11 / 25
episodep11
しおりを挟む
「カミル殿下…。なぜ、このような時間にこちらへ?確か今夜は軍事会議があり、朝方お戻りになると…。」
カミル殿下は自分の連れてきた兵達に目配せをし、サーバスと2人の衛兵を縛り上げた。
「今宵、満月が城を真上から照らす刻、殿下仰せの通り 中庭の城壁の影でお待ち申し上げております…。ニーナ姫からお礼の品と共に届いた手紙だ。私はニーナ姫へ贈物を送ってはいない。それに、このような夜更けに女性を呼び出したりもしない。」
蒼白な顔をしたサーバスはカミル殿下の足元に跪いたままこちらを睨みつけるように見た。
「カミル殿下!!貴女のためなのです!どうかご慈悲を!話を聞いてくだされ!」
マントの裾を掴み許しを懇願するサーバスに、短剣を突き付けたカミル殿下は、憎悪に満ちた様な冷たい溜息をついた。
「私の二つ名は酷狼の皇太子だそうだ。その名の通り私は冷酷な人間だ。私と国を裏切る者に情けはかけない。」
青白い月明かりがカミル殿下を照らす。
不謹慎にも、短剣を突きつける殿下の瞳は
壊れやすいガラス細工のように見えて、その美しさに引き込まれる様な気がした。
カミル殿下が短剣をゆっくりと上に持ち上げ、剣の柄を強く握りしめた瞬間、サーバスは大きな声で叫んだ。
「私を処刑すれば、我が王は進軍する大義名分が立つだろう。そうなればまず、ハンガルドは滅びる。だが、私が口添えをすれば和睦することができましょう。さぁ、酷狼の皇太子カミルよ!どういたしますかな?!」
「…私は。和睦するつもりは毛頭無い。どの国かは見当がついているが、進軍してくるのならそれでいい。返討ちは覚悟の上であろう。」
ロードレスと対等にやりあえる国は今のところ存在しないに等しい。だというのに、サーバスのよゆうぶりをみると、連合軍で来る…ということ。
となると…連合国軍に属する国にはロードレスに攻め込みたい理由があるはず…。
近隣諸国は殆どがロードレスの傘下にある。直接攻め込んでくるにはそれなりの理由がいるはず
「まさか…それで今日仕上げとして私を?!」
「察しがいいな。そうさ。近隣諸国の姫君方は事故で謎の死を遂げている。ロードレスを囲む国のうちハンガルドを除いた姫君全員が亡くなった。ここまでで、おわかりかな?」
カミル殿下は自分の連れてきた兵達に目配せをし、サーバスと2人の衛兵を縛り上げた。
「今宵、満月が城を真上から照らす刻、殿下仰せの通り 中庭の城壁の影でお待ち申し上げております…。ニーナ姫からお礼の品と共に届いた手紙だ。私はニーナ姫へ贈物を送ってはいない。それに、このような夜更けに女性を呼び出したりもしない。」
蒼白な顔をしたサーバスはカミル殿下の足元に跪いたままこちらを睨みつけるように見た。
「カミル殿下!!貴女のためなのです!どうかご慈悲を!話を聞いてくだされ!」
マントの裾を掴み許しを懇願するサーバスに、短剣を突き付けたカミル殿下は、憎悪に満ちた様な冷たい溜息をついた。
「私の二つ名は酷狼の皇太子だそうだ。その名の通り私は冷酷な人間だ。私と国を裏切る者に情けはかけない。」
青白い月明かりがカミル殿下を照らす。
不謹慎にも、短剣を突きつける殿下の瞳は
壊れやすいガラス細工のように見えて、その美しさに引き込まれる様な気がした。
カミル殿下が短剣をゆっくりと上に持ち上げ、剣の柄を強く握りしめた瞬間、サーバスは大きな声で叫んだ。
「私を処刑すれば、我が王は進軍する大義名分が立つだろう。そうなればまず、ハンガルドは滅びる。だが、私が口添えをすれば和睦することができましょう。さぁ、酷狼の皇太子カミルよ!どういたしますかな?!」
「…私は。和睦するつもりは毛頭無い。どの国かは見当がついているが、進軍してくるのならそれでいい。返討ちは覚悟の上であろう。」
ロードレスと対等にやりあえる国は今のところ存在しないに等しい。だというのに、サーバスのよゆうぶりをみると、連合軍で来る…ということ。
となると…連合国軍に属する国にはロードレスに攻め込みたい理由があるはず…。
近隣諸国は殆どがロードレスの傘下にある。直接攻め込んでくるにはそれなりの理由がいるはず
「まさか…それで今日仕上げとして私を?!」
「察しがいいな。そうさ。近隣諸国の姫君方は事故で謎の死を遂げている。ロードレスを囲む国のうちハンガルドを除いた姫君全員が亡くなった。ここまでで、おわかりかな?」
1
お気に入りに追加
52
あなたにおすすめの小説
ある辺境伯の後悔
だましだまし
恋愛
妻セディナを愛する辺境伯ルブラン・レイナーラ。
父親似だが目元が妻によく似た長女と
目元は自分譲りだが母親似の長男。
愛する妻と妻の容姿を受け継いだ可愛い子供たちに囲まれ彼は誰よりも幸せだと思っていた。
愛しい妻が次女を産んで亡くなるまでは…。
「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。
木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。
因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。
そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。
彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。
晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。
それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。
幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。
二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。
カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。
こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。
愛する義兄に憎まれています
ミカン♬
恋愛
自分と婚約予定の義兄が子爵令嬢の恋人を両親に紹介すると聞いたフィーナは、悲しくて辛くて、やがて心は闇に染まっていった。
義兄はフィーナと結婚して侯爵家を継ぐはずだった、なのにフィーナも両親も裏切って真実の愛を貫くと言う。
許せない!そんなフィーナがとった行動は愛する義兄に憎まれるものだった。
2023/12/27 ミモザと義兄の閑話を投稿しました。
ふわっと設定でサクっと終わります。
他サイトにも投稿。
【完結】伯爵の愛は狂い咲く
白雨 音
恋愛
十八歳になったアリシアは、兄の友人男爵子息のエリックに告白され、婚約した。
実家の商家を手伝い、友人にも恵まれ、アリシアの人生は充実し、順風満帆だった。
だが、町のカーニバルの夜、それを脅かす出来事が起こった。
仮面の男が「見つけた、エリーズ!」と、アリシアに熱く口付けたのだ!
そこから、アリシアの運命の歯車は狂い始めていく。
両親からエリックとの婚約を解消し、年の離れた伯爵に嫁ぐ様に勧められてしまう。
「結婚は愛した人とします!」と抗うアリシアだが、運命は彼女を嘲笑い、
その渦に巻き込んでいくのだった…
アリシアを恋人の生まれ変わりと信じる伯爵の執愛。
異世界恋愛、短編:本編(アリシア視点)前日譚(ユーグ視点)
《完結しました》
【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
裏切りの代償~嗤った幼馴染と浮気をした元婚約者はやがて~
柚木ゆず
恋愛
※6月10日、リュシー編が完結いたしました。明日11日よりフィリップ編の後編を、後編完結後はフィリップの父(侯爵家当主)のざまぁに関するお話を投稿させていただきます。
婚約者のフィリップ様はわたしの幼馴染・ナタリーと浮気をしていて、ナタリーと結婚をしたいから婚約を解消しろと言い出した。
こんなことを平然と口にできる人に、未練なんてない。なので即座に受け入れ、私達の関係はこうして終わりを告げた。
「わたくしはこの方と幸せになって、貴方とは正反対の人生を過ごすわ。……フィリップ様、まいりましょう」
そうしてナタリーは幸せそうに去ったのだけれど、それは無理だと思うわ。
だって、浮気をする人はいずれまた――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる