冷酷皇太子の妃

まめだいふく

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「カミル殿下…。なぜ、このような時間にこちらへ?確か今夜は軍事会議があり、朝方お戻りになると…。」

カミル殿下は自分の連れてきた兵達に目配せをし、サーバスと2人の衛兵を縛り上げた。

「今宵、満月が城を真上から照らす刻、殿下仰せの通り 中庭の城壁の影でお待ち申し上げております…。ニーナ姫からお礼の品と共に届いた手紙だ。私はニーナ姫へ贈物を送ってはいない。それに、このような夜更けに女性を呼び出したりもしない。」

蒼白な顔をしたサーバスはカミル殿下の足元に跪いたままこちらを睨みつけるように見た。

「カミル殿下!!貴女のためなのです!どうかご慈悲を!話を聞いてくだされ!」

マントの裾を掴み許しを懇願するサーバスに、短剣を突き付けたカミル殿下は、憎悪に満ちた様な冷たい溜息をついた。

「私の二つ名は酷狼の皇太子だそうだ。その名の通り私は冷酷な人間だ。私と国を裏切る者に情けはかけない。」

青白い月明かりがカミル殿下を照らす。

不謹慎にも、短剣を突きつける殿下の瞳は
壊れやすいガラス細工のように見えて、その美しさに引き込まれる様な気がした。

カミル殿下が短剣をゆっくりと上に持ち上げ、剣の柄を強く握りしめた瞬間、サーバスは大きな声で叫んだ。

「私を処刑すれば、我が王は進軍する大義名分が立つだろう。そうなればまず、ハンガルドは滅びる。だが、私が口添えをすれば和睦することができましょう。さぁ、酷狼の皇太子カミルよ!どういたしますかな?!」

「…私は。和睦するつもりは毛頭無い。どの国かは見当がついているが、進軍してくるのならそれでいい。返討ちは覚悟の上であろう。」

ロードレスと対等にやりあえる国は今のところ存在しないに等しい。だというのに、サーバスのよゆうぶりをみると、連合軍で来る…ということ。

となると…連合国軍に属する国にはロードレスに攻め込みたい理由があるはず…。

近隣諸国は殆どがロードレスの傘下にある。直接攻め込んでくるにはそれなりの理由がいるはず

「まさか…それで今日仕上げとして私を?!」

「察しがいいな。そうさ。近隣諸国の姫君方は事故で謎の死を遂げている。ロードレスを囲む国のうちハンガルドを除いた姫君全員が亡くなった。ここまでで、おわかりかな?」








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