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episode3
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「ニーナ姫様。ようこそロードレスへおいで下さいました。後宮へのご案内をさせて頂く宦官長サーバスと申します。以後、お見知りおきを。」
200人は入れるであろう広い客間に通され、すぐに挨拶に訪れたのは、後宮付宦官のサーバスだった。
丁寧な歓迎の挨拶とは裏腹に、氷の様な冷たい瞳で品定めをする様に一瞥し、すぐに踵を変えて歩き出した。
「さぁ、こちらへ。」
そんな風に感じたのは、極度の緊張によるものだろうか…けれど、兵たちやセナの顔が強張っているところを見ると、気のせいではなさそうだ。
ついこの間までは敵国だった国の姫を妃候補として迎え入れるのだから、警戒されても仕方ないのだろう…。
後宮へ続く渡り廊下からは美しい花が咲き、複雑な彫刻が施された泉のある庭が見えた。
「なんて美しいのかしら…。」
それにしても、これだけの広い敷地なのにも関わらず、客間から渡廊下に出てからは誰ともすれ違っていない。
辺りを見回してみても、目に映るかぎり人の気配はなさそうだ。
「サーバス。聞いてもいい?後宮には何人の姫がいらっしゃるの?正妃候補はもちろん、ご側室も合わせて…」
サーバスは足を止め、こちらに振り向いた。
「皇太子殿下には、ご側室はおりません。
ご正妃候補については、今まで何人かの姫がこちらに足をお運びになられましたが、皆さますぐにお帰りになられますゆえ、後宮にお留まりの姫はおりません。」
つまり、皇太子殿下には正妃はもちろん、側室も一人もいないということか…
「ここから先は、王族しか入ることを許されておりませんので、ニーナ姫様お一人でお願いいたします。」
「サーバス殿。ニーナ様の安全は保証していただけるのでしょうな?」
側近の兵がサーバスに詰め寄ったが、サーバスは顔色一つ変えずに言った。
「この奥にいらっしゃるのは、皇太子殿下でございます。もし、ニーナ様が気に入られなければ、追い出されることはあっても命までは取らないでしょう。どうぞ、お一人でお入りください。」
「…では、参りましょう。」
覚悟を決めて前にたつと、両開きのドアが開かれ、赤い絨毯を一歩また一歩と進んでいき、カーテンの前で跪いた。
「ハンガルド代13皇女ニーナ・ガルダシア。親愛なるロードレス帝国が皇太子殿下への謁見賜りたく、参りました。」
「開けよ。」
聞き覚えのある声が響き渡ると同時に、衛兵がカーテンを開けると、そこには立派な剣を持ち玉座の横に跪くチトがいた!
「え?!あなた…あの時の?」
思わず驚嘆の声を上げたが、チトは目を合わせようともしない様子だ。
刀を持っているところを見ると、皇太子殿下の小姓だろう。小姓は刀持ちや小間使いが役割…だからあまり主人から離れることは無いと思うけれど、昨日街にいたのはどうゆうことか…人違いにしては似すぎている。それに、昨日は貧しい民の子供のような印象で、泥棒騒ぎまで起こしている。
怪訝に思い、チトを見つめていたが、玉座の後ろの通路からこちらに向かってくる皇太子殿下の影が見え、再び緊張で体がこわばった。
200人は入れるであろう広い客間に通され、すぐに挨拶に訪れたのは、後宮付宦官のサーバスだった。
丁寧な歓迎の挨拶とは裏腹に、氷の様な冷たい瞳で品定めをする様に一瞥し、すぐに踵を変えて歩き出した。
「さぁ、こちらへ。」
そんな風に感じたのは、極度の緊張によるものだろうか…けれど、兵たちやセナの顔が強張っているところを見ると、気のせいではなさそうだ。
ついこの間までは敵国だった国の姫を妃候補として迎え入れるのだから、警戒されても仕方ないのだろう…。
後宮へ続く渡り廊下からは美しい花が咲き、複雑な彫刻が施された泉のある庭が見えた。
「なんて美しいのかしら…。」
それにしても、これだけの広い敷地なのにも関わらず、客間から渡廊下に出てからは誰ともすれ違っていない。
辺りを見回してみても、目に映るかぎり人の気配はなさそうだ。
「サーバス。聞いてもいい?後宮には何人の姫がいらっしゃるの?正妃候補はもちろん、ご側室も合わせて…」
サーバスは足を止め、こちらに振り向いた。
「皇太子殿下には、ご側室はおりません。
ご正妃候補については、今まで何人かの姫がこちらに足をお運びになられましたが、皆さますぐにお帰りになられますゆえ、後宮にお留まりの姫はおりません。」
つまり、皇太子殿下には正妃はもちろん、側室も一人もいないということか…
「ここから先は、王族しか入ることを許されておりませんので、ニーナ姫様お一人でお願いいたします。」
「サーバス殿。ニーナ様の安全は保証していただけるのでしょうな?」
側近の兵がサーバスに詰め寄ったが、サーバスは顔色一つ変えずに言った。
「この奥にいらっしゃるのは、皇太子殿下でございます。もし、ニーナ様が気に入られなければ、追い出されることはあっても命までは取らないでしょう。どうぞ、お一人でお入りください。」
「…では、参りましょう。」
覚悟を決めて前にたつと、両開きのドアが開かれ、赤い絨毯を一歩また一歩と進んでいき、カーテンの前で跪いた。
「ハンガルド代13皇女ニーナ・ガルダシア。親愛なるロードレス帝国が皇太子殿下への謁見賜りたく、参りました。」
「開けよ。」
聞き覚えのある声が響き渡ると同時に、衛兵がカーテンを開けると、そこには立派な剣を持ち玉座の横に跪くチトがいた!
「え?!あなた…あの時の?」
思わず驚嘆の声を上げたが、チトは目を合わせようともしない様子だ。
刀を持っているところを見ると、皇太子殿下の小姓だろう。小姓は刀持ちや小間使いが役割…だからあまり主人から離れることは無いと思うけれど、昨日街にいたのはどうゆうことか…人違いにしては似すぎている。それに、昨日は貧しい民の子供のような印象で、泥棒騒ぎまで起こしている。
怪訝に思い、チトを見つめていたが、玉座の後ろの通路からこちらに向かってくる皇太子殿下の影が見え、再び緊張で体がこわばった。
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