております。周りの人間達のドラゴンに関する記憶もね?」
「なんだと?なぜそのような…」
「なぜですって?私は貴方達2人が運命とやらに逆らい、寿命よりも長く生きるところを見届ける必要があります。怪しまれずに貴方のそばに居るには、幼少からそばにいた人間だと周りに思われた方が都合がいいんですよ。それにともない、ニーナ姫の記憶も邪魔でした。ですから消したのです。」
「では、私たちの寿命とは?いつだ。」
「あははは。お教えする事が出来るわけないじゃないですか?だって、運命なのでしょう?最初から知っていたら、運命にはならない。違いますか?」
「っ…では、本物のチトはどうした!?」
「カナンの地下に。あぁ。一応息はありますよ。貴方のお父上がカナンに来る途中で捕まえた設定にしてありますから、まぁ、ご安心を。」
チトが生きている!その事にひとまず安堵した。
「ああ。この事は他言無用ですよ?私はニーナ姫の命をお預かりしていますからねぇ。」
私は悪魔を睨みつけ、憎悪に満ちた醜い心を無理矢理押し込め、カナンの地下にチトを見に行く事にしたのだった。
これが…私がニーナ姫を妃にする必要がある理由…だが、リュークにもこの話をするわけにはいかない。
リュークは空になったワインの壺を小間使いに渡し、もっと持ってくるよう要求している最中だ。
「わたしがニーナ姫に惚れた話など、酒の肴にはならないぞ。リューク!とにかく、継承式までに妃が必要だということだ。内密にしてくれ。」
「あ!おい!まだ話は終わってないぞ!」
「神か悪魔か知りませんが、命には命。そうおっしゃったわね!では、願う者が2人ならどう!?私の命とこの人の命を半分ずつ使うことはできる?」
『他人の為に自分の命を削ると?』
「私、本で読んだことがあるの。生存確率の低い病気に勝って、長く生きたって人がいるって。運命に勝ったってことでしょう?可能性があるのなら、目の前の人が死ぬのを見ているよりも、半分の命の運命に逆らって生きる方がずっといいとおもうわ!」
『運命か。面白い。』
『ならば勝って見せるがいい。』
『ワレラデミトドケテヤロウ』
『こんなことは初めてだが』
『さあ。其方の血を聖水に滴らせるのだ。』
『望みを叶えてやろう。』
ニーナは苦しむ私の横に転がったナイフで指先を傷をつくり、聖水にポタポタと鮮血を垂らした。
『契約完了だ。』
カタカタと聖水が動き出し、周りの景色もろとも私たちは瓶に吸い込まれて行った。
「うわぁぁあああああ!!!」
「きゃあああああああああ!」
目を覚ますと、私はベッドに横たわっていた。
「…ここはどこだ!?」
「カナンの客室ですよ。王子様?」
声のする方へ振り向くと、小柄な男が椅子に足組をして座っていた。
「お前は誰だ!?」
「私?私はチトです。王子様。」
「馬鹿を言うな!チトはドラゴンで…まさか…お前、聖水の悪魔…か?」
「あははは。察しがいいですね。そう。私は貴方が悪魔と呼ぶ者。」
「約束が違う!!私の願いは!」
「チトを生き返らせることでしょう?ドラゴンの姿で…とは聞いていませんが?」
「!?騙したな!?ニーナ姫はどうした!?」
「まぁまぁ。落ち着いてくださいよ。あのお姫様は生きていますよ?お望み通りね。ただ…」
「ただ、なんだ?」
「貴方と私たちとの事は記憶から消しております。周りの人間達のドラゴンに関する記憶もね?」
「なんだと?なぜそのような…」
「なぜですって?私は貴方達2人が運命とやらに逆らい、寿命よりも長く生きるところを見届ける必要があります。怪しまれずに貴方のそばに居るには、幼少からそばにいた人間だと周りに思われた方が都合がいいんですよ。それにともない、ニーナ姫の記憶も邪魔でした。ですから消したのです。」
「では、私たちの寿命とは?いつだ。」
「あははは。お教えする事が出来るわけないじゃないですか?だって、運命なのでしょう?最初から知っていたら、運命にはならない。違いますか?」
「っ…では、本物のチトはどうした!?」
「カナンの地下に。あぁ。一応息はありますよ。貴方のお父上がカナンに来る途中で捕まえた設定にしてありますから、まぁ、ご安心を。」
チトが生きている!その事にひとまず安堵した。
「ああ。この事は他言無用ですよ?私はニーナ姫の命をお預かりしていますからねぇ。」
私は悪魔を睨みつけ、憎悪に満ちた醜い心を無理矢理押し込め、カナンの地下にチトを見に行く事にしたのだった。
これが…私がニーナ姫を妃にする必要がある理由…だが、リュークにもこの話をするわけにはいかない。
リュークは空になったワインの壺を小間使いに渡し、もっと持ってくるよう要求している最中だ。
「わたしがニーナ姫に惚れた話など、酒の肴にはならないぞ。リューク!とにかく、継承式までに妃が必要だということだ。内密にしてくれ。」
「あ!おい!まだ話は終わってないぞ!」
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